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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第279話 函館21

「弾が尽きたぞっ!! 槍部隊は前へっ!! 取り囲んで叩けっ!!」

「うぉおおおっ!!」


 仲村マリナは次なる号令を発して、槍部隊メンバーの交戦へと移る。

 参加しているのは猟銃部隊や偵察部隊などを除く、槍を所持する二十名ほどで最前戦にもいた人たち。仲村マリナは圧倒的な物量作戦で、ブッチャーを押し潰すつもりのようだ。


「うぉらぁっ!!」


 白いターバンをした槍部隊の男性が突き刺せば、ブッチャーの腹部表面に大きな切り傷をつける。

 今まで数多の銃弾を受け続け、防戦一方だったブッチャー。耐えていたブッチャーの反撃は、ここから始まりを告げるのだった。


「グルゥ……」


 防御に使っていた腕を解くと、振り払ったブッチャー。槍で突き刺しに接近した三人を一払い、槍部隊との壮絶な戦いが始まった。


「ここは俺も行くぜっ!!」


 接近戦ならば力になれると判断し、黒夜刀を持って参戦の意を示す。


「蓮夜。気をつけて」


 コンパウンドを主武器とするハルノは、接近戦には加われずエールを送る。

 サブ武器としてサバイバルナイフを持つも、ブッチャーを相手に役立つとは思えない。矢も全て使い果たしたハルノは、最前戦に加わるのは難しい状態だった。



 ***



「うぉおおあを――――っ!」


 攻撃を受けたと思われる男性は、顔を向ける逆方向に吹き飛ばされていく。

 槍部隊の人たちは包囲をして展開するも、反撃に出たブッチャーに尻込み。路上にて腰を落とし座り込む者の腕は、不自然な角度に折れ曲がっている。倒れたまま動かない人もいれば、傍にて介抱をする者の姿。数で圧倒しているはずもすでに、多くの負傷者が出ているようだった。


「盾部隊!! ブッチャーのターゲットを取ってくれっ!!」


 緑のターバンを巻いた者は叫び、後方から四人の男たちが前へ出てくる。黒い盾には【SWAT】と書かれ、身長台に大きく固そうな代物。

 ブッチャーの正面でどっしりと腰を低く構え、自らを標的として引きつける覚悟を決めた者たち。攻撃に耐えられるよう考慮してか、身長は百八十センチほど筋肉質の厳選された人たちだ。


 まるでボス戦だな……。


 慌ただしくも移りゆく戦況に、ふとゲームの展開を想像して思う。

 盾部隊がブッチャーの注意を引きつけている間に、槍部隊は背後や側面から攻撃を仕掛けるという作戦。確実にダメージを与えるという動きは、統率されたゲームのギルド戦を彷彿させた。


「一刀理心流。(サン)五月雨(サミダレ)


 蚊帳の外から感想に浸っている間もなく、黒夜刀を振るい放つは五連続の突き。

 ブッチャーが盾部隊を攻撃している間に、背後から的確に刺突を繰り出して後退。反撃を許さない立ち回りを見せるも、体の頑強さは想像の遥か上だった。


「しかし……なんて耐久力だ……」


 緑のターバンをした男性は、絶望感を滲ませた声を漏らす。銃弾を文字通り雨霰のように浴びて、何度となく近接攻撃も受けたはず。

 しかしブッチャーはなおも平然と動き続け、動きの鈍化はおろか疲労すら感じさせない。一方で生者たちの負傷者は増え続け、消耗戦は明らかに限界へ近づきつつあった。



 ***



「みんなっ!! 離れろっ!! 離れろ――っ!!」


 最前戦にいる誰かが大きな声で叫び、戦闘は一旦の中断を見る。

 渦中にいた人々はブッチャーから離れ、混乱の中で訪れる一時の静寂。一定のリズムが刻まれる排気音が聞こえ、広場に黒い車体の乗用車が侵入してきた。


「グルゥオオォ……」


 完全な不意打ちを受けたブッチャーは呻き声を漏らし、宙を舞って十メートルほど先の地面に叩きつけられた。

 勢いを緩めぬ直進は容赦なきもので、相当の威力があったことだろう。タイヤがアスファルトを削る音とともに、一直線にブッチャーへ向かい衝突したのだ。


「……誰だよ。こんなことをしてくれたのは……」


 予期せぬファインプレーを起こしたのは、一体全体どこの誰で何者か。

 驚愕する中で視線が車両に向かえば、開かれていく運転席の扉。ゆっくりと地に足をつけ現れたのは、とてもよく見知った顔であった。


「黒木さんっ!!」


 黒い乗用車から降り立ったのは、強く信頼を寄せる仲間。家の打ち壊しを終えて、到着した黒木実であった。


「黒木さん。助かりました」

「フフフ。マリナ、相変わらず詰めが甘い」


 駆け寄りお礼を述べる仲村マリナに、黒木さんはいつも通りの落ち着いた表情で答える。

 その言葉からもわかるように、彼ら二人は旧知の仲。囲碁のプロ棋士として同じ世界で競い合い、師匠と弟子のような関係を築いているらしい。


「まだだっ!! ブッチャーが立つぞっ!!」


 白いターバンの男性が声を張り上げ、向けられる視線の先にいる者。 

 それは車の衝突をものともせず、再び立ち上がるブッチャー。やはり常人ならざる存在は、簡単に終わりを見せてくれそうにない。


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