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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第83話 衝突

 いつものように陵王高校の玄関を出て、土を踏み校庭を校門へ向かう早朝。七月と季節は巡って夏となり、昼間は気温も上昇し真夏日に。

 しかしここは北海道と、日本の最北端に近しい場所。太陽が出ぬ曇り模様の天気となっては、今日の気温は少し肌寒いくらいであった。


「本当によくやるよね。死人を探し回るなんて、無意味な事をさ」


 玄関前を歩いて声をかけてきたのは、ウェーブがかった赤い短髪の成海夕山。深紅のシャツに黒いパンツ姿で、大きな瞳を開き向かってくる。

 屍怪に追われる中で偶然にも再会し、札幌では行動を一緒にしていた夕山。一度は離れ別行動をしていたものの、遅れて岩見沢にたどり着いていた。 


「いやぁ、だってさ。彼女。自分の力を見誤って、勝手に死んだだけじゃん!」

「……なんだと?」


 得意気な顔で歩み寄ってくる夕山に、沸々と怒り黒い感情が込み上げた。

 今の心ない発言は、死んだ美月を蔑み侮辱するもの。命を賭し救われた身として、決して許せるものではなった。


「蓮夜もさぁ。人を助けようなんて、甘い考えを持っているみたいだけど。それって傲慢だよ。助けるなんて行為。それは自分が上だと思っていなければ、できない事だからね」


 夕山の発言をそのまま当てはめると、美月は傲慢であったが故に死んだことになる。


「自分の身は、自身で守る。これが基本だよ」


 夕山の言う発言は、一つ揺るがぬ真理だろう。

 しかし美月の起こした行動は、間違い蔑まれるものとは思えない。だからどうしても、納得できる話ではなかった。


「だから彼女が愚かな――!!」


 得意気な顔で続ける夕山の頬を、強く握った拳で殴りつけた。


「……黙れよ」


 亡くなった美月を蔑み侮辱する発言は、許せる範囲を越えた。

 口を閉ざさせるため、思わず出た右拳。無防備であったところに、攻撃を受けた夕山。地に尻もちをついては、唇が切れ血を流している。


「……痛いなぁ」


 手で血を拭っては、見つめ立ち上がる夕山。鋭い眼光で睨みを効かし、歩み寄ってきては肩を掴んだ。


「がはっ!!」


 息が止まるかと思うほど、強く重たい一撃。夕山から放たれた右拳は、腹部へ深く突き刺さっていた。


「一発は一発だよ」


 堪らず膝をつき倒れたところに、夕山は悠然と見下ろして言う。

 美月を蔑み侮辱する発言に、予想外にも強い反撃。今まで我慢していた感情は、堰が切れたよう爆発した。


「うおおおぉ!!」


 起き上がる動作と同時に、腰に手を回しタックル。夕山を下に倒して、右拳を再び振り上げる。

 しかし振り下ろす前に、押さえられる右腕。抵抗されてはそのまま、夕山は上体を起こし向かってくる。


「くっ……!!」


 額と額がぶつかり、受けたのは頭突き。痛みに怯んだとなっては、あっという間に下から脱出されてしまった。


「いいね。トコトンやろうって事かな」


 夕山は立ち上がり拳を握って、笑顔でやる気を見せていた。

 ベルトにホルダーを固定し、持ち歩いていた刀。校庭の地に投げ捨て、身構える夕山と向き合った。


「終末の日以前の事を、思い出してみなよっ!! 飢えや貧困に苦しんでいる人間がいても、人は他人を助けなかったでしょ!?」


 互いに拳を放ち合う中でも、夕山は自分の意見を強く主張していた。

 自分の身は自身で守り、人は他人を助けない。たしかに夕山の主張することは一理あり、人間の一面であることは否定できない。


「だからって!! 美月を侮辱する発言は許せねぇ!!」


 しかしだからと言って、美月に鞭を打つ行為。死者を蔑み侮辱する必要など、どこにもありはしないからだ。


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