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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第二章 生者の帰路

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第64話 忍び寄る黒い巨影6

 ここを探して見るか。


 敷地内を歩いて回り、カマボコ型の倉庫へ。中にあったのは、巨大なトイレットペーパー。のように、巻かれた紙。

 他には銀色の大きなタンクに、ベルトコンベアもある。


「あっ! お兄ちゃん! こっち! こっち!」


 声をかけてきたのは、隅で隠れるようにいた彩加。どこか周囲を警戒しているようで、手を上下に呼ぶ素振りをしている。


「真弥ちゃんが大変なんだよっ!!」


 声を小さく言う彩加は、とても動揺していた。しかしかく言う当の葛西さんは、近くに姿が見当たらない。


「どう言うことだよ?」

「あっちの方を見てよっ!」


 事情を問うたところで、顔を傾けて指を差す彩加。倉庫奥にある階段の上には、震えて蹲る葛西さんの姿があった。


「一緒に逃げてきたんだけど。屍怪に見つかっちゃて。なんとか振り切ろうとしたんだけど。真弥ちゃんは逃げ切れなくて。階段を上った所で、身動きが取れなくなっちゃたんだよっ!」


 声をできる限り小さく抑えつつも、彩加は必死に状況を説明してくれた。葛西さんが蹲る階段の下には、作業服を着た屍怪が十体以上。震える存在に気づいているようで、手を伸ばし群がっている。


「助けようにも。今のままじゃあ、難しそうだな」


 階段前の柵が閉じているため、屍怪は上へ進むことはできない。

 しかし作業に要される足場となっては、葛西さんの逃げ道もない様子。現在の危機的状況を脱するには、外からのアプローチが必要なようだ。


「葛西さんを助けるためには、群がる屍怪をどうにかしないとダメそうだな」

「でも、どうするのっ!? 数が多すぎるよっ!!」


 訴える彩加も話す通りに、階段の下に群がる屍怪は多い。倒して突破をしようにも、戦えるのは刀を持つ自身のみ。

 十体以上の屍怪を相手にするのは、さすがに厳しい話だった。


「俺が囮になって、屍怪を引きつけるよ。彩加はその間に葛西さんを連れて、市外へ繋がる橋に向かってくれ。ハルノも向かっているはずだし。合流場所になっているから」


 屍怪との戦闘は無理と判断し、注意を引く作戦を提案。


「でも、危ないよっ! お兄ちゃん!」


 彩加は危険ある作戦に身を案じ、袖を引いて心配をしていた。

 しかし他に手段もなければ、誰かがやらねばならぬ話。何か行動を起こさねば、事態が好転することなどないのだ。


「ガンッ!! ガンッ!! ガンッ!!」


 作戦が決まったところで、壁を叩き屍怪の注意を引く。


「こっちに来やがれっ! 俺が相手だっ!」


 大きな音と声に反応して、振り向き始める屍怪たち。続々と態勢を変えて歩み出し、標的は新たな対象へ移り始める。


「いいぞ! ほら! 来いよ!!」


 葛西さんの方へ戻らぬよう、大声を発して挑発を継続。完全に標的と固定されたようで、迫りくる十体以上の屍怪たち。


「じゃあ、気をつけろよ。彩加」


 隅で隠れる彩加にあとを託し、屍怪を引き連れ外へ出た。


 なんとか上手くいったな。あとはこの屍怪たちを、どうにかしないとか。


 合流場所となる橋へ向かう前に、屍怪の対処をしなければならない。

 理想は倒すこと。できなくとも、行動不能にさせることが望ましい。


 撒いても他を追われたら最悪だ。俺がなんとかしねぇと。


 対処方法を考えながら、隣接する建物内へ。目の前に映るは、一本真っ直ぐな廊下。左右ともに多くの扉があり、部屋数はかなり多いようだ。

 背後に迫る屍怪の気配。距離を保つため、ひとまずは二階へ駆ける。


 上手く誘導して、屍怪を閉じ込められれば。


 二階の間取りも一階と同様で、最も間近な部屋へ入室。

 室内にあったのは、商品製造に使用される機械。薄く伸ばされた紙が今も、何ヵ所にも渡って並べられている。


 来やがったか。


 扉を開けていたため、続々と入室して来る屍怪たち。

 部屋の後方には、もう一つ扉がある。タイミングを見計らい閉めれば、閉じ込められるとの算段だ。


 あれ!? ……嘘だろ!!


 屍怪を引きつけ後方まで来たところで、なぜだか開かぬ部屋の扉。

 押しても。引いても。叩いても。逃げようにも今となっては、戻ることができない状況であった。


 ……ヤバい。


 前方は開いたのに、後方は開かぬ想定外。多くの屍怪に迫られた所で、逃げ場のない現実。絶対的な窮地。打つ手なしとなれば、覚悟を決める他なかった。


「蓮夜! こっちじゃん! 早く来いって!」


 背負う刀に触れたところで、響く聞き知った声。開かれた扉の先にいたのは、金属バットを持つ啓太だった。


「いやぁ。危機一髪だったじゃん」


 室外へ脱出したところで、扉を閉めて言う啓太。

 啓太は建物に入ったところを目撃。屍怪を引き連れていたこともあり、距離を取ってあとを追っていたとの話だ。


「ナイスタイミング」


 これ以上ないタイミングで、助っ人の登場。啓太が現れなければ、今も絶体絶命の窮地に立たされていたことだろう。


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