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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第95話 補給戦線4

「それじゃあ、あたしらは食品の売り場へ向かうから」

「了解。ドラッグストアは二階みたいなので、俺たちは階段で上に向かいます」

「いい! 危なくなったら、急いで逃げること! 命が何より優先だから、そこの判断はきっちりとね!」


 ナナさんにしっかりと注意を受け、三人でドラッグストアへ向かう。

 二階の廊下はHが積まれるようできており、両の側面に各種店舗が並ぶといった感じ。カジュアルな服が取り扱われる衣服店から、皿や時計が置かれる雑貨屋。眼鏡が展示される眼鏡屋に、証明写真が貼られる写真店と様々である。


「屍怪がいると思っていたけど。予想以上に順調ね」

「ちょっと拍子抜けじゃね? 覚悟を決めてきたのに、肩透かしもいいところじゃん」


 事が上手く運び過ぎと判断したようで、ハルノに啓太とリズムを崩されたといった感じ。大型ショッピングモールともなれば、屍怪とどこで遭遇しても不思議はない。

 しかしそんな思惑や不安も、つゆ知らず。一度も屍怪に遭遇することなく、二階端のドラッグストアへ到着した。


「必要なのは、風邪薬に鼻炎薬。粉ミルクにビタミン剤か」


 メモに書き記された物を入手するため、ドラッグストアの陳列棚を物色。


「他には漢方薬にサプリメント。石鹸にシャンプー。ポロテインを頼んでいる人までいるじゃん」


 啓太がメモを見て驚くポロテインは、筋肉を付けるため飲まれる商品。


「化粧水に保湿クリーム。今みたいな時代だからこそ、体を鍛えるために欲しいんでしょ」


 ハルノはメモを読み商品を探しつつ、注文者の心境を察して言う。

 今回の補給につき注文を許可された物は、代替え品なく特に必要な物に限る。書かれるポロテインは、微妙な範囲の物と言えるだろう。


「よしっ! 必要とされた物は、ほとんど詰めたな」 


 一階の廊下は広くリヤカー通れるものの、エレベーター使えぬ二階は厳しい。そのためドラッグストアへ向かうに、それぞれにリュックを持参していた。

 先に荷物を詰め終えては、ドラッグストアを退店。向かいとなる場所には、ペットショップが開かれている。


 そう言えばモコにも、ペットフードが必要だって言ってたな。


「ハルノ。俺は荷物を詰め終えたから、ちょっとペットショップを見てくるよ」


 白犬のモコに、必要となる物。荷物を詰めるハルノに行く先を伝え、一人でペットショップへ向かうことにする。

 ペットショップ内はどこか、独特な獣臭が漂う状況。九ヶ所の子犬が展示される空間では、三ヶ所が空で他の六ヶ所。全てで命の灯火が消失し、痩せ細り腐敗した亡骸が眠っている。


 自由に逃すことや、連れて行きもしなかったのかよ。


 人間の都合により閉じ込められ、死を待つしかなかっただろう子犬たち。

 水や餌が無くなり脱出を図ろうとも、どう足掻こうと叶わぬ願い。その生き様を想像すれば、まさに悲劇。命を管理する事の重さを感じ、ただ胸を痛める他なかった。


 栄養たっぷりペットフード。これだな。


 僅かにあるリュックの隙間に、ペットフードを詰め目的を達成。さらに一つ欲張っては、両手に持って退店。

 ドラッグストア前には、荷を詰め終えたハルノの姿。啓太は隣の雑貨屋に足を向けているようで、何やら商品を物色しているようだ。


「何を探しているんだよ?」

「子ども用のエプロンですって。意外に、妹思いな一面もあったのね」


 ドラッグストア前にて合流し、雑貨屋前のベンチに座りハルノは言う。

 時や場所に場面と変わらねば、見えてこない人間の一面。人は各々で社会を前に、家族や友人を前に。それぞれに対応を変化させ、違った態度を見せるもの。


「知らなければ、驚きだよな。完全に溺愛状態だし」

「そうね。と言うか蓮夜は、子どもは好きなの?」


 雑貨屋を物色する姿を眺めつつ、よそよそしくもハルノは問う。どうやら啓太の様に感化され、子どもについて興味を持ったようだ。


「子どもか。俺は普通に好きだぜっ! 定番だけどキャッチボールとか、一緒にやってみたいしなっ!」

「へっ、へぇ。そうなんだ」


 素直な気持ちを言葉で表したのに、ハルノはそっぽを向き反応は薄かった。


「あっ! そうだ! 私も一つ、欲しい物があったのよ! 見て来るわ!」

「おい! ちょっと待てよ!」


 ポニーテールを揺らし入店するハルノに続き、結局のところ全員で雑貨屋へ。本線となる薬などは無事に入手するも、三人が揃って一つ脱線する結果となった。


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