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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第二章 生者の帰路

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第40話 再びの街へ

 ―*―*―美月視点 ―*―*―



「大丈夫!? 蓮夜っ!!」


 異変に気づいたハルノさんは、駆け寄り声をかけている。


 どうしたのでしょう。全く状況が読めません。


 蓮夜さんは頭を抱え、床に倒れてしまった。打撲など直接的要因は、もちろんない。

 普通の頭痛程度ならば、倒れる状態までならないだろう。隣で立ち尽くす啓太さんも、状況を掴めず困惑しているようだ。


「痛いのは、頭!? もしかして、事故のときの傷が痛むのっ!?」


 事故という聞き慣れない言葉を絡め、状態を質問するハルノさん。


「あの……事故って?」


 事故という言葉に疑問を抱いては、反射的に隣の啓太さんへ質問。


「オレも詳しくは、知らないんだけど。蓮夜がこっちに引っ越してくる前。東京に住んでいたとき、かなり酷い事故に遭ったらしいじゃん」


 啓太さんが教えてくれた情報は、全てが初耳となるものだった。


「事故に遭っていたなんて。今も痛みが続いているなら、後遺症とかでしょうか? もしかしたら蓮夜さんは、相当無理をしていたのかもしれませんね」


 状況を見守りつつ、待機すること数分。介抱するハルノさんの力もあって、蓮夜さんの顔色は次第に良くなっている様子。


「大丈夫ですか? かなりツラそうでしたけど」

「ああ。大丈夫だ。もう痛みもないし。心配ないよ」


 問いに答える蓮夜さんの対応は、通常と変わらず力あるもの。


「良かったです。とりあえず心配は、いらないみたいですね」

 


 ―*―*―蓮夜視点 ―*―*―



 なんだったんだよ。いきなりの頭痛に、襲われるなんて。


 意識を失っていた時間は、ほんの数分。目を覚ましてからは、嘘のように痛みも全くない。


 ハルノも言っていたけど。痛んだ場所は、事故のときの傷か。


 触れて確認する額の傷は、約一年半前。事故に巻き込まれ、負ったもの。

 当時は意識ないまま搬送され、何時間にも及ぶ大手術。頭には何針も縫い、足は骨折。治療とリハビリで、長い入院生活を余儀なくされた。


 言っても事故は、一年半以上前の話だ。今では傷跡も小さく、髪に隠れて全く目立たないし。

 完治と言われてから、痛むことなんてなかったのに。なんで、今さら。


「本当に大丈夫?」


 ハルノは顔色を窺い、とても心配そうにしていた。


「大丈夫だって! さっきも言ったろっ! もう痛みだってねぇし!」


 事故のことは、全く覚えていない。あとになって話を聞いたのは、事情を知るハルノからである。


「大丈夫か?」

「お兄ちゃんの方こそ。グスン。頭痛は大丈夫なの?」


 階段に座り涙を拭う、彩加と葛西さん。心配して問いかけるも、返ってきたのは気遣いある言葉だった。


「俺は問題ない。けど南郷さんのことは、なんて言ったら良いか」


 南郷さんという大きな柱を失い、二人の精神的ダメージは色濃い。


「モジャ先生は、立派に役目を果たしたよ! だからあたしたちは、何もかも無駄にしないよう……進んでいかないと」


 大粒の涙を零し、訴える彩加。南郷さんの気持ちを汲み、必死に前を向こうとしていた。

 


 ***


 

「これを後ろに頼む」

「わかりました」


 積み上げられた椅子を退かし、後ろにいる美月へ渡す。

 外へ脱出するために、バリケードを崩すことに決まった。積み上げられた机や椅子を崩し、運んでいくという作業。時間こそかかるものの、確実に前進する選択だ。


「これくらいで良いんじゃね? 通るだけなら、問題なさそうじゃん」


 場所が確保できたと判断し、作業をやめて啓太は言った。

 今はバリケードを片付けるという、作業をしにきたわけではない。机や椅子が両サイドに残ろうとも、歩けさえすれば問題なかった。


「そうだな。一階に下りて、外へ出よう」


 長く伸びた廊下を進み、角を曲って玄関へ走った。

 一つ目標としていた、同心北高校。敷地内から校門を抜け、再び札幌の街へ戻った。


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