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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第五章 本州上陸

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第311話 アプローチ

「屍怪との戦いが目的じゃないから、なんとか食料だけでも入手できないかな?」


 店内にいる数や配置は不明だから、無闇な戦闘は避けたいところ。


「パッと見ただけだから、店内に屍怪がどのくらいいるかも不明よ」


 しかし全容の把握が困難であれば、作戦を立てるのも難しいとハルノは言う。

 店内への出入口は三カ所。正面入口はガラス張りの自動ドアで、メインの通りに面して目立つ造り。店奥の左右にも一カ所ずつドアがあるも、裏口や避難経路としての補助的なものだろう。


「蓮夜師匠が斬ったらどうすか? 最初に会ったときみたいに、屍怪をこうバッサリと!!」


 アクションを混ぜてトモキは、興奮気味に提案をする。


「……戦うことになったら、最悪そうなるけど。店内は刀を振るうには制限が多いし、屍怪の数が多過ぎればさすがに相手はできない」


 頭を冷静にして分析をしたものを、現実を突きつける形で言う。黒夜刀を振るえるほど広い場所で、一対一なら簡単には負けないはずだ。

 しかし狭い店内で囲まれたならば、身動きがとれなくなるだろう。どんなに良い武器を持っていても、状況が向かなければ無謀もいいところだ。


「屍怪と戦わずして、食料を手に入れる。それならマジ、この方法しかなくね?」


 トミぽよが提案したのは現実的で、実行へ移すに妥当と思えるものだった。



 ***



「なんでオレっちが、こんな格好に……」

「あははっ!! マジ、ヤバい!! トモキ!! 超ウケるんですけど!!」


 肩を落とし不満を呟くトモキの姿に、提案者のトミぽよは笑い転げている。

 トモキの首には空き缶に穴を開けて、作ったネックレスが掛けられていた。五つの缶が等間隔に繋げられ、動くたびにガチャガチャと喧しい音を立てる。


「こんなの、誰がやっても一緒だったじゃんか!?」


 注意を引く役割は誰がやっても同じだと、トモキは扱いに対して苦言を呈していた。


「言っても、ウチは発案者だし。蓮ぴょんとハルぴょんは戦える。トモキは弱いけど逃げるのは得意だから、まさに妥当な配役じゃん」


 トミぽよは苦言に対しても揺れず、冷静に抜擢した理由を述べている。

 正面入口前で音を立てて、屍怪の注意を引く作戦。隙を見て他のメンバーたちは動き、食料を手に入れるという計画だ。


「まあ、その……似合っていると思うぜ。そのネックレス」


 少しでもフォローをしようと、気まずそうな中でも言葉を選ぶ。

 トモキの首に掛けられたネックレスは、空き缶を五つ繋げた即席の物。動くたびにガチャガチャと音を立て、その姿はどこか滑稽でもあった。


「ううぅ、酷いっすよ。蓮夜師匠……」


 トモキは嘆いてさらに肩を落とし、情けない表情を浮かべる。

 自分が囮役に選ばれたことへの不安か。しかし何より、滑稽な姿に最も不満を持っていた。


「もし屍怪がガラスを破ることがあったら、俺たちのことは気にせず逃げてくれ」


 店内の屍怪が予想以上に反応し、窓ガラスを破って外に出てくる可能性も考えられる。最悪の事態を想定して、身の安全を第一に考えての言葉だった。


「言われなくてもそうしますよっ!! オレっちの弱さ、舐めないでくださいっ!!」


 トモキは胸を張って答えるも、その声にはわずかな震えが混じっていた。

 逃げ足は速いという自負があるも、自分の非力さも自覚していた。今までになく無理をしている様子は、恐怖と闘っているのだと見てわかる。


「もしそうなったら、バスがある場所で合流しましょう」


 ハルノは状況を的確に見極め判断をし、次の行動を見据える冷静さ見せた。


「トモキ。そのときは屍怪を巻いてから帰って来て。屍怪を連れてきたらヤバいし、マジ許さないから」


 トミぽよは冗談めかしながらも、目は真剣な物言いだ。

 フリにも聞こえるユーモアで、場を和ませようとしている。それでも言葉の裏には、トモキを思う気持ちが感じられた。


「よし、なら始めようぜ!!」


 気合いを入れるように言葉を発せば、ついに食料確保への作戦が固まる。全員がそれぞれの役割を胸に刻み、パチンコ店へのアプローチが静かに始まった。


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