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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第88話 EMP

 陵王高校の敷地内を昼間に歩くなど、実に久しぶり。早朝から絶えず外に出ては、日が暮れる前に戻るという日々。

 屍怪が徘徊する危険な敷地外では、緊張の糸を切らさぬよう警戒し過ごしていた。そのため明るい時間帯に弛緩した状態など、違和感を覚えてしまうくらいだ。


 ん!? あれは。校庭に人が集まっているけど。何かあったのか?


 広い校庭の隅にて、見える人集り。お年寄りから子どもまで年齢性別を問わず、スコップやシャベルを手に土を掘り起こしている。


「ここに畑を作っているんだよ」


 首元にタオルをかけ隣に立つのは、自衛官のヤマト隊員。額に腕と土で汚れて汗をかき、一緒に作業を行なっていたようだ。


「校庭に畑なんて、できるんですか?」


 陵王高校の校庭に畑を作り、野菜を育てる計画。食料の調達が限られる中で、自給率を上げようとの試みだ。


「土壌はしっかりしているし。問題ないさ。何よりみんな、楽しそうだしな」


 一生懸命に作業をする姿を見つめ、頬を緩ますヤマト隊員。

 畑を耕す作業も、一種のやりがい。やること少なき避難生活において、与えられた役割。やる気の満ちたお年寄りに、元気に土を掘る子ども。姿を見守る保護者も、一様に笑顔を見せている。


「そうですね。あの、一つ質問していいですか?」

「どうした?」


 聞きたいことがあるとの申し出に、ヤマト隊員は即座に応じた。

 畑の話はさておき、確認したい案件。現在の置かれる立場につき、知りたい事など複数あった。


「ヤマト隊員は、自衛官ですよね。それなら国の助けがいつ頃に来るのか、知っているかと思って」


 札幌から岩見沢へたどり着き、陵王高校で過ごし一ヶ月以上。避難生活を送っている間に、他の自衛官など訪れたこと一度もない。


「その話か。よく聞かれるんだけど。オレらにもわからないんだ」


 しかし国に属するヤマト隊員も、救助計画などわからぬとの話。


「屍怪が出現した、終末の日。民間人の避難誘導を任され、隊長たちは浄水場や発電所へ向かっていったんだ」


 当時の話を振り返り、事を伝えるヤマト隊員。市民の命を当然に第一とし、活動していたという自衛隊。

 しかし上層部から隊長へ通信がきて、インフラ施設を守れとの命令。生活基盤を失ったとなれば長い目で、多くの命を失うと結論づいたからだ。


「隊長も上の命令には、もちろん逆らえない。結局のところ人員を分けて、今に至るって感じだ」

「水が出るって事は、浄水場は守れているって事ですよね? それなら浄水場に行けば、助かるんじゃあ……」


 経緯を説明するヤマト隊員に、現状を踏まえて問う。

 電気が点かぬことから、発電所は落ちてしまったのだろう。しかし蛇口を捻れば水は普通に流れ、浄水場は健在であると想像がつく。


「浄水場は隣の市にあるんだ。車を使えれば別だが。歩いて行くなら、それなりに日数は必要だ。留守にする間。みんなを放置するなんて、簡単にはできない」


 隊長のいる居場所は任務の観点から想像つくも、軽々に決められぬとヤマト隊員は言っていた。

 自衛官が避難所となる陵王高校を出ては、避難者だけで日々を過ごさなくてならない。屍怪が徘徊する危険な世界では、使命感もあり容易に判断を下せぬようだ。


「EMPの影響。ヤバイですね」


 車など電子機器が動かぬ理由は、電磁パルス『通称EMP』が原因と推察されている。

 電磁パルスとは巨大な雷を、広範囲に拡散させるようなもの。発生した高電流や高電圧は、電子機器を破壊。電磁シールドあれば防げるも、対策している物は稀。

 瞬間的な事で家電製品から車と、影響を受けた機器は多数。実際のところ電子機器はほとんど全滅し、文明レベルは一つ後退したと言ってよい。


「おーい! ヤマト! 作業が終わったよー!」

「待ってろ! すぐに行くから!」


 畑を耕していた少年が叫び、ヤマト隊員が呼応する。


「それじゃオレは行くから。ああ、そうだ。オレのことはヤマトでいいぜ。子どもたちも勝手に、……呼び捨てだしな。あと、敬語も不要だっ!」


 なんとも言えぬ複雑な表情を浮かべ、ヤマトは気遣い不要と立場を示していた。

 少年たちの元へ駆け、畑作業へ戻るヤマト。自衛官と堅い印象ある職業も、友好的で親しみ感じる人物だった。


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