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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第304話 函館38

「何が起きたんだよ?」

「知りたいですか?」


 自分から話を振っておきながら、いざ問えばメリルは話をもったいぶる。難儀な性格をしているのは、昔から変わっていないようだ。


「いいから教えなさいよ」


 聞きに徹していたハルノも見兼ねて、早く話せと強めの追及をしている。


「……いいでしょう。でもまずは考えて見てください。圧倒的な技術力に事業規模と資金力を持つジェネシス社が、今の状況を予見できなかったと思いますか?」


 教えると言いながらメリルは、本題へ入らず前置きから始める。


「……どういう意味だよ?」

「ジェネシス社。そしてその社長である獅子王統夜は、今の事態を承知していたということです」


 質問の意図を図れずして問えば、メリルは一つの可能性を示唆した。

 しかしその可能性は、納得できる内容。世界でも有数の情報力を持つジェネシス社ならば、たしかに予見できたとしても不思議ではない。


「予見できていて、なぜ何もしなかったのか。それはジェネシス社。獅子王統夜が今回の一件に、深く噛んでいるからです」


 メリルは一つの揺がぬ根拠を元に、大きな推論を打ち立てた。


「ブルーフロンティア計画。オーストラリアから遥か東に、南太平洋に作られた人工島。それは今回の事態を想定して難を逃れるため、ジェネシス社が事前に作りあげたものなんです」


 推論を肉付けするように、メリルは重ねて情報を落とす。

 ジェネシス社が長らく前から構想して、十年以上前から始まっていた計画。世界中から各分野の優秀な人材を集めて、世界最高峰の人工島を作るというもの。ジェネシス社の下部組織にいた頃は、人材のスカウトなどに参加したこともある。


「根拠としては弱いわね。ブルーフロンティア計画は、本当に今の事態を想定していたのかしら? それに蓮夜のお父様が関係していたって、どこからそういう話になるの?」


 揺がされた一大付けの推論を一瞬で値切るように、ハルノはできるだけ真実のピースを組み合わせて指摘する。

 メリルの言葉は一見して確信に満ちているようであるも、所詮は個人的な観点が混ざった推論でしかない。言動には何か誘導している節さえあり、逆に真実から遠ざけている気さえした。


「で、結局は終末の日に何が起きたんだよ。今までの口ぶりからして、知っているんだろ」


 前置きを長くもったいぶって、本当に話すつもりがあるのか。

 知りたいのは、ただ事実のみ。個人の主観が混ざる推論など、鼻っから不要なものだ。


「広域型小隕石群。それも三日間に渡り、世界各地に落下したという話です」


 話の本題へ戻ればついに、メリルは原因とされる事態を明かした。

 直径十メートル級の隕石だったとしても、その爆発エネルギーは広島原爆を遥かに上回る。半径十キロ以内の木造建築は全壊し、火災発生の可能性も高く都市部なら甚大な被害は免れない。五メートル級でも爆心地周辺の建物が損壊し、一メートル級ですら直撃すれば家屋を破壊する力を持つ。


「あまりの数の多さに、知らなければ戦争と勘違いした人も多いでしょう。この石を知っていますか? これが隕石の欠片です」


 言いながら胸ポケットから、メリルが取り出したのは小瓶。中にはキラキラと輝く、光沢のある黒い石が入っている。


「その石……蓮夜、見覚えない?」


 ハルノの問いかけに対して、思い返すよう頭の中で記憶を探る。行動を一緒にしている以上は、一人だけ見ていないことなどないはず。

 過去を遡り出来事を思い返せば、東京へ向かう旅を始めた初期の頃。三つ子たちと出会ったときに、一人から見せてもらった石。形状や色合いなど、目前の物と酷似していた気がする。


「イマニティでは、黒生石(こくしょうせき)と呼ばれています。なんでも微弱な電波を発しているらしく、黒生石は屍怪を呼び寄せるらしいです」


 疑わしい部分はあるものの、メリルの話には確かに真実味もあった。

 三つ子と出会ったとき、襲われたのは黒い石を持っていた者。実体験と照らし合わせれば、話に符合する点は多い。


「そろそろですか」


 メリルは何かを察知した様子で言い、八匹の蜂型ドローンが手元に戻ってくる。

 しかし他に通信機らしきものはなく、耳に何かを装着している様子もない。情報をどこから得ているのか、一見して全容は謎のままだ。


「あっ!! ヘリコプターだのっ!!」

「救助かにゃっ!! おーい!! 助けてくれにゃあ!!」


 遠くから駆け寄ってくるのは、まこたんとねこちー。背後には函館山展望台の人々もおり、揃ってこちらへ向かい走ってきている。

 函館山展望台にヘリコプターが降り立つなど、終末の日から一度もなかった大きな出来事。異変を察知した者がいたならば、他者へ報告して集まってきてもおかしくはない。


「どうです、蓮夜さん。ボクと一緒に来ませんか? 一緒に来れば、今よりもっと多くの情報を知ることができると思いますよ?」


 メリルはそう言いながら手を差し出し、ヘリコプターへの搭乗を促してきた。


「……函館山展望台の人たちは?」


 しかしまず気になったのは、ここにいる人々の扱い。


「残念ながら、ボクたちは救助に来たわけではありません。蓮夜さんとハルノさんの二人くらいなら問題ありません。しかしそれ以上の人数を乗せるのは、定員的にも不可能です」


 メリルは目的が異なると説明し、周囲の人々が集まる前に出発しようと促す。

 メリルからの提案は、正直なところ魅力的だった。終末の日に何が起こったのかを詳しく知ることで、今後の対策をより具体的に練ることができるかもしれない。それにこのまま東京へ向かってくれるのならば、旅路を大幅に短縮できるというのも大きな利点だ。


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