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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第276話 函館18

「屍怪がどんどん集まってきてっ!! このままだと炎に焼かれるより前に、屍怪に押し潰されてしまいそうですっ!!」


 左右にビル群と中央に四車線の国道が走る場所に到着し、白いターバンを巻いた偵察隊の男性は走って報告にきた。

 街を包む赤い炎は屍たちの背後を照らし、恐ろしい影が次々と地面に伸びてくる。国道の四車線にびっしりと広がる屍怪は、数が多くて五十体か百体ほどか。偵察隊の五名は五十メートルほど離れた所で応戦していると聞くも、桁が違えば明らかに無理難題という他ない。


「怯むなっ!! 救援にきた今回のメンバーは、函館山組も五稜郭組も関係ないっ!! 人の命を守るために、集まってきた仲間たちだっ!!」


 魚村海斗はネガティブになる必要はないと振り返って、仲間たちを奮い立たせるように声を張り上げた。

 最前戦を訪れた人数は四十人ほどで、いずれも屍怪と戦ってきた歴戦の猛者たち。函館山には各々の家族がいて、食い止めるという意識は高い。魚村海斗の檄に顔が引き締まり、全員の士気を一気に押し上げた。


「ここから先は絶対に通すなっ!! 避難者たちが函館山へ逃げきるまで、一体たりとも突破させるわけにいかないっ!」


 仲村マリナも負けじと声を張り、戦いに備える者を鼓舞する。

 数では屍怪に圧倒されようとも、こちらは連携のとれる生者で武器も潤沢。鉄製や木製の槍を携え、猟銃を持ち構える者も。仮に倍の数がいたとしても、簡単に負ける気はしない。


「矢が尽きるまで撃ち続けるわっ!!」


 ハルノはコンパウンドボウを手に、息を整えて矢を装填と準備をする。矢が放たれると頭部へ正確に突き刺さり、一射一射と屍怪を一体ずつ崩れ落としていく。


「一刀理心流。円舞」


 こちらも負けじと最前戦に加わり、黒夜刀を手に瞬く間に剣技を繰り出す。

 円を描き舞い踊るかのよう、黒夜刀を振るい旋風の如く。屍怪たちは刃の旋律に乗るように、次々と地に伏し倒れていった。


 数では屍怪に負けていても、俺たちは生きている人間だ。

 互いの背を守って助け合い、励まし支え合う姿勢。数で勝る屍怪が足し算だとしても、こっちが掛け算なら決して負けてねぇ!!


 函館山組と五稜郭組も協力し合い、周囲の状況を観察しながら思う。

 あくまで個で動く屍怪に対し、生きた人間は集の力を発揮。槍の一刺しで屠れなくとも、すぐ隣の者が追撃を浴びせる。数で圧倒的な優位に立たれても、引けを取らず互角以上の奮戦となっていた。



 ***



「ギャ!! ギャ!! ギャ――――ッ!!」


 僅かに優勢へと傾き始めた矢先、泣き女の不気味な叫び声が響き渡った。

 狂気を孕んだ叫びに応じるよう、次々と集まってくる屍怪たち。泣き女は屍怪を壁にした後方にいるようで、最前戦から時おり姿が見え隠れする程度だ。


「泣き女に仲間を呼ばれたら、いくら倒してもジリ貧だっ!! あいつをどうにかしないと、状況は打開できねぇ!!」


 屍怪を倒し続ける中でも、仕留める方法を必死で考える。


「ハルノっ!! なんとか泣き女を狙えないかっ!?」

「無理よっ!! 屍怪が壁になって、射線が通らないわっ!!」


 遠距離から狙えればと期待をするも、ハルノは厳しいとの見解だった。

 後方の泣き女へ射線を通すために、邪魔となるは前列にいる屍怪の壁。立ち塞がる屍の怪物たちを排除できなければ、射線を通せず接近することもできない。


「屍怪は倒しても倒しても、次々と寄ってくる。何か他に手は……」


 打開策を模索する中で周囲を見渡し、雑居ビルの外付け非常階段に目が向く。


 平地からの射線が無理でも、建物の上からならどうだ?


「ハルノ!! ビルの上から狙えないかっ!?」

「……そうね。それなら……いけるかも」


 思い立ってはすぐさま問いかけ、ハルノは状況を考慮しつつ頷き応える。

 国道で壁となる屍怪の排除は、泣き女が鳴いて補充するから厳しい。平地から狙うこと難しければ、あとは高い位置からの狙撃に賭けるしかない。


「泣き女を狙撃するため、ハルノとビルへ向かいますっ!! 俺も護衛で前戦を離れますけど、みんなは大丈夫ですかっ!?」

「泣き女を倒してくれるなら、願ったり叶ったりだっ! 二人とも十分に気をつけて行けっ!!」


 二人の中で意見を統一させて、仲村マリナに説明すれば背を押される。

 屍怪を何度となく倒しても、その度に叫んで呼ぶ泣き女。仲村マリナやここにいる全員の総意として、泣き女の討伐は圧倒的に切望するところだった。


「行くぞっ!! ハルノ!!」

「わかったわっ!!」


 許可を得てから雑居ビルへと向かい、ハルノと一緒に非常階段を目指し走る。

 途中で遭遇した屍怪を薙ぎ払い、掻い潜りつつ非常階段。ハルノを前に行かせ駆け上り、三階へたどり着けば空き部屋。コンクリートの天井に床や壁と、配管を除けば何もなく灰色の空間。


「ハルノ!! どうだっ!? なんとかなりそうかっ!?」


 非常階段にて追ってきた二体の屍怪を斬り伏せ、先んじて窓際に陣取る姿を見つめて問う。


「……泣き女、見えたわ」


 標的を捉えたハルノは視線をロックし、コンパウンドボウを手に準備を始める。

 泣き女を倒すため、まさに千載一遇の機会。外せばどのような行動をするか読めず、最初の一射が全ての命運を握ることになるだろう。


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