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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第二章 生者の帰路

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第56話 雁来大橋の戦い

 太陽はサンサンと輝き、空気が澄み渡る朝。数時間前までの嵐は嘘のよう、雲一つない青空となった。


「やっと晴れたねっ!」


 書斎の窓から外を見る彩加は、昨日と打って変わり明るい。

 雨で沈んでいた気持ちも、どこへやら。全面に広がる青空を前に、機嫌も良くなったようだ。


「だな。これでやっと、先へ進めるぜ」


 帰路へつくのに、絶好の天候。一日を休みに当てたことで、体調も万全に整えられていた。


「短い間でしたけど。お世話になりました」

「お邪魔しました」


 雨宿りに使った民家を出る際に、美月と葛西さんは挨拶をしていた。家主が不在の中でも、感謝を忘れずにといったところだろう。


「かなりの車が残されていますけど。運転席に助手席。後部座席も、誰も乗っていませんね」


 雁来大橋へ向かうに国道に出て、道路に残された車を見て言う美月。

 車は車線を問わず市外へ向いているも、今や残っている人は一人もいない。


「渋滞してるしな。当然のことだろうけど、車を捨てて逃げたんだろうぜ」


 渋滞する車の列は、雁来大橋まで続いている。

 進まぬ車に乗っていても、時間の無駄。加えて日にちも経っていることから、乗っている人がいないのも当然の話であろう。


「行こう。俺たちは雁来大橋を渡らないと、岩見沢へ帰れないからな」



 ***



「右から回って来てるわよっ!」


 中央分離帯で横転したトラックの上に立ち、全体を見て指示を飛ばすハルノ。


「了解じゃん! 任せとけって!」


 指示を受けて啓太は、右の対抗車線へ向かっていく。


 一時はどうなるかと思ったけど。なんとかなりそうだな。


 雁来大橋の上には、屍怪の姿があった。見える限り少なかったことから、橋を渡る決断をしたのだ。

 屍怪がいるとなれば、迂回するという選択もあった。しかし岩見沢へ帰るに誰も、他の道を知らなかったことも要因である。


「別の道なんてあるのか? そもそも橋が架けられている場所なんて、限られているじゃん」


 啓太は的を射た指摘をし、問題を提起していた。

 豊平川を対岸へ渡るには、橋を渡らなくてはならない。陸地を進むのとは異なり、進める場所が限られる現実。


「仮に別の道を選んだとしても、そこに屍怪がいないとは限らないわよ」


 ハルノが話す仮定も、一つの可能性。別の道の状況が、今より良い保障はない。


「蓮夜! 左の歩道から来てるわっ!」

「了解!」


 司令塔となったハルノの指示を受け、迫る屍怪の元へ向かう。

 雁来大橋を渡るに、フォーメーションを組んだ。全体を指揮する役を、トラック上のハルノ。高い位置から全体を確認し、弓矢で援護も行なっている。


「なんとかだけど。殺ったじゃん!」


 右の対抗車線に展開し、迎撃に当たる啓太。


「ハルノさん! 後ろからも一体! 屍怪が来ていますっ!」


 必死に声を上げる美月と、後ろを見る彩加と葛西さん。三人は掃討を完了した、後方の警戒役である。


 俺はとりあえず、コイツを倒さねぇと。


 左の車線を任された身としては、屍怪を恐れている暇などなかった。

 歩道から歩いてくるのは、腹が無惨に裂けた屍怪。収まり所を失った臓物は溢れ、ブラブラと垂らしながら迫りくる。


「うおぉおおお!」


 雁来大橋に着き、数体の屍怪を屠った刃。今も迫る屍の怪物に、全身全霊を持って薙ぎ払う。


「見える範囲であと少しよっ! 蓮夜はもう一体! 車道側から来てるから、そっちをお願いっ!」

「了解! あと少しだっ! みんな! 踏ん張るぞっ!」


 トラック上で矢を放つハルノの指示を受け、新たな屍怪と対峙するため車道へ戻る。

 車の間を縫い迫っていたのは、中年男の屍怪。裸の上半身には無数の切り傷があり、右肩にはナイフが刺さったまま。すでに何者かと、一戦あったのだろう。


「後ろにある、車の影! また一体! 屍怪が来てるよっ!」

「本当っ! 次から次へと、嫌になっちゃうわねっ!!」


 屍怪の存在を知らせる彩加に、ハルノは弓を引いて応えている。

 現局面の盤面をコントロールするは、屍怪を捌き知らせるハルノ。二つの役を同時にこなす、支柱的な役割と言って良いだろう。


 本当。頼りになるぜ。


「最初の頃なら、ビビってたかもしれないけど! 今はもう、なんとも思わねぇ!!」


 奮戦するハルノの姿に感化され、奮起して屍怪を斬りつける。


「次はっ!?」

「多分そっちは、今ので最後よっ!」


 左方はハルノが見た限り、屍怪の迎撃を終えたようだ。


 こっちはこれで終わりか。ならあとは、みんなの援護に回るか。


 右方にいる啓太の援護へ向かうべく、道路を歩いて中央分離帯を目指す。

 すると目の前に、小さな少女が現れた。どうやら車が死角となり、姿を確認できなかったようだ。


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