表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/361

第89話 招集

 前日から自衛官の呼びかけあり、体育館に集められた人々。空き教室で過ごす者も含め、今回の招集にはほとんど全員が参加。

 壇上に立つは、三人の自衛官。約八十人の避難者たちは、静かに言葉を待っていた。


「初めにオレたちの招集に応じ、みなさんありがとうございます。中には知っている人や、勘づいている人。想像できる人もいると思いますが、今回みなさんを集めた理由。それは備蓄していた食料が、ヤバい状況になってきたからです」


 舞台の中央に立ちヤマトは、全員に対し実情を告げた。

 先日ナナさんからも、聞いていた話。近場のスーパーマーケットやコンビニなどを訪れ、三人で補給し賄っていた食料。八十人も人数いれば消費量も多く、今や余裕は全くないとの話だ。


「だから敷地外へ出て、食料を探しに行かなくてはなりませんっ!」


 大きな声で発言するヤマトの主張を受け、動揺を露わに騒めく避難者たち。

 身近に迫りつつある、食料危機。切り詰めても猶予が僅かに伸びるだけで、問題の根本的な解決とはならない。


「でも陵王高校の外は、危険なのでは?」


 最前列で話しを聞いていた男は、主張を受け問題点を指摘する。


「みなさんも周知の通り、外には屍怪となった者がいます。だから危険なのは、間違いないです。それでも食料を得なければ、餓死を待つだけ。今はどこか覚悟を決め、動かなくてはダメなんだっ!」


 力強いヤマトの主張を聞いて、押し黙る避難者たち。

 避難を始め、約二ヶ月。陵王高校から敷地外へ出たことある者は、聞いていた通り僅か。そのためリスクを負うに、多くは抵抗感がある様子だ。


「あー。たくさんの食料を得るには、それなりの人数が必要となります。オレたちは暫く壇上にいるので、同行を考えてくれる人は声をかけてください」


 困惑した表情を浮かべ、穏やかな口調で言うヤマト。避難者たちの態度から、強く言い過ぎたと判断したようだ。

 それでもヤマトの危機とする主張は、避難者全員に伝わったことだろう。


「蓮夜はどうするの? 今の話を聞いて?」

「俺は行くよ。食料がないのは事実なんだろ。刀を持っている俺は戦えるし。外に出る理由もあるからな」


 隣に立つハルノに意見を問われ、即座に決めていた答えを返す。体を酷使する捜索は控えようとも、美月を探すこと自体を諦める気はない。

 それに今回の補給は、明らかに必須事項。捜索に貢献と二つメリット重なれば、行かぬ道理などありはしなかった。


「だからオレは、嫌だったんですよっ! こういうスピーチとか演説みたいのはっ! 下っ端のオレに任せないで、ナナさんかタケさんやってくださいよっ!」

「そう言うのは苦手なのよ。タケちゃんなんて口下手だから、もっと無理だし。って事で、ヤマトになるでしょ?」


 壇上の隅にいるヤマトとナナさんは、今回の件につき口論している。


「なんすか! その理屈!?」


 どうやらヤマトが進んで発言した訳でなく、適任なく決まったようだ。


「あの、さっきの話。俺たちも一緒に行きたいんですけど」


 補給へ同行するにつき、三人で話し合い決めたこと。背後にはハルノに啓太と、覚悟を固めた二人もいる。


「それは嬉しい申し出だけど。君らまだ、学生だろ? さすがになぁ」


 同行する意志の表明に、ヤマトは困り頭を抱えていた。

 ヤマトたち自衛官が求めていたのは、心身ともに成熟しきった大人。学生と保護者に監督される身分では、どうにも扱いに困っている様子だ。


「高三なのに子ども扱いって、酷いんじゃね!? もう十分に、物事を決められる年齢じゃん!」


 決めかねぬ自衛官たちの対応に、啓太は不平不満を積もらせている。

 高校三年生なれど、十八になれば成人。僅か数ヶ月の差で弾かれるなど、法律上の決定とはいえ不条理に思えた。


「いいんじゃない? ヤマト」

「何を言い出すんですか!? ナナさん! 彼らはまだ、学生ですよ!? 何かあったら、親になんて言えばいいんですか!?」


 了承を促すナナさんにも、ヤマトの心配は払拭されなかった。

 親の心境を察すれば、心配すること当然。誰が好んで我が子を、危険地帯へ送り出すことだろうか。


「そこはまぁ自分たちで、説得してもらわないとダメだけどね。戦力としては申し分ないでしょ」


 発言を皮切りにナナさんは、背後に回って抱き付いてくる。


「特にこの子なんて、あたしらが言うまでもなく勝手に敷地外へ出ているし。他の子たちだって札幌から岩見沢まで、歩いて帰ってきたって言うじゃない」

「それは、そうかもしれないすけど」


 根拠が明確であるナナさんの意見に、反対のヤマトは反論できずにいた。


「それにここにいる大人なんて、敷地外へ出た人はほとんどいないでしょ? 言っちゃ悪いけど。学校で守られ過ごしていた大人たちより、この子たちの方が随分とマシな気がするのよ」

「くっ……!」


 実情から的を射たナナさんの指摘に、ヤマトは完全に言葉を失っている。

 そもそも人材が少なき中で、範囲を狭めた形での選抜。実体験ある身とし説き伏せるのならば、今は緩まずもうひと押しすべきに思えた。


「ここにいる人は限られているんだっ! それぞれが自分の力の範囲で、できる限りのことをすべきだろっ!」


 自分の力の範囲で、できる限りのことをする。以前から聞き知った言葉が、喉の奥からすんなりと出た。


「だあっー!! わかりましたよ。でも敷地外へ行くとなれば、身の安全を保障できねぇからなっ!」


 頭を掻いて悩みつつも、ヤマトは渋々納得した。

 ここから先は、補給戦線に加わること決定。今回の目的地となる場所は、市内にある大型ショッピングモールだと言う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ