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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第285話 函館27

「……みんなビビらせていた癖に。……楽勝じゃないか」


 赤レンガ倉庫から帰路へつく中で、村井マサオは拍子抜けと呟いていた。

 坂道中央を歩く一行の左右には、飲食店や雑貨屋などの商店が並ぶ。黒木さんが決めた陣形は、V字型と鶴翼の陣。前方の者が異常を察知すれば、後方と即座に対応する。見落としを二重、三重に防ぐための陣形。黒木さんは最後尾で全体を見渡しながら、函館山へ向かう隊列を率いていた。


「楽勝なんてことは決してない。どれもこれも全て、黒木さんが判断しての結果だ。誰でも簡単にできるとは、間違っても思わないほうがいい」


 事が全て順調に運んでいるのは、冷静な判断で進行方針を示すリーダーいるから。

 屍怪の発見回避を最優先とし、戦いを避けるという進行方針。行き当たりばったりで行動していたならば、常に犠牲者なしとの結果にはなっていないだろう。


「函館山ロープウェイまであと少しだ。みんな最後まで気を抜かず、警戒を緩めず進んでくれ」


 衣服店やスポーツ用品店など商店を左右に、リュックを背負うメンバーの足取りは重い。

 最初は空だったリュックも、帰り道では物資で一杯。レトルト食品に缶詰や、様々な飲料に食器類。ティシュペーパーや歯ブラシなど日用品に、生活の質を向上させるため書籍を詰む者も。重量が増した分だけ体力を奪い、疲労を蓄積させるのは誰しもだった。


「……黒木さん。どうかしましたか?」


 ふと後方に違和感を覚えては、立ち止まっている姿に問う。

 帰路へつく中で黒木さんが立ち止まるなど、今までの経験からして珍しいこと。何か思うところでもあったのか、真剣な表情で考え事をしている様子だ。


「……一人。足りないな」


 黒木さんが感じ取ったのは、メンバーの人数不足。

 赤レンガ倉庫を出発する際に、人数確認は済ませているはず。本来ならありえない話であるも、黒木さんの言葉には確信が感じられた。



 ***



「そんなはずは……」

「うわぁああ!!」


 前を行く背中を数えようとしたところ、不意に背後から声が上がった。

 スポーツ用品店のドアが勢いよく開き、慌てて飛び出してきたのは魚村拓海。手には目立つ青色で、野球のグローブが握られている。


「何をしているっ!?」


 今回はスポーツ用品店に寄るなど、初めから計画していないこと。独断で勝手に動いたのかと思えば、咎める声は自然と大きくなった。


「ごめんなさいっ!! どうしても、欲しい物が目に留まって!!」


 魚見拓海は顔を青ざめさせながらも、すぐに謝罪の言葉を口にしている。


「ウガアアァ!!」


 他にもいろいろ言いたいことはあるも、スポーツ用品店から屍怪が現れそれどころではない。

 先頭を切って出てきたのは男の屍怪で、お腹を膨らませ青いエプロンをしている。一体を皮切りに屍怪は次々と出現し、場は一気に混沌の気配を醸し出した。


「屍怪だっ!! 屍怪が出たぞっ!!」


 騒動に気づいた一人が叫び声を上げ、全員が周知したところで新たな展開となる。


「ギャ!! ギャ!! ギャアア――――!!」


 路上には泣き女が出現しており、耳につく高い声で叫びが響き渡った。

 屍怪たちの行動は一気に活性化し、叫びを聞いて集い始める屍怪。今まで静かであった店舗内から、細い路地を走って迫る者。泣き女の叫びは状況を悪化させ、瞬く間に場は危機的なものへと変わった。


「僕が……。……僕のせいで」


 魚村拓海は自の行動が引き金となり、体を震わせ狼狽えている。軽率な行動が招いた結果に、責任から酷く動揺していた。


「その話はあとだ!! 逃げるぞっ!!」


 責任を感じているより今は、この窮地を逃れなくてはならない。

 魚村拓海に一喝をして促し、前をいく人たちと合流。迫る屍怪から逃れるため、函館の街を走り出す。


「屍怪を引き連れては、山麗駅に行けないっ!! ここは遠回りになっても、登山道へ向かうんだっ!!」


 追っ手を巻けていなければ、計画の変更を余儀なくされる。

 函館山ロープウェイを使用するに、山麗駅は譲れない重要拠点。多くの屍怪を引き連れては、決して行けないのだ。


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