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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第三章 変貌の街

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第81話 追われる少女2

「お兄さん。その杉田さんって言い方を、やめてくれるかしら? カレンという名前は気に入っているけど、苗字は好きじゃないの」


 名前のカタカナ表記や響きは、好みと話すカレン。そもそも漢字表記が、どうにもお気に召さないらしい。


「今月のラッキーアイテムはライオンなの。このパーカーに耳飾り。可愛いでしょ?」


 二人の元へ向かう途中に、カレンは服装につき語っていた。

 杉田カレンと言う少女は、表情が薄く淡々としている。喜怒哀楽が読み難くては、少し不思議な雰囲気を纏う子であった。


「お兄さんも占ってあげるわ。占いについて書かれている、本を持っているの」


 話しを聞いているとカレンは、占いや風水について詳しいようだ。それでいてどちらも、かなり信じている様子。


「ここが私たちの住む所よ」


 山沿いに続く一本道を歩き続け、道外れに逸れカレンは告げた。

 白く塗装された壁には色落ちと汚れが目立ち、家自体が傾いて見える木造の二階建て民家。古く年季が入っている様子から、築年数は相当のものだろう。一体を山林に囲まれていることから、もはや岩見沢ともわからぬ場所である。


「カレン! どこへ行ってたんだっ! 一人で行動するなって、何度も言っているだろっ!」


 玄関を開けるカレンの後ろで待っていると、駆けてきたのは細身の男性。黒髪のマッシュルームヘアに、掛けているのは黒い眼鏡。鼻下に口周りと髭の剃り残しがあり、青髭になっている場所が目立つ。

 ヨレヨレの茶色いシャツに、毛玉の付いた黒いスウェットパンツ。服装に清潔感はなく、ほとんど無頓着なようだ。


「ごめんなさい。でも言っても、どうせ止めたでしょ?」


 感情の起伏なく、謝罪をするカレン。性格を知ったる仲となれば、咎も織り込み済みの様子。


「だっ! 誰だっ!?」


 目が合っては存在に気づいたようで、男は途端に大きな声を上げた。

 男がポケットから取り出し向けるのは、刃先の短い折りたたみナイフ。威勢よく威嚇している様子も、手は震え怯えているようだ。


「大丈夫よ。お兄さんは私を助けてくれたの」


 カレンは事情を説明するも、中々に男の警戒は解かれない。


「カレン! こっちへ!」


 怯えた様子でこちらの動向を気にしつつも、カレンの手を掴み家奥へと引っ張っていく男。


「どうして人を連れてきたんだっ! 何度も人と関わらないようにって言ったろっ!!」

「仕方なかったのよ。意図してのものではないわ」


 感情を全面へ出し咎める男に、カレンは相変わらず淡々とした物言いだった。

 事の成り行きを問う男に、要点を伝え説明するカレン。二人の口論が耳に届きながら、待たされること数分。


「とりあえず、中へどうぞ」


 話し合い結論が出たようで、男に家へ招かれる展開となった。

 案内する男は、カレンの兄。見た目に似た所はないものの、正真正銘の兄妹であると言う話だ。



 ***



 積まれるゴミ袋の中には、空の弁当箱やカップ麺の容器。玉ねぎにジャガイモの皮と、生ゴミがあって異臭がする。

 一階の居間や廊下にはゴミ袋が多く、山のように積まれ散々たる状況。歩くことさえ困難なレベルとなっては、生活拠点は二階の様子だ。


「良ければ、ここに」


 余所余所しくもカレン兄により、敷かれる青い座布団。こたつテーブルを前にして、言われた通りに腰を下ろす。

 案内されたのは八畳ほどの空間で、正面には窓が一つ。対面にはカレン兄が座り、カレンは近くの座椅子に。部屋の隅には布団が敷かれ、女性が眠っているようだ。


「一ノ瀬蓮夜さん……ですよね? カレンから話を聞きました。屍怪に襲われている所を、助けてもらったって」


 カレン兄が話す内容は、事実と全く相違ない。説明を受けたということで、曲解なく話を理解しているようだ。


「先ほどは過ぎた態度をして、すみません。妹を助けていただき、ありがとうございます」


 カレン兄は謝罪と同時に、頭を下げて礼を言った。

 感情的であった態度も、事実を確認してか。だいぶ落ち着いており、まともに話ができそうな状態である。


「後ろの人は……」

「彼女ですか。足を捻挫して動けず、良くなるのを待っているんです」


 今も隅で眠っている女性は、カレン兄が好意を持ち交際する相手。屍怪に追われる中で足を負傷し、現在は走れず逃げることも難しいとの話。

 今は足が回復するまで、安静にしての待機期間。彼女が動けるようになるまで、現在の民家に留まる予定だと言う。


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