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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第282話 函館24

「うぉおおおっ!!」

「やったっ!! やったぞっ!!」


 緑のターバンをした者に、白いターバンを巻いた者たち。

 ブッチャーという圧倒的な脅威を倒し、希望と解放感に笑顔が広がる。広場には歓声が響き渡り、人々は歓喜の渦に包まれていた。


「本当によくやったわっ!! 怪我とか大丈夫っ!? 蓮夜!!」


 未だ興奮が冷めやらぬ中で、駆け寄ってくるのはハルノ。全てを見届けていた瞳には、安堵感と少しの心配が見て取れる。


「俺なら大丈夫だ。それより、他のみんなは……」


 攻撃を回避する中で肩にかすり、ちょっとした怪我くらいならある。

 しかし軽傷と言えるものであれば、心配されるようなレベルではない。何よりブッチャーとの戦闘は激戦で、負傷した人は大勢いるだろう。重傷となっている者もいるはずだから、自分のことよりそちらの方が気になった。


「まずは怪我人の確認だっ!! 自力で動けない者には、協力し手を貸してあげてくれっ!!」


 勝利の喜びに浸るのは一瞬で終わり、事後処理と仲村マリナの声が響き渡る。歓喜の声を上げていた者たちも、負傷者の対応が急務であると認識したようだ。


「って言っても、怪我人の対応はどうするんだよ?」


 広場に座り込む負傷者たちを見渡し、手を貸す人たちを見て思う。


「五稜郭から逃げてきた人たちの中に、医者と看護師がいるの。その人たちは戦いで怪我人が出るかもって、赤レンガ倉庫に残り待機しているわ」


 事前に準備されたサポート体制あり、怪我人の対応は可能だとハルノは言う。

 ならば医者と看護師いる赤レンガ倉庫まで、怪我人を移動させる手伝いに参加。包帯を巻かれたり松葉杖を付いたりと、現場は野戦病院のような状況。内臓破裂の死傷者を一人だけ出してしまうも、あとの人たちに命の別状はなかった。


「あ――っ!! やっと見つけたにゃっ!!」


 明るく元気に聞こえる声で、特徴的でお馴染みの語尾。

 声のする出入口方面に顔を向ければ、三毛猫のパジャマを着用する女性。頬には髭のペイントが施されており、配信者のねこちーである理解できた。


「まこたんっ!! ねこちーっ!! 二人とも函館山展望台にいたはずだろっ!? なんで赤レンガ倉庫に、最前戦の近くにいるんだよっ!?」


 隣には小さい子どもがもう一人いて、それもやはり知っている顔。

 左右に一つずつお団子が作られた髪型で、肩周りをピンク色に基本は白のシャツ。ピンクのスカートを着用し、まこたんと呼ばれる六歳の女の子。


「大変なんだのっ!! 妊婦さんがお腹を痛がって、今にも子どもが産まれそうなんだのっ!!」


 まこたんが必死な声で伝えにきたのは、陣痛が起きて出産が間近との話。

 妊婦である三橋奈緒さんは、函館山展望台で安静第一だった。野戦病院と化した赤レンガ倉庫でも、言葉の重大さに全員が一瞬にして静まり返る。


「妊婦ってことは、……奈緒さんのことか? でもまだここには、戦いでの負傷者が……」


 話の大筋を理解したと同時に、どうすれば良いか対応に困る。

 屍怪やブッチャーとの戦いで、野戦病院と化した赤レンガ倉庫。まだ治療を必要とする負傷者もいるはずで、一存で決められることなど何もない。


「子どもが産まれるって!! それは、……おめでたいなっ!!」


 緑のターバンを巻いた男性は、話を聞いて力強い声を上げる。


「そうだっ!! 命に別状はないんだろっ!? オレたちは大丈夫だっ!! だから妊婦さんのところに、急いで行ってくれっ!!」


 呼応するように白いターバンの男性は言い、他の人々からも同様の声が上がり始める。

 戦いで疲弊した人々の心身に、新しい命が生まれるとの吉報。それは希望の光が灯されるようなもので、現場に明るい雰囲気をもたらした。


「一ノ瀬君、朝日奈さん。医者と看護師を連れて、先に展望台まで戻ってはくれないか? こちらの負傷者は、残る我々で何とかしよう」


 最低限の治療は終えているとの話から、仲村マリナは人々の意向を汲むことに決めた。


「それでいいなら、任せてくれっ!! ハルノ、急ごうぜっ!!」

「ええ、準備するわ!!」


 許可が降りたとなれば迷うことなく、ハルノと揃って展望台へ向かうことに。

 医者と看護師に加えて、まこたんとねこちー。合わせて六人は先んじて、函館山展望台へ戻ることになった。


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