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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第270話 函館12

「屍怪がいたら建物に隠れて、見つからないように進もうぜ」


 街角を曲がっては時に穢れた姿を発見するも、気づかれないよう常に注意を払って。

 屍怪の影を見る度に、心臓が跳ねる感覚。それでも泣き女の叫びは聞こえず、追手から逃れることできた。


「完全に振り切ったな」

「これなら山麗駅へ向かっても問題はないだろう。ロープウェイを使用し函館山へ戻ろう」


 危機から逃れたこと確信へ変わり、仲村マリナは向かうべき道を示す。

 歩いていく必要ある登山道より、ロープウェイの方が近く楽な道。屍怪に追われることなければ、後発的事情の変化というものだ。


「でも、気を抜くのはまだ早いわ。とにかく駅まで行きましょう」


 ハルノは気を引き締めるよう言い、街を再び山麗駅へ目指し進む。

 山麗駅に到着してはロープウェイに、函館山へ向かい上昇する高度。高所となれば先ほど逃げ回った場所も、今や小さく嘘みたいな景色である。



 ***



 赤レンガ倉庫にて五稜郭組と合同作戦会議を前に、函館山組で事前会議が取り行われることになった。

 薄暗い会議室にて長テーブルを囲み、着席をする緑のターバンをする十名。ハルノと前列から一番と二番の席に座り、静かにただ開始のときを待っていた。


「明日の会議について、みんなの意見を確認しておこう」


 テーブル中央にて話を主導するのは、リーダー代行の仲村マリナ。

 仲村マリナをリーダー代行として、幾度も難局を乗り越えてきた函館山組。明日にも行われる五稜郭組との作戦会議は、グループとしても特に重要な局面だ。


「まず、五稜郭組との協力に関して。私は彼らの協力を受け入れるべきだと思っている」


 仲村マリナが意見を落とした瞬間に、会議室の空気が凍りつくような感覚があった。五稜郭組とは過去に確執や信頼関係の脆弱さあり、メンバーたちに不安を呼び起こしているのだろう。


「彼らが手を差し伸べてきた理由は明白だ。彼らも私たちと同じように、屍怪の脅威に苦しんでいる。今こそ敵対している場合ではない。協力し合わなければ、この函館が飲み込まれてしまう」


 仲村マリナの冷静で説得力ある言葉に、誰しも静かに耳を傾けていた。

 隣のハルノと視線を交わすも、揃って発言を控えることに。今はあくまで聞き手の役に回り、仲村マリナに話を任せようと思った。


「でも、五稜郭組が本当に信用できるかは別の問題だ」


 やや険しい声で言ったのは、緑のターバンをした一人の男性。


「食料盗難の件を皮切りに、何度も五稜郭組とは衝突している。そんな奴らを簡単には、信用することはできないと思う」


 緑のターバンをする者は腕を組み、不安気な表情を浮かべ続けた。

 元は一つのグループであったと聞くも、少しずつできた溝は次第に深く。敵対意識も強くなっていけば、簡単に協力とはいかないようだ。


「その点は十分に承知している。しかし協力を受け入れることで、屍怪への対策も広がるだろう。明日の会議でどう協力していくか具体的に話し合い、対等以上の関係に持ち込めるよう交渉をするつもりだ」


 仲村マリナは冷静かつ自信あり気に答え、メンバーに少しずつ安心感を与え始める。

 函館山組のリーダー代行となり、実績から得てきた信頼。仲村マリナの発言にはやはり、とても大きな影響力があった。


「ではとりあえず、五稜郭組とは協力の方向で進めようと思う。次は函館へ再び戻ってきた、テラォード・ブッチャーについてだ」


 仲村マリナが議題を切り替えると、会議室はにわかに騒つく。

 テラォード・ブッチャー。元は函館にいたということで、やはり誰しも認知しているようだ。


「私たちには二つの選択肢がある。ブッチャーを倒すか、再び市外に追い出すかだ」


 仲村マリナは静かに言い、みんなの顔を見回す。ブッチャーを相手に戦うという決断は、どれほど危険かを全員が理解していた。


「私の考えとしては、今度こそ倒すべきだと思っている」

「倒すって、どうやって?」


 仲村マリナが自らの意見を述べる中で、ハルノはその方法につき尋ねた。

 策を考えていたというのは、事前の話あって知るところ。それでもブッチャーを相手にして、生半可な案では弾かれてしまうだろう。


「そうだな。説明しよう。その作戦とは――」


 仲村マリナは長い時間を使い、考えたという策の説明を始めた。

 それは大胆でありながら、函館だからこそできること。加えて多くの協力者を必要とし、一人では決してできぬ策であった。


「それ、本当に上手くいくのか?」


 策を聞いていたメンバーの一人は、具体性につき半信半疑となっている。

 しかし疑いたくなるのも、仕方がなく思える策。全員が簡単に賛同するはずなく、意見はまとまらず暗礁に乗り上げた。


「俺は面白いと思うけどな。ブッチャーを野放しにしておけば、いつか全員が危険に晒される。倒すとしたならば、今回はそのチャンスだ」


 なかなか高難易度な作戦であるも、それ以上に期待感もあった。

 ロケットランチャーを受けても、倒せなかったブッチャー。確実に倒すのならば、仲村マリナの策は理に叶う。


「簡単に言うなっ!! こちとら命が賭かっているんだぞっ!!」

「なら、どうするっ!? やはり市外へ追い出すのかっ!?」 


 他のメンバーも次々に意見をして、会議室は騒々しいものに変わった。

 ブッチャーを倒すという話から、再び市外へ導くとの話に。しかしどちらも万人が納得する決定打はなく、類似の内容をグルグルと堂々巡りになった。


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