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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第一章 終わりの始まり

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第34話 【R.S.】

「にしても、変わった刀だよな。鞘の部分には、なんか……レバーも付いてるし」


 ビルで刀の全容を、再確認した結果。鞘の台形状に厚く機械的な部分には、横へスライドさせるレバーがあった。

 大きさは、小さい。それは一見した感じ、銃などにある安全装置のよう。


「それに、なんだよ。この【R.S.】って。イニシャルだとすれば、ハルノと異なるよな?」


 柄頭の金属部分には、【R.S.】と文字が刻まれている。

 ハルノのイニシャルは、朝日奈でH.A.となる。となればハルノの父親とも、当然に異なる話。


「私に聞かないでよっ! パパのだから……詳しくは知らないわっ!」


 しかしハルノは、知らないとの一点張り。

 何度も刀について追求したため、少し不機嫌になってしまった。 


 にしても、妙に手に馴染むんだよな。


 刀の柄部分には、僅かな凹みがあった。

 それは持ち手となる部分。人差し指を置く位置で、手にフィットする感覚。


 まぁ、扱うに問題ねぇし。使える武器だ。

 ハルノの許可も得たし。上手く扱って、先へ進むしかない。



 ***



「彩加ちゃんが通う高校って、もう近いの? 場所は知ってるんでしょ?」


 隣を歩くハルノは、顔を向け尋ねてきた。麻雀クラブに雑貨店と、様々な業種が入ったビル。市民が生活を営む民家に、飲食店など商業施設が並ぶ札幌の街。

 場所を知らないハルノからすれば、当然に気になる話だろう。


「ああ。前に行ったことがあるからな」


 同心北高校には、以前。彩加の受験時と合格発表時に、二度ほど同行し訪れている。

 そのため主要道路を進む道なら、問題なく理解していた。


「前に大きな建物が見えるだろ。あそこはホテルで、目印にしていたんだ」


 周囲の二階建て民家や四階建てビルと比較し、前方の遠くには頭の一つ抜けた大きな建物。


「あのホテルから道路を二本先。道なりに進んで左折すれば、同心北高校に着くはずだぜ」


 目的地とする同心北高校は、すでに間近と迫っていた。


「そう。ならもう、かなり近いみたいね」


 説明に納得したようで、前を向くハルノ。同心北高校に近づいたことで、歩くスピードは確実に速まっていた。


「……なんだよ。この臭い。超絶に臭くね? 鼻が曲がりそうじゃん」


 前方から漂ってくる異臭に、啓太は鼻をつまみ苦言を呈している。

 ホテルを前方に捉え、一つ手前の交差点。生ゴミを何日も放置したかのよう、強烈な異臭が周囲を漂っていた。


「本当に。なんの臭いでしょうか?」


 美月も異臭対策に手で鼻を覆っては、周囲を見渡し根源を探している。

 前方に構えられた生鮮市場には、縁石を越えて車が突っ込んでいる。歩道には腐った魚が多く散乱し、生臭い独特の異臭を放っているようだ。


「これが原因か」


 歩道に放置されてから、随分と時が経過したことだろう。

 カラスなどに貪られ、身の大半を失った魚。水気を失い干からびた周りには、今も無数のハエが集っている。


「原因の本命は、多分。あっちじゃないかな?」


 夕山が視線を向ける、先にあるもの。


「オエェェ! なんだよ。この状況。酷すぎるじゃん」


 嗚咽を漏らし、拒絶反応を起こす啓太。

 道路上にあったのは、魂なき者の抜け殻。人の死体だった。


「かなりの数だな。腐敗して、損壊も酷い」


 放置される死体は、一人や二人ではない。道路上を進行方向に、多くの数が転がっている。

 死体の状態は人の原型が残る者から、肋骨を剥き出しに肉を失っている者。多くでは肉食獣に貪られたかのよう悲惨な有様で、至る所でハエやウジが湧いていた。


「こんな場所を進まないと行けないのかよ? 臭いも酷いし。息をしているだけで、具合が悪くなりそうじゃん」


 酷く劣悪な環境が続くため、啓太は顔をしかめている。


 異様な状況。たしかに先へ進むのも、躊躇われるな。


「目的地はさぁ。同心北高校だよね。なら、一本前の道からでどうかな? 迂回しても行けるからね」


 死体の様子を確認して、夕山は振り向き笑顔で言った。

 現在の夕山は、札幌に居住している。そのため他と比較し、土地勘があるようだ。


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