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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第275話 函館17

「函館の街は至る所が燃えて、どこが安全に通れるかわからないっ!!」

「海斗君!! みんなをどこへ逃がさないとっ!!」


 白いターバンを巻いた男性は告げ、焦燥に駆られた表情で村井マサオは言う。避難者の安全な行き先を求めて、どこへ向かうか指針は彷徨っている。


「それなら函館山へ避難させればいい。展望台なら、……おそらく火の手は届かないだろう」


 仲村マリナは少し言葉を詰まらせながらも、避難先を提供できると示す。五稜郭組の面々は顔を見合わせ多少のザワツキは生まれるも、案に賛同し目指す場所が決まりかけるその時だった。


「フフフ。それはさすがに甘く、希望的な観測」


 冷笑を含んだ声が赤レンガ倉庫に響き渡り、全員が一斉に声の主へと振り向いた。


「オマエっ!! 黒木っ!! よくもみんなの前に顔を出せたなっ!」


 村井マサオは間髪を入れずに叫び、怒りを露わにしながら詰め寄ろうとする相手。

 白髪の髪と年相応の肌質ながら、良い感じに歳を重ねた顔立ち。深く暗めな紫色を基調に、白い縦縞の入るスーツ。異質な冷たいオーラを纏った感じで、周囲の温度を一度は落としそうな存在感。函館山展望台に着いてからどこへ行っていたのか、行方を掴むことできなかった黒木実だった。


「待て、マサオ。まずは意見を聞かせてもらおう」


 魚村海斗は肩を抑えて制止し、渋い顔をして視線を向ける。

 魚村海斗からして黒木さんは、ある種の因縁がある相手。それでも激情に駆られる村井マサオと比較し、自己制御しており冷静な対応だった。


「黒木さん。どこが甘く希望的な観測なのか、教えてもらえるか?」

「マリナ、地図をテーブルに」


 魚村海斗の問いかけに対して、テーブル中央へ向かう黒木さん。仲村マリナは大きな地図を用意し、みんなに見えるようテーブルに広げた。


「ここ、ここに、そしてここ。火の回り具合や今日の風速を加味して、この三カ所は特に危険エリア」


 黒木さんは迷うことなく指を差し、示された場所は建物の間隔が狭いエリア。現状においてどの場も、火の拡散が加速しやすい所と言える。


「火が燃え移ったら、瞬く間に炎は広がるからな」


 現在の函館の街を見ていれば、容易に未来につき想像がつく。

 もし火の手をどこかで食い止められなければ、街は愚か函館山が全て燃えても不思議はない。となれば安全の保証される場所など、どこにもなくなってしまうだろう。


「黒木さん。何か策はありますか?」

「フフフ。まあ、しかし。簡単な話ではない。思いっきりよく、とても大胆な手が必要」


 仲村マリナは真剣な眼差しで意見を求め、黒木さんは煙草に火を点け言葉を続ける。


「江戸時代ならば、普通に行われていたこと。飛び火を防ぐために、家そのものを破壊する」


 黒木さんの策を聞いて驚きに、全員が揃って息を呑んだ。

 たしかに江戸時代くらいまでなら、延焼を食い止めるため家の破壊は聞くところ。消火技術も向上した現代において、限りなく減ってもゼロではないか。


「でも今から壊し始めて、間に合いますかね? 江戸時代の家と違って、今の家は丈夫だろうし」


 火の勢いを抑える効果は高いと思うも、実効性や実現性に疑念を抱く。

 江戸時代までの家ならば、人力での取り壊しも可能だった。現代においては不可能と言えずとも、一軒を壊すに相当な時間が必要となるだろう。


「黒木さんの指示通り、重機を駐車場まで運んできました」


 疑念を口にして説明した間もなく、赤レンガ倉庫にきたのは緑のターバンをした男性。

 黒木さんからして話の展開は、全て折り込み済みだったのか。手のひら上を転がされているようで、実行に移すため準備に関して余念はなかった。



 ***



「では、黒木さんたちに家の破壊は任せよう。我々は次の問題についてだ」


 一つ議題に区切りがつき仲村マリナは言うも、場の空気は張り詰め緊張に満ちたままだ。

 全員が知る次の問題とは、屍怪やブッチャーについて。火事の問題と比類するほど、こちらも難儀な問題である。


「そんなことっ!! できるわけないだろっ!!」


 話を聞いて村井マサオは声を荒げ、苛立ちを隠さずに叫んだ。

 函館山展望台での事前会議と同じように、ブッチャーを倒す方法につき異論。それは現在いる函館山組のメンバーも、共感して頷く者が多かった。


「難しいことは百も承知だ。しかし必要ならば、やらねばならない」


 仲村マリナは毅然とした口調で言い切り、その瞳には断固たる覚悟が宿っている。


「大変だっ!! 炎から逃げるように、屍怪がこちらへ向かってきているっ!!」


 赤レンガ倉庫内に駆け込んできたのは、偵察に出ていた緑のターバンをする男性。


「マリナさん!! まずいですっ!! 屍怪が山麗駅の方向へ流れて、このままでは避難者とぶつかってしまいます!」


 緑のターバンをする男性は、息を切らせながら報告をする。

 屍怪が街中を進み向かっているのは、函館山ロープウェイ方面。五稜郭組の避難者たちが今は、揃って経由を決めた重要拠点だ。


「話はわかった。作戦の可否は後回しだ。まずは人々の避難を最優先としよう。迫りくる屍怪の対処に、オレたちも向かおう」


 事態は一刻を争うものとなり、魚村海斗は冷静に言い立ち上がる。

 ブッチャーの対応については例に漏れず、結論の出ない小田原評定のような状況。まずは優先すべき直近の事項ができたため、街へ向かうことに異論はなかった。


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