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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第305話 函館39

「……行かねぇ。俺たちは自分の足で、東京のジェネシス社を目指す!!」


 しかし声を強く拒否をするのに、一片の迷いすらなかった。

 メリルの提案には多くの利点があるも、それ以上に譲れないものがある。メリルは父親である獅子王統夜を、諸悪の根源のように語っていた。確証もなく家族を悪者のように扱う相手を、簡単に信用することなどできるはずがない。


「そうですか。ならばまたいつか、どこかでお会いしましょう」


 そう告げるとメリルは急ぎ、ヘリコプターに乗り込む。

 ほどなくしてプロペラが回転を始め、強烈な風を巻き起こしながら機体が上昇。地上にも吹きつける突風を残しながら、ヘリコプターは上空へと舞い上がる。


「にゃにゃにゃ!? 待つにゃっ!! どこへ行くんだにゃ!?」


 駆け寄ってきたねこちーは上空に、遠ざかるヘリコプターに手を伸ばして嘆く。


「正しい判断だったと思うわ。正直なところ、メリルは信用できないもの」


 空を見つめ静かに言うハルノは、決断につき賛同的だった。

 メリルの言葉はどこまでが真実なのか。函館山展望台に調査と称して、何を探っていたのか。すべてを話していたとは到底思えず、軽々しく付いていくのは危険にも思えたのだ。



 ***



「蓮夜さん!! ハルノさん!! バイバイだのっ!! またいつでも遊びに来てのっ!!」

「次に来たときは、体験を教えてくれにゃ!! 話を元にして、再生数の伸びる動画を作るにゃ!!」


 見送りに駆けつけたのは、まこたんと動画配信者のねこちー。

 ここは赤レンガ倉庫の近くにある港。これから漁船に乗り、青森へと向かうところ。他にも仲村マリナに、村井マサオやミサキ。緑や白のターバンを巻いた者たちを含め、大勢の人たちが見送りに集まってくれた。


「二人とも気をつけて。無事の旅を祈っている」


 漁船へ乗り込む直前となり、仲村マリナから送られる激励の言葉。

 函館に到着してから今日まで、様々なことがあった。困難も多かったがそれ以上に、多くの人と信頼を築くことができた。今やここにいるみんなは、単なる知り合いではなく大切な仲間だ。


「みなさんもお元気で」

「目的を達成したらまたいつか、函館に寄らせてもらいます」


 名残惜しそうに告げるハルノに、続いて別れの言葉を送る。


「よし!! 出航だっ!!」


 操縦室から魚村海斗の力強い声が響き、漁船はゆっくりと港を離れて沖へと向かい始める。

 港へ振り返れば、人々が手を振っている。こちらも手を振り返す中で、シルエットは次第に小さくなっていった。


「……函館。いろいろあったわね」

「ああ、そうだな」


 今日までを思い返すよう静かに呟くハルノと、胸の内にて去りゆく街の記憶を巡らせる。

 泣き女との遭遇から始まって、テラォード・ブッチャーとの戦い。函館を覆い尽くした炎の海に、ヘリコプターでメリルの登場。短い滞在だったがあまりにも濃密で、決して忘れることのできない日々だった。


「蓮夜っ!! あれっ!! 黒木さんじゃないかしらっ!!」


 ハルノが声を上げて、見つめる先に立つ人。

 函館より前の登別から、行動を一緒した黒木実。車の運転技術や生き方まで、学ばせてもらったことは非常に多い。


「先に挨拶は済ませていたから、見送りには来ないと思っていたぜ!!」


 海へと突き出す埠頭に立ち、タバコを吸う姿を見て思う。

 今は函館の街を復興に向けて、とても忙しい段階のはず。見送りは難しいかと思っていたけれど、最後に顔合わせが叶って心はとても温かくなる。


「黒木さん!!」

「黒木さんもお元気で~!!」


 隣のハルノは声を上げて手を振り、揃って旅立つ前に別れを惜しんだ。

 黒木さんは無言のまま、そっと右手を振り上げる。言葉にせずとも想いは伝わってきたから、ただそれだけで十分だった。


「見えてきたな。上陸すればもうあとは、陸地が東京まで続いているんだ」


 漁船が大海原を進む中で、陸地が薄っすら見え始めて思う。

 旅路はまだまだ長くとも、目的地には確実に近づいている。海を越えるという難関を一つ克服し、気持ちを新たに視線は前へと向いていた。


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