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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第二章 生者の帰路

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第55話 止まない雨

 書斎での食事を終えると、女性陣は寝室へ。男性陣は子ども部屋に戻り、各々に休憩を取ることになった。


「じゃんけんで決めようぜ! 勝ったほうが上なっ!」


 方法を提案する啓太と、文句なしの一発勝負。


 今日もまた、いろいろあったけど。なんとか一日を終えたな。


 勝ち取った、二段ベッドの上段。横になって天井を見つめると、今日一日の出来事が脳裏を過ぎる。

 自転車で札幌の街を駆けたことから、屍怪に追われ野口さん宅へ逃げたこと。不意の雨に打たれ、今この民家に至るまで。


 危ない場面も、何ヵ所かあったけど。俺たちは今も、こうして生きている。

 岩見沢へ帰るまで。何を置いても、進むしかねぇんだ。


 寝る前に一つ目的を再認識し、一人でに決意を固めた。

 それからは疲労もあり、自然と重たくなる目蓋。そのまま意識が遠のいては、一時の深い眠りに落ちていった。



 ***



「今日も雨ですね」

「よく降るよね。雨続きだと、気が滅入っちゃいそうだよ。早く晴れないかなぁ」


 止まない雨を前に、美月と彩加は気分を落としていた。

 時間は巡って朝。晴れていれば太陽が顔を出す時間帯なれど、雨が降っていれば雲に覆われ隙間もない。


「今日はどうするんだ? 雨の中でも進むのか?」


 乾パンを口の中へと放り込み、モグモグと食べながら言う啓太。起床後は再び書斎に集まり、今は朝食の最中である。


「えっーっ! 嫌だよっ!! せっかく服を乾かしたのにっ!」

「そうですね。私もあまり、気乗りしないかもです」


 彩加は雨での進行を露骨に嫌がり、美月は控えめにも同調していた。


「雨が降っていても、進めないことはないけど。悪天候の中を進むのは、抵抗感があるよな」


 雨に打たれながら進むとなれば、通常より体力を失い体調を崩す可能性が高まる。となれば体を濡らさぬよう、傘をさす必要性があるだろう。

 しかし傘をさせば、片手が塞がり視野も狭まる。それに雨音が激しければ、屍怪に気づくことが遅れる可能性。リスクは増し進行速度も落ちるとなれば、得策とも思えなかった。


「雨が止むまで待つか?」


 今より先にある雁来大橋を渡れば、民家など雨除けに使える建物はほとんど無い。体を休める機会も減れば、天候の回復を待つべきと思った。


「でも、どうすんだよ? 食料は、なんとかなりそうだけど。水はもうないじゃん」


 話が一つ決まったところで、新たな問題を提起する啓太。

 以前に避難した民家と異なり、現在の民家は断水している。水は飲まずして、三日も生きられない。何より飲料水の確保が、最重要となっていた。


「水も家のどこかに、残されてないかな?」


 水を欲し蛇口を捻っても、一滴さえ出ない状況。今はペットボトル飲料などを頼りに、喉の渇きを潤す他なかった。


「電気も水道も使えない状況。文明の終わりを感じるわね」


 今まで当たり前にあったものがなくなり、不便となった現実にハルノも嘆いていた。


「水の問題か。いや、待てよ! それなら、この手があるじゃん! 今はこの状況を、活かさないとじゃね?」


 啓太は打開策を思いついたようで、一階から鍋を持ってきた。


「鍋に雨水を溜めるのか。まあこれだけ降っていれば、すぐに溜まりそうだな」


 今も激しい勢いで、雨は降り続いている。外に出して置けば、すぐに雨水も溜まるだろう。


「ほとんどサバイバルね」

「一昔前の生活みたい」


 ハルノと彩加は素直な感想を言うも、他に代替え案もなく。鍋をベランダに出して、雨水を溜めることにした。

 窓越しに見る外の景色は、雲の流れが速かった。結局この日も雨が一日中降り続き、民家で一日を過ごすことになった。


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