表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末の黙示録  作者: 無神 創太
第五章 本州上陸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

310/363

第307話 サバイバル

「いろいろ大変なことはあったけど、函館の海鮮は美味しかったよな」


 時間があったときに釣りを教わり、新鮮な魚を味わった日々が懐かしい。

 函館はもともと、漁業が盛んな土地。海の恵みが豊富だったため、食料にはそれほど困らなかった。自給自足が求められる今の世界では、海の存在は大きなアドバンテージだ。


「海に面しているだけで、得られるものは大きいもの。武田信玄が海を目指した理由がわかるわ」


 武田信玄が北陸方面への進出を図った背景には、日本海へのアクセスを求めたとも言われている。

 理由として海は塩や魚介類など、貴重な資源をもたらすからだ。肉類や野菜の生産には時間と手間がかかるも、海が近ければ釣りで食料を得ることができる。物流が途絶えた今、この利点は計り知れない。


「それでも、今はできるだけ安全な場所で物資を探すしかないわ」


 コンビニから駐車場に出ると、ハルノはすでに前を向いていた。

 終末の世界でのサバイバルは、ますます厳しさを増している。それでも互いに協力し合い、目的地へ向かって前進するしかない。



 ***



「ぎゃあああっ!! ちょっと!! 来るんじゃねぇ!! トモキ!! マジ、屍怪!! 超ヤバい!!」

「オレっちに言ったって!! こんなハンパねぇ数を、どうすれってんだよぉ!!」


 小麦色の肌をしたギャル風の女性と、ギャル男風の男性が叫んでいる。

 十数台の車両が立ち往生する路上で、車の間を縫うように肩を揺らす者。そこには屍の怪物と化した者たちがおり、生存者に引き寄せられるよう迫る姿があった。


「行くぞっ!! ハルノ!!」

「ええっ!!」


 コンビニの駐車場にて次の行動を考えていたところ、大きな騒動の発生にハルノと即座に反応した。


「ヤバい!! ヤバい!! 来るなっ!! 来るんじゃねぇ!!」


 小麦色の肌をしたぽっちゃり体型のギャルは、手を振り回しながら野太い声で叫んでいた。髪はゆるふわ巻きの金髪で、少し丸みを帯びた顔立ち。身長はやや低くも姿からは、ある種の強さが感じられる。

 そして派手なギャルメイクに、つけまつ毛とキラキラのアクセサリー。黄色のクロップド丈のピタTには、有名な白いネコのキャラクター。黒のダウンベストを着用して、ハイウエストのダメージデニム。肩からはブランド物だろう、茶色のバッグを掛けている。


「大丈夫か!? 早くこっちへ!!」


 腰に帯刀していた黒夜刀に触れて、距離を詰めながら後退を促す。

 愛刀である黒き刃の黒夜刀は、短時間なら高熱を発する特殊な刀。黒色の鞘には銀で二本線が走り、ソーラーシートが埋め込まれている。鞘上部は銀色に台形状の厚い機械装置で、発熱機能と蓄電機能を有す。発熱蓄電機器の部分には黒く獅子の姿が描かれ、その出来栄えはとても迫力あるものだ。


「一刀理心流。光一閃(コウイッセン)


 光の如く一瞬にして踏み込み、刀を抜けば一閃する抜刀術。刃が鈍い光を放って首を落とし、一体の屍怪を完全に無力化した。


「うわぁっ、なんでこんなことに……!! 死ぬ!! 死んじまうっ!!」


 恐怖に尻餅をつき震えながら嘆くのは、小麦色の肌をしたギャル男風の男性。

 盛られた金髪に一重の目で、やや痩せ型の中背。狼の刺繍が背中に入った白と水色のスカジャンを羽織って、シルバーのネックレスが胸元で揺れている。ダメージデニムをラフに穿きこなし、足元はブランド品のスニーカーでキメていた。


「いいからっ!! 黙って下がって!!」


 ハルノは急ぎ早に指示を飛ばして、男が這いつくばり後退を確認。手にしているコンパウンドボウは、滑車とケーブルを組み合わせた構造。

 飛距離を重視するとその射程は、三百メートルを超えるのではないかとの話。命中精度も高く狩猟においては、鹿などの野生動物を仕留めることも可能。機械式で発射に効率よくエネルギーを伝えられ、威力はある種の防弾チョッキをも貫通可能だと言う。


「アガッ……」


 矢は一直線に高速で放たれると、正確に屍怪の額を射抜く。約三十メートルは離れた所から、さすがのコントロールと腕前を見せた。


「ハルノっ!! 援護を頼むっ!!」

「任せてっ!!」


 前方の屍怪に立ち向かうため、信頼する相棒ハルノに背後の援護を託した。


「戦えるなら、援護をっ!! 無理なら下がってくれっ!!」

「はっ、はいっ!! 了解っす!!」


 ギャル男風の男性はぎこちない口調ながらも、大きな声で素直に指示に従って動き出した。

 後退していくギャル風の女性を、護衛姿勢でバットを構えるギャル男風の男性。迫り来る屍怪に対抗するため、最低限の体制が整ったといえる。


「一刀理心流。円舞(エンブ)


 舞い踊るかのように刀を振えば、次々と倒れていく屍怪たち。

 背後のハルノはコンパウンドボウにて、正確に矢を放って屍怪を仕留めていく。ギャル男風の男性は倒れた屍怪にバットを振り下ろし、これでもかと念入りにとどめを刺していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ