表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末の黙示録  作者: 無神 創太
第二章 生者の帰路

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/363

第52話 曖昧な記憶

 窓枠に残されたガラス片を排除し、内側の鍵を開けて民家内へ。

 入った場所は、風呂場。白い空間には、シャワーやバスチェア。石鹸にシャンプーと、ボディケア用品が置かれている。


 他人の家とはいえ、土足で上がるのは……忍びないな。


 今の時点でアウトな行動だが、一つ良心が働いた。

 家の中を汚さぬよう、靴を脱いで移動。リビングを通り過ぎて、皆が待つ玄関へ向かう。


「どひやぁーっ!! まぁた雨が強くなってきたじゃん! これは避難しにきて、正解だったんじゃね!!」


 扉の鍵を開けると同時に、玄関に入ってくる啓太。


「そうですね。外で雨宿りをしていても、雨は止みそうにありませんし。悲惨だったかもしれません」


 続き入ってくる美月も、全身が濡れた状態。


「最悪だよっ! 服もビショビショだしっ!」

「仕方ないよ。天気のことなんて、誰もわからないもん」


 濡れたジャージに不快感を示す彩加を、葛西さんは水を払い宥めていた。


「それより、どう? 家の中は問題ない?」


 最後に入ってきたハルノは、何より家中の心配をしている様子。


「風呂場とリビングは問題ない。でも軽く見ただけだし。ちゃんと全体を見て、安全を確認したほうが良いかもな」


 息つく暇もなく、家中の見回り。一階と二階に分け、調べることにした。


「ランドセルもありますし。ここは子ども部屋のようですね」


 ともに二階を調べにきた美月は、部屋の状況から子ども部屋と推察している。

 部屋に置かれるは、二段ベッド。窓際には小さな机が二台と、本棚には漫画本や参考書が置かれている。


「ぽっいな。二階にあるのは、あと二部屋だし。確認して、みんなと合流しようぜ」


 左側に位置する子ども部屋に続き、中央にあったのは書斎。レトロな感じがする机と椅子に、本棚には多くの本が収納されている。

 そして右側にあったのは、ベッドが二台並ぶ寝室。日当たりが良さそうな窓に、室内は綺麗に整頓されていた。


「とりあえず、濡れた服をなんとかしたいわね」


 ハルノが不快感を露わにするのも、当然。ここにいる全員、服はかなり濡れた状態である。


「二階に上がって、服を乾かすか。休憩もしたいところだしな」


 一階で過ごしても良いが、念には念を。昨日と同様に二階へ行き、部屋で休むことに決まった。



 ***



「やべぇ! 超ずぶ濡れじゃん! この服はお気に入りなんだよっ! 早く乾かさねぇと、シワになっちゃうじゃん!」


 濡れたアロハシャツを脱ぎ、窓際に干しかける啓太。

 二階へ上がるなり、男性陣は子ども部屋に。女性陣は寝室へ行き、休憩をすることになった。


「今更だけど、服のセンス。かなり個性的だよな」

「そうか? 別に普通じゃね?」


 啓太がアロハシャツの下に着ていたのは、野菜で人の顔が作られた白地のシャツ。これまたどこで売っているかもわからない、個性的な代物である。


「俺は少なくとも、そこまで派手なのは着ないかな」


 服のセンスという面では、全く共感できなかった。


「蓮夜は無難な色と柄を、選びすぎなんだよ。オシャレって言われる芸能人や、有名なファションデザイナー。みんな人とは違う服を、最先端に着こなしているじゃん」


 啓太の言う通り。オシャレと呼ばれる人たちには、一線を画した組合せをする者も多い。

 しかしだからと言って、自身の理解が及ぶところではなかった。


「っつーか、蓮夜。野口さんが中華包丁を振り上げたとき。よく動けたよな? 怖いとか思わなかったのかよ?」


 啓太が話題を変え問うのは、野口さん宅での一件。


「必死だったからな。考えるより前に、動いていたって感じだよ」


 凶行に走る野口さんを放置しては、危険が及ぶのは明白。身を挺し止める以外に、方法はなかっただろう。


「にしても、あっと言う間に締め上げたじゃん。もしかして、どこかで習ったりしてたのか?」


 手際の良い腕の締め上げだと、啓太はとても感心していた。


「いや、特に何もしていないと思うけどな。多分」

「まあ、それもそうか。そもそもどんな機会あれば、習うんだって話だよなっ!?」


 教わる機会など普通ないと、啓太は一人で納得していた。


 何もしていないとは思う。……記憶の限りでは。


 自信を持って言い切れないのは、記憶障害を起こしている部分があったからだ。北海道に引っ越してくる前。東京に住んでいたとき、事故で怪我をして負った後遺症。症状は人の名前と顔が一致せず、関係性すら思い出せないというもの。

 他にも物や事象などと範囲は多岐に渡り、当時は日常生活ですらまともに過ごせない日々が続いた。それでも当人に会ったり、写真を見て話しを聞く。様々なことをキッカケにパズルのピースは埋まり、完全でなくとも記憶は回復しつつある。


「なあ。向こうの部屋。少しうるさくね?」


 寝室から漏れてくる女性陣の声に、啓太は苦言を呈している。


「えー。そんなことないよっ!」

「いやだぁ!」


 たしかに扉を閉めた子ども部屋にも、女性陣の騒ぐ声は届いている。


「……少しうるさいかもな」


 音を響かせる行為は、屍怪を呼び寄せる事態に直結。今はある程度の自制心を持ち、行動しないとダメだろう。


「このまま騒いでいたら良くないじゃん。蓮夜。ちょっと注意してきてくれよ」


 啓太に促されては、やむなく。女性陣のいる、寝室へ向かうことにする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ