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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第267話 函館9

「……まずい。次の標的はきっと、ここにいる俺たちだ」


 生きている者ここにしかいなければ、次の狙い行動はある程度の予想がつく。

 しかし先行した四人が倒され、奇しくも残った人数は同じ。武器のレベルも特別上とは言い難く、容易に太刀打ちできるとは思えない。


「急げっ!! 逃げるぞっ!!」


 仲村マリナは声を張り上げて言い、向かうは駐車場からショピングモール。

 開けた場所では認識を外せず、追っ手を撒くこと不可能。ブッチャーと対峙より逃げるならば、ショピングモールへ向かうは悪くない判断だ。


「なんでこんな所に、ブッチャーがいるのよっ!?」


 ショッピングモールを目指し走る中で、ハルノは苛立ちを隠せずいた。

 カートやカゴの残る一階フロアの先に、見つけたのは上へ向かえる階段。背後の自動ドアにはブッチャーが迫り、二階へ逃れることに迷いはなかった。


「……二人とも。ブッチャーを知っているのか?」


 二階にて魚村海斗は呼吸を整えつつ、存在を認識していること驚いていた。


「俺たちは新千歳空港で、ブッチャーと一戦を交えているんです。自衛隊のロケットランチャーで倒したと思ったんだけど、倒せてはいなくて。登別でも遭遇……もしかして、ブッチャーは俺たちを追ってきたのか」


 経緯を説明する中でも推察し、一つの可能性が頭の中に浮上する。

 屍怪には生存者を狙う習性があり、ブッチャーも当然に同じであろう。向かう先々で何度も遭遇しては、追ってきたと考えるのは当然の流れだ。


「って言うか、ブッチャーを知っているんですか?」


 新千歳空港にて初遭遇をして、距離を遠くした函館の地。ブッチャーを知っていること逆に、驚きを覚える部分があった。


「これを見てみろ」


 言って仲村マリナが指差すのは、壁に貼られた一枚のポスター。

 【北欧の巨人。テラォード・ブッチャー襲来。函館総合センター】と記載がされ、六人の屈強な男たちが映っている。


「ブッチャーは函館へ巡業に来ていたプロレスラーだ。我々も何度か遭遇し、その度に大きな損害を出している」


 仲村マリナが告げる衝撃の事実に、あまりの驚きから息を呑んだ。

 函館にいたとされるブッチャーと、初遭遇をしたのは千歳市。行ったり来たりを繰り返し、実に五百キロは移動をしているだろう。


「ブッチャーを倒そうともしたが、どうしても倒すことはできなかった。だから仕方なく車で誘導し、やむなく市外へ追放したのが暫く前の話だ」


 まだ一つのグループであったとき幾度も戦い、苦労をして追い出したと魚村海斗は説明する。

 ブッチャーを函館に呼び戻したのは、他ならぬ自分たちなのかもしれない。意図したことではない話でも、責任の一端を感じずにはいられなかった。



 ***



「こっちへ向かってきているわ」


 二階の吹き抜け部分から、一階を見てハルノは言う。

 姿を見られぬよう意識していたものの、ブッチャーは一直線に階段の方向へ。二階へ向かう意志が明確なれば、留まりやり過ごすことは不可能だ。


「追いつかれる前に、先へ進むぞっ!!」


 仲村マリナが先んじて促し、ショピングモールを奥へと向かう。


「アガァァア……」


 しかし行く手を阻むよう廊下に出現したのは、腐臭を漂わせた屍怪たち。

 ブッチャーに背後を追われようとも、ここは安全地帯ではない外。どこに屍怪が存在しても、不思議のない現実だ。


「時間がないっ!! 倒して進もうっ!!」


 魚村海斗は鼓舞するように言い、銀色の槍を構えて対峙する。仲村マリナが持つのも槍のスピアで、ハルノが持つのはサバイバルナイフだ。


「ハルノ。弓は……コンパウンドボウはどうしたんだよ?」


 今にして気づくこと遅い話も、本来なら持っていたはずの武器がない。

 札幌の武器展示会にて、入手をしたコンパウンドボウ。ハルノからして苦楽をともに、終末世界を乗り越えてきた相棒だ。


「少し調子が悪くてメンテナンスをしていたの。あとで取りに行こうと思って。今は五稜郭のミサキに預かってもらっているわ」


 コンパウンドボウない理由を、ハルノは簡潔に説明をして前を見据えた。

 しかし主武器を失くして、間合いの近いサバイバルナイフ。丸腰よりは格段に良いも、屍怪との戦闘に不安は強い。


「ハルノはギリギリまで下がっていろっ!! ここは俺と、俺たちに任せてくれっ!!」


 今は戦うこと控えるように促し、ここは三人での突破を図る。

 廊下に展開をして迫る屍怪は、肩を揺らして手を伸ばす五体。全員が武器を所持しているから、互角以上に渡り合えるはずだ。


「このクソっ!!」

「はぁああっ!!」


 最初に動いた魚村海斗は先頭の一体を、仲村マリナも次点を相手に奮戦する。

 屍怪の相手をするのは、初めてではない。二人とも臆することなく立ち向かい、戦力として申し分はなかった。


「一刀理心流。円舞」


 黒夜刀を抜いては奥へ斬り込み、踊り舞うかの如く刃を振るう。速攻の一斬にて一体の頭を両断し、手を伸ばす二体目を屈んで回避し足を切断。


「アガァァア!!」


 三体目の屍怪が先に主張をしては、立ち上がり優先度を替えて斬り払い。

 刃は素早く正確に首元を捕らえ、宙に浮き落ちていく屍怪の頭。終わりはまだと黒夜刀を頭上へ振り下ろし、空中にて屍怪の呆けた面を真っ二つに両断した。


「……凄いな。……君」


 戦いを見ていた魚村海斗は、口を半開きに感心をしていた。

 魚村海斗と仲村マリナも屍怪を倒し、先へ進む道は開かれた。ブッチャーから逃げきるため、時間を無駄にしている暇はない。


「アガァ!! アガァ!!」


 足を切断された屍怪は地を這いつくばり、それでも追おうと手を動かしている。


「ブッチャーから追いつかれるより前に、早く先へ進みましょう!!」


 脅威であっても危険度の落ちた相手で、これ以上に構う時間は惜しい。

 屍怪はもちろん脅威であるも、それ以上に厄介なのはブッチャー。倒すこと想像できないほどの強敵なれば、今は何より前へ逃げること優先しなければならない。


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