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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第274話 函館16

「止まれっ!! お前ら何者だっ!!」


 五稜郭公園へ続く橋を渡りきろうとした場所にて、バリケードを挟み白いターバンの女性は槍を向け睨みつけてくる。

 五稜郭公園の堀には水が溜まり、橋を渡らねば奥へ行けない。白いターバンの女性はさながら、門番のような感じである。


「大変なんだっ!! 魚村さんと話したいっ!! どこにいるか教えてくれっ!!」


 肩で息をしながらも猶予はなく、切迫した表情で窮状を訴えた。

 状況のあらましを説明すれば、バリケードは開かれ五稜郭公園に。公園内にいるとされるリーダーを、走りながら手当たり次第に探す。


「海斗君!! いくよーっ!!」

「よっし!! こいっ!!」


 子どもの声が聞こえては視線を奪われ、白球を受けて止めているのは魚村海斗。僅かに紅葉の色づいた木々が揺れる道にて、二人はキャッチボールを行っていた。


「おおっ!! 一ノ瀬君に朝日奈さんかっ!? 会議は十時のはずだから、遊びにでもきたのか?」


 状況を全く知らない魚村海斗は呑気で、穏やかな日常の一コマを切り取ったかの様子だ。


「魚村さん、私たちは急ぎの用があってきたの」

「函館山組とはいろいろあったが、会議には遅れず行くつもりだ。このグローブ、いい物だろ? 限定品の二刀流モデルで、オレの宝物なんだ」


 呼吸を整えながらハルノは話しかけるも、魚村海斗は会議についてと勘違いしているらしい。青いグローブを見せつけて、笑顔で得意気に説明をしている。


「それどころじゃない!! 街で燃料輸送車が爆発して、火の手が迫ってきているんだっ!!」


 焦りながらも事の重大さを告げると、ようやくキャッチボールを中断し一変。表情はとても穏やかなものから、とても険しい雰囲気に変わった。


「海斗さん!! 街の北側に黒い煙が上がっていますっ!!」


 大枠を説明したちょうどそのとき、白いターバンの男性が駆け寄ってくる。五稜郭タワーから街の様子を眺め、異変を察知し知らせにきたらしい。



 ***



「ハルノさん。あの、えーっと……これ」


 満席に近いバスの中でミサキは、躊躇いながらも手渡した。


「コンパクトボウね。ミサキ、預かってくれてありがとう」


 ハルノは穏やかに微笑んで受け取り、矢筒と一緒に装備をする。市街の北側が炎に包まれているとすれば、避難先として安全なのは南側のみ。南にある赤レンガ倉庫へと、全員で移動をすることに決まったのだ。


「赤レンガ倉庫の内観って、こんな感じなんだな」


 赤い煉瓦の壁には時の刻みがしっかりと残り、古びた材木の梁が天井に広がっている。倉庫内には個性的なショップやカフェが軒を連ね、アンティークの家具や小物が置かれた棚がそこここに並ぶ。

 薄暗い灯りが差し込むその風景は、古き良き時代と現代が同居する場所。外観からは想像もつかない、温かみと洒落た雰囲気に包まれていた。


「平時に観光で来たかったわね。終末世界なら落ち着いて、ショピングすら楽しめないもの」


 脅威ありどこもかしこも静かであれば、ハルノは賑わいあるときを想像していた。

 そんなこんなで赤レンガ倉庫を歩き、合同会議の場とされる倉庫。中央には木製の長机が置かれて、左側に揃って座るは函館山組の三人。しばらくして五稜郭組の主要メンバーが到着し、流れでそのまま合同会議が開始されることになった。


「本来は屍怪やブッチャーへの対策会議の予定だったが、急を要する事態が発生した。火災が発生しているとの話も、現在のところ詳細はまだ確認中だ」


 仲村マリナは発起人と中央にて、合同会議の進行役を務めている。

 右側に座る五稜郭組は、魚村海斗に村井マサオと他一人。ハルノと末席に加われば総勢九人となり、空気は重く緊迫した感じで始まった。


「火事の件については、一ノ瀬君と朝日奈さんに聞かされ知ったばかりだ。それでも仲間たちが状況把握へ向かい、時期に戻ってくるはずだ」


 魚村海斗は人々の避難と同時に、仲間を偵察に派遣していたらしい。仲村マリナも探りを入れていることから、両者とも考えていることは同じのようだ。


「大変だっ!! 火の勢いは凄くて、もう手がつけられないっ!! このままじゃあ函館全体が燃えてしまうっ!!」


 ほどなくして赤レンガ倉庫の扉は開かれ、駆け込んできたのは白いターバンの男性。

 燃料輸送車から始まった火事は、市街にまで広がっているという報告。赤レンガ倉庫にも火の手が迫ると予想され、場の緊張は一層に高まっていった。


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