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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第二章 生者の帰路

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第65話 忍び寄る黒い巨影7

「了解じゃん。合流場所の橋に向かうんだな」


 今まであった経緯を説明すると、理解したと頷く啓太。


「ああ。あと見つかってないのは、美月のみだけど。ハルノも探しているはずだし。先に合流して、向かっているかもしれないからな」


 とりあえずは、一度。大神製紙工場の敷地内から、橋へ向かうことに決まった。

 襲いくる屍怪から逃れ、先に向かったはずの彩加と葛西さん。美月とハルノも、橋にいる可能性を考えてだ。


「ブラッドベアー野郎。追いかけてくる意味がわからなくね? いきなり襲われる理由がないじゃん!」


 執拗に襲い迫るヒグマに、啓太は文句を言っていた。


「っつーか、なんだよ。ブラッドベアーって? 普通にあの熊は、ヒグマだろ?」


 ブラッドベアーとは、聞き慣れない名前。


「熊の種類はヒグマかもしれないけど。明らかに普通とは違うじゃん。凶暴で獰猛な顔つきに、血の毛皮を纏った熊。だからブラッドベアー。考えてみたんだけど、ちょっとカッコよくね?」


 啓太はヒグマの特徴を捉え、勝手に名前をつけていたのだ。


「名前だけならな。そのブラッドベアーは、屍怪を食い噛まれていたんだ。間違いなく感染しているだろうし。遭遇したら最悪だぞ」


 名前については共感でき、個人的に評価できるもの。

 しかしブラッドベアーの存在は、とてつもないリスクの塊。一刻も早くみんなと合流し、遠くへ離れるべきだろう。


「本当に運がないじゃん。通る道が一本でも違ったり、時間が少しズレていれば遭遇しなかったんじゃね?」


 啓太が話す災難も、理解できるところ。今回の件はつまり、出会い頭の交通事故に巻き込まれたようなもの。

 こちらに落ち度や過失がなくとも、不意に訪れる一方的な災難。ハッキリ言って、運の要素が大きい話だろう。


「なぁ蓮夜。多分、気のせいだと思うんだけど。あれ見えるか?」


 大神製紙工場の敷地内を歩き、橋を目指しているところで啓太は言った。


「なんだよ? 何かあるのか?」


 立ち止まり見据える前方。そこにはたしかに、迫りくる黒い巨影があった。


「きっ……気のせいじゃねー!! マジだ!」


 道端に置かれるドラム缶を弾き飛ばし、もの凄い勢いで迫る様。まるで大砲から発射された、砲弾のようなものであった。


「ぬぅぉおおお! このままじゃあぁぁ!! ヤバいじゃんんん!! マジでえぇぇ!! 追いつかれちまううぅ!!」


 ブラッドベアーに追いつかれぬよう、啓太とともに全速力で駆ける。

 しかしわかっていたことであるが、スピード差は明確。カーブを曲がって視線を切ろうとも、確実に距離は縮まっていた。


「スピード勝負は無理だ! あの倉庫に逃げるぞっ!」


 障害物なき場所では、広くて圧倒的に不利。となれば小回りの効く、倉庫内の方が地の利あるとの判断だ。

 緑を主色とした床には、所々に白と黄色の線。左手前には樹皮が残る木材が横向きに、右手前には綺麗に加工された木材が立て掛けられている。


「おいおいっ! ブラッドベアーの野郎! もう来やがった!」


 啓太の発言を受けて背後を見ると、迫りくる黒き巨大なブラッドベアー。


「逃げるぞっ!」


 木材の加工場と思われる倉庫内。手前から中ほどまでくると、左右にあるのは大型の機械。樹皮を剥ぐために使われるカッター的な機械から、木材を釣り上げるためのクレーン。

 中央の広い空間を保つためか。頭上には長い足場が組まれている。


 やべぇ!! このままだと、追いつかれちまうっ!!


 倉庫に入ってもなお、追ってくるブラッドベアー。中央の空間は開けているため、距離はグングンと縮まっていた。


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