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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第二章 生者の帰路

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第58話 三分の一

「車さえ動けば、もっと楽に帰れたはずじゃん。なんで。なんで、動かないんだよぉ」


 先へ進み始めてもなお、啓太は最後尾で愚痴を漏らしていた。


「ダメだったものは仕方ないでしょ! もういい加減諦めなさいよ!」

「そーだ! そーだ! いつまでも愚痴ばかり言って、男らしくないぞぉ!」


 後ろ向きな発言を見兼ねて、注意をするハルノと彩加。啓太のテンションは限りなく、下に落ち込んでいた。

 雁来大橋を越えて進む通りは、想定通りの広い道。建物や信号機も少なく、全面にあるのは田畑。障害物となる車もないことから、歩くにとても気は楽であった。


「うはぁ……。マジかよ。嘘じゃん。嘘だと言ってくれ」


 緩やかなカーブを曲がったところで、見える景色に啓太はため息を吐いた。

 視線の先に広がるのは、ゴールの見えぬ直線的な道路。岩見沢を目指すには、見える範囲よりさらに先。まだまだ長く遠い道のりを、ひたすら進まなくてはならない。


「啓太じゃないけど。歩いて帰るのは、やっぱり大変そうだな」

「そうですね。まだまだ先は長そうです」


 応えた美月とともに、岩見沢へ向かい歩いていく。

 昨日の雨の影響を受け、香る雨上がりの匂い。地平の果てから吹く柔らかな風に、草木は葉を揺らして静かにささやく。天候も進む環境も、とても好ましいものだった。


「あっ! あそこにバス停があるよ!」


 前方に小さな小屋のバス停が現れ、彩加は一人で先行し走り出した。


「おい! 彩加!」


 一目散にバス停へ向かっていくので、引き離されぬよう後を追う。


「ちょっと休憩~!!」


 バス停にあるベンチに座り、荷を下ろして休む彩加。


「勝手に先へ行くなよ! 何かあったら、危ないだろっ!」

「これだけ見通しが良いんだもん。何かあったら、すぐに気づくよ」


 突然の行動に注意をするも、彩加に反省の色は薄い。


「……彩加。走るのが速いよ」

「はははっ! ゴメンねっ!」


 次いで到着した葛西さんにも、彩加は笑顔で応えていた。


「結構歩きましたね」

「少し休憩で良くね? ちょっとばかし、疲れたじゃん」


 バス停に来た美月と啓太も、ベンチに座り休憩モードへ。


「ここまで来て、あとどのくらいかしら? もう半分くらいは、進んだかしらね?」


 バス停前に立つハルノは、進行方向を眺めて言う。


「どうだろうな。まだ三分の一くらいじゃないか?」

「わかってはいたけど。結構ハードな道のりになりそうね」


 ハルノも待ち受ける現実に、少し硬い表情を見せていた。

 現在は札幌の隣となる、江別市までは到達しているだろう。それでも残り三分の二あるとすれば、距離にして二五キロ超。まだまだ長く遠く、険しい道のりであった。


「休憩はもういいだろ。そろそろ先へ進もうぜ」


 バス停のベンチに座る四人を促し、再び岩見沢への帰路へつくことにする。


「ゴルフって、誰かやったことある?」


 目の前に【ゴルフ場】という看板が現れ、啓太は質問を投げかけた。


「パークゴルフなら、やったことがあるよっ!」

「一緒にパークゴルフ場でやったよね。結構前の話だけど」


 答える彩加と葛西さんは、岩見沢のパークゴルフ場でプレイしたとの話。


「パークゴルフなら、オレもあるけど。本当のゴルフって、金持ちの大人がやるイメージじゃん。そっちの三人はどう?」


 どこか答え難くなる価値観を加え、顔を向けて問う啓太。


「俺はどうだったかな。多分なかったと思うけど」


 己が記憶の限りでは、ゴルフをプレイした経験はない。


「私は一応経験あります。実力は本当に、たいしたことないですけどね」

「付き合いで少しだけね。それなら蓮夜も、やったことあるわよ」


 苦笑いをして答える美月とハルノは、ゴルフをプレイ済みとの話。加えて自身も、プレイしたことがあったようだ。


「なんだ。意外とみんなやってんじゃん。あーあ。オレも一度でいいから、ゴルフをやってみたかったじゃん」


 啓太の発言から他愛もない話を挟み、岩見沢を目指し歩いていく。

 雁来大橋を越えてから、進むスピードは上がった。密集した札幌の街とは異なり、広く障害物のない道。警戒もほとんど不要となり、ペースアップしたことが要因だろう。


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