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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第94話 補給戦線3

 国道を過ぎて住宅地区を進み、通ること想定されていた田園地帯。

 まだ熟さず青さある稲穂は風にそよぎ、眼前に広がるは四角く区切られた田んぼ。屍怪なく終末の日以前からある光景は、どんな時でも懐かしさを呼び起こすものである。


「バンッ! バンッ!」


 田んぼを横目にリヤカーを引いていると、青い乗用車から窓を叩く音。用水路に片輪が落ちてしまっては、どうにも動けずにいるようだ。


「車はかなり前から、使えないはずじゃん。どのくらい前から、残されているのって話じゃね?」


 EMPの影響がある状況下にて、啓太の発言は実に的を射ていた。

 終末の日からすでに、二ヵ月以上が経過。車はもちろん、電子機器が使えぬ状況。仮に閉じ込められていたとしても、脱出せず人間に生きられる道理はない。


「ワシに確認させてくれへんか? 音を発し続けて、他を呼び寄せるわけにもいかんじゃろ?」


 自ら動き積極的な姿勢を見せたのは、小柄なツンツン頭の男。了承したヤマトとナナさんは助力に回り、三人で車内の様子を確認しに向かっていく。

 シートベルトをしたまま唸っているのは、運転席に座る五十代前後の女性。頬は窪み酷く痩せこけ、顔色も青白く非常に悪い。言葉なく暴れ続ける様は、屍怪と化した者に間違いなかった。


「ワシがやる。ええな?」

「もちろんです」


 決断を下した小柄なツンツン頭の男に、首を縦に振ってヤマトは応える。


「すまんな。もう少し早く助けに来られたら、話は違うたかもしれんのに」


 弔いの言葉を一つ小柄なツンツン頭の男は、槍で頭を突き刺し息の根を止めた。

 敷地外へ出てほどなく、屍怪と遭遇し避けらず戦闘。きっと各々に殺す覚悟を、固めたことだろう。札幌で畑中さんと向き合った、あの日と同じように。



 ***



「この民家なんて良さそうだ。中継拠点とするのに」


 田んぼに囲まれた二階建て民家を前に、立ち止まってヤマトは言う。

 周囲は文字の通り田んぼに囲まれ、他に民家などなく視界は極めて良好。障害物など一つも無ければ、屍怪に襲われる心配はないだろう。


「そうだな。でもまずは今回の補給を、無事に済ませてからの話だけどな」


 中継拠点と休憩できる場所あれば、長期的に見て物資を運搬するに効率的。大型ショッピングモールともなれば、往復する回数も増すと想定されるからだ。

 しかしまずは今回の補給を、無事に成功させることが何より。上手く行かねば先の話など、考えても無意味なものでしかない。


「着いたな。ここが目的地となる場所か」


 駐車場に立ち目の前に現れたのは、四階建ての大型ショッピングモール。レストランにファッションやサービスと様々な業種が出店され、店舗数は百を超え敷地面積も広く大規模。

 駐車場には千を超える車が駐車でき、建物を中心に三方へ展開。しかし現在の駐車台数は指で数えられるほどと、とても閑散とし寂しい状況。風に舞う特売の広告チラシは、虚しく地で揺れている。


「ここまで静かだと、かなり不気味な感じね」

「そうだな。あとは店内に、屍怪がいなければ良いけど」


 ハルノと駐車場に並んで立ち、見つめる大型ショッピングモール。生者がいなくなった世界に生活音なく、人の営みなければ静かなのは常日頃からである。


「重要なのは食料! それと薬! 他にもいろいろ欲しい物はあると思いますが、この二つを優先して行きましょう!」


 ヤマトはリヤカーを入口前に止め、今回のミッション内容を告げる。

 フロアマップを確認したところ、食料品は一階でドラッグストアが二階。必要な物資を迅速に確保するため、二つの組みに分けることが決まった。


「悪いな。最初に子ども扱いしちまったが。他のメンバーと比べて、蓮夜たちはかなりマシだからな」


 苦心しヤマトが決めた組み分けは、荷物が多くなるだろう一階に七人。ドラッグストアへ向かうのは、ハルノに啓太と三人に決定した。


「この紙に書かれている物を、持って来れば良いんだな?」

「ああ。必要とされる物は、全てその紙に書かれている」


 ヤマトからメモを受け取り、話は決まって店内へ。

 広い廊下が特徴的な、大型ショッピングモール。通りにはたこ焼き屋にドーナツ店と、アイスクリーム屋など食を扱う店が点在。停電下と外から入る光のみを頼りに進むも、一見して屍怪の姿は発見できなかった。


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