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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第一章 終わりの始まり
33/322

第32話 驚き

 ―*―*―蓮夜視点 ―*―*―



 助手席からなら、間違いなく助け出せるっ! 早く取りかからねぇと!


 夕山との口論は自然に終了し、美月の待つ助手席前へと駆ける。


 ん? なんだ?


 迎え入れようと待つ美月の背後に、何か違和感を覚えた。

 何者かの動く影。それは間違いなく、屍怪の存在だった。


 なんでこの場に、屍怪がいるんだよっ!? いきなり来られる場所なんて、なかったはずだろっ!!


 美月の背後にいるのは、スキンヘッド頭の屍怪。

 深く刻まれたほうれい線に、血に汚れた白いシャツ。肩周りの肉は削がれ、鎖骨が露わに。本来なら間違いなく、動けない状態だろう。


 警戒するような場面じゃなかったし。美月に、気づいている素振りはねぇ!!


 迫るスキンヘッド屍怪に対し、美月は無防備に背を向けている。

 それは気づいていない証拠。完全に警戒網の外から、唐突に現れたようだ。


「美月! 伏せろ!!」


 迎え入れようと手を広げる、美月に大きな声で訴える。しかし屍怪との距離は遠く、間合いには入っていない。


「……ッ」


 世界の武器展示会で、入手したナイフ。取り出すと手に持ち、屍怪へ向けて投げつける。

 空中を縦に回転し、飛翔するナイフ。屈んだ美月の頭上を通過し、スキンヘッド屍怪の額に突き刺さった。


「おおっ! やるじゃん! 蓮夜!」


 倒れゆくスキンヘッド屍怪を前に、啓太は驚きの声を上げている。

 それは顔を上げた美月も、一部始終を見ていたハルノも。そして自身すらも、内心では驚いていた。


 なんで俺は……投げナイフなんて、できたんだ?


 失敗となれば、即死亡に繋がりかねない場面。初めて行う行為のはずなのに、できる確信的なものがあった。

 それは思い込みなど過信ではなく、もっと別の根拠ある何か。そのため体はスムーズに動き、意識にも迷いはなかった。


「みなさん! 夫を助けてください!!」


 助手席から外へ出た女性は、必死に助けを求めている。


 今は考えている場合じゃない! 早く助けて、避難しねぇと!


「きゃああああ――――ッ!!」


 意を決したタイミングで、響いてきたのは女性の叫び。

 助手席前にいた女性は、新たな屍怪に襲われていた。背後から肩を掴まれるも、噛まれぬよう必死に抵抗をしている。


「他にもいるのかよっ!?」


 新たに出現した屍怪は、一体のみではなかった。乗用車が破壊した、フェンスの先。スーパーマーケットの駐車場から、止めどなく流れてきているのだ。

 最初に美月を襲った一体に加え、今も三体四体。後続も倒れたフェンスを越え、迫りくるのは相当数。


「やめてえぇ!! 噛まないでえぇ!!」


 大口を開けて迫る屍怪に、女性は自制を求めている。

 しかし屍怪と化した者に、情けや慈悲。慈愛や労りの気持ちはない。


「いやああああ――――ッ!」


 女性の抵抗も虚しく。屍怪の穢れた毒牙は、首筋に深く突き刺さった。

 そのまま押し倒されてしまった女性。後続する屍怪も到着し、姿は完全に飲み込まれてしまった。


「バリンッ!!」


 スーパーマーケットから響く、ガラスの割れる音。耐えていたはずの自動ドアは破られ、続々と屍怪が進出してくる。

 大きな事故が発生し、周囲を巻き込む騒動。店内にいた屍怪にも刺激となり、圧力が増しては破られてしまったようだ。


 さっきまで出られなかったのに。なんで、このタイミングなんだよ。


 駐車場から溢れてくる屍怪に、スーパーマーケットから出てくる屍怪。

 救出したはずの女性は、屍怪に噛まれてしまった。今となってはもう、男性の救出も難しいだろう。


「結局のところ。僕の言う通りになっちゃったね」 


 十字路交差点まで避難したところで、四方を確認し夕山は言った。

 十字路交差点の中央に立ち、見える四方には全て屍怪が存在する。当初は右方向にしか、確認できなかった姿。救助に長く時間を費やしたことで、他の場所からも集まってきたようだ。


 もっと早くに、逃げていれば。ここまでの窮地に、追い込まれることはなかったはずだ。


 結果として、二人の救出は叶わず。今ここにいる全員にも、大きなリスクを背負わせてしまった。

 己で下した決断。夕山の言う通りに逃げていれば、ここまで逼迫した事態にはならなかっただろう。


「ちょっと! どうするのよっ!? かなりの数に、囲まれているんですけどっ!?」


 四方を屍怪に囲まれたとなれば、ハルノにも焦りが見える。


 もう一刻の……猶予もない。


「……先に。先に進もうっ! 正面は俺が殺るっ! 啓太は左をっ! 夕山は右を頼むっ!」


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