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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第271話 函館13

「今のままなら、とても決まりそうにないな」

「そうね。時間だけが過ぎて、小田原評定みたいなものよ」


 結論の出ない話し合いに終わりは見えず、ハルノと一緒に会議室から退出。仲村マリナの許可を得て、暫しの休憩をもらうことにした。


「追い出すにしても、倒すにしても。ノーリスクなんてありえねぇよ」

「相手がブッチャーですもの。みんなの怖いという気持ちは、わからないでもないわ」


 函館山展望台の廊下を歩く中でも、ハルノと一緒に議題は頭から抜けない。

 全員の中に等しくあるのは、ブッチャーに対する不安と恐怖。話を決定させられないのは、心理的に逃げているからなのかもしれない。


「仮に今日の事前会議でまとまらなくても、明日の合同会議で話は進められるわよ。いつまでも決断を保留して、議論しているわけにいかないもの」


 放っておいても自然と風向きは変わり、決断を迫られるだろうとハルノは言う。

 五稜郭組と別のグループが加わることで、一つ大きなカンフル剤となるはず。それに脅威とされるブッチャーや泣き女など、屍怪となった者は待ってくれないのだ。


「そうだな。五稜郭組の意見も聞けば、良い道筋が見えてくるかもしれないし」


 外部から新しい風が入ること期待し、函館山展望台の廊下を二人で歩く。 

 ハルノは五稜郭へ流れて、函館山展望台を知らない。今は結論の出ない会議より、気分転換を兼ね展望台を案内することにした。



 ***



「函館まで一緒にきた人たちは無事?」

「ああ、三橋さんたちは医務室にいるはずだ。でも黒木さんについては無事って聞いているけど、イマイチどこにいるかはっきりしないんだよな」


 ハルノに仲間たちの動向を問われれば、知る限りの情報を伝える。

 函館山展望台へ着き何度か、三橋夫妻とは顔を合わせている。しかし黒木さんについては、どこにいるのか居場所を掴めていない。


「黒木さんがいないと少し不安ね」

「でも黒木さんのことだから、何かしらを考え動いているはずだ。しばらく様子を見ようぜ」


 ハルノは心配そうにして言うも、比較してそこまで不安はなかった。

 黒木さんと行動を一緒にしていたため、単独行動を好むことは知っている。それにとても頭が切れて、腕力も人並み以上に強い。顔見知りという仲村マリナも、安否につき特に心配していなかった。


「函館山組のみなさんには、言葉で言い表せないくらい感謝しています。この場所なら、奈緒も安心して過ごせるし。このままここに居られたらって思います」

「函館山組のみなさんには、本当に良くしていただいて。ここなら安全な上に、人材に物資や医療。安心して出産に備えられると思う」


 医務室に着いては夫の三橋勇気さんは言い、妻の三橋奈緒さんも気持ちを穏やかにしていた。

 医務室の中は温かい光に包まれ、白いベッドが整然と並ぶ。妻の奈緒さんはお腹が大きく横になり、夫の勇気さんは傍に座って様子を見守っていた。


「二人とも表情は明るく、元気そうだったわね」

「手厚く保護してくれるって言っていたしな。奈緒さんは妊婦だし、函館山展望台に居たほうが良いかもしれない」


 久しぶりに会ったハルノは様子を見て言い、宣言された言葉通りの対応に安堵する。

 函館山組の手厚い対応により、落ち着いた日々を過ごせている様子。長く続けられること期待し、とても大きな励ましとなったようだ。



 ***



「なんだ? あれ?」


 函館山展望台の外へ出た瞬間に、ふと頭上の空に何かが光って見えた。恒星というよりは人工物のようで、衛星のよう宙に浮かんでいる。


「繋がったにゃー!!」

「やっただのー!!」


 函館山展望台の屋上から、響いてくるのは歓喜の声。ハルノと一緒に足を向ければ、ねこちーとまこたんはバンザイと大喜びしている。


「どうしたんだよ? 二人とも?」

「インターネットに繋がったらしいんだの。ねこちーはこのために、必死に頑張っていたの」


 何をそんなに喜んでいるのかと思えば、まこたんは喜びの元を教えてくれる。

 機械系統に強いとされ、動画配信者を目指すねこちー。かなり苦労をしたと聞くところも、インターネット接続が叶ったようだ。


「これで動画の編集も、アップロードもできるにゃ!!」


 ねこちーは声を高らかに上げ、パソコンの前で興奮していた。

 終末の日からインターネットの復旧など、一度も聞いたことはない。もし通信が可能になったのならば、それは物凄く大きな功績だ。


「蓮夜さん。隣の人は誰だの?」

「ああ。俺の幼馴染で朝日奈ハルノって言うんだ」


 初対面となればまこたんは聞き、受けて代わりに紹介をする。


「はじめまして。朝日奈ハルノです。よろしくね」

「まこたんだのっ!! よろしくお願いしますだのっ!!」


 自己紹介をしてハルノは手を前へ出し、まこたんも小さな手で握手をしている。

 二人が挨拶を交わす中でも、パソコンの画面に夢中なねこちー。喜びの中で集中力が増したか、全く周りが見えていないようだ。


「で、こっちが動画配信者のねこちー。って言っても、今は聞こえていそうにないな」

「インターネットに繋がったなんて、終末の日から初めてじゃない? 夢中になるのも無理ない話よ」


 事の重大さ重々承知の状況なれば、ハルノは寛容な姿勢を見せていた。

 終末の日より前の世界ならば、一日に一度はインターネットに触れていただろう。ネット社会と呼ばれるほど身近で、依存を超え生活に欠かせなかったほど。今でこそ慣れてしまったものの、繋がれば便利なことこの上ない。


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