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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第259話 函館1

「……なんだよ。これ……?」


 四車線を跨ぐよう陸橋中央に吊るされていたのは、髑髏が際立つ白骨化した人の亡骸だった。

 バイクと車から全員が降り、上を見て揃って言葉を失う。インパクトある過激な光景に、誰しも異様さに立ち尽くすのみとなっていた。


「ミサキ。これ、前からあるの?」

「あの、えーっと。たしか函館を出るときには、なかったと思います」


 亡骸へ目を向けて問うハルノに、ミサキは記憶を呼び戻して答える。

 ミサキが覚えていないということは、二人が去ってからの出来事か。首に縄が括られていることから、きっと自ら死を選んだのだろう。函館に着いて間もないというのに、出迎えてくれたのは不気味な白骨死体。最先の悪いことこの上なければ、先の見通しは決して甘くないと認識させられる。


「……でも、進むしかないわ。函館山はもうすぐそこよ」


 一つ目的地はすでに近いと、ハルノは先を見据え静かに言った。

 ジェネシス社ある東京を目指し、ハルノと二人で始めた旅。函館はまだ中継点と道のりは長く、恐怖に臆している暇など微塵もない。



 ***



 かつては賑わいを見せただろう函館の街も、今では面影を僅かに残すだけとなっている。人々の気配は消え失せて、残るは冷たい沈黙と静寂のみ。

 自然と街に風が入り吹き抜けて、半分ほど剥がれたポスターが店前で揺らぐ。空に伸びるビルの廃墟では、窓ガラスが割れているところも。終末の日以前の活気に溢れていた世界は、今や夢幻であったとさえ思えさせる。


「屍怪が出たぞっ!! みんな気をつけろっ!!」


 周囲を警戒しながら函館の街を慎重に、進む中で前触れもなく奴らは現れた。


「ウガァアア!!」


 函館山を遠く眼前に捉えたところ、Y字路の分岐点に現れたのは屍怪。生きていた当時の面影を残し、それでも人間とはまるで異なる存在。

 全身の至る所で腐敗は進んで肌は黒く、裂けた肉が露出するも固まっている血。それでも動き続ける理由は微かに残った本能か、命あるものを求め彷徨い歩く脅威の徘徊者だ。


「一刀理心流。光一閃」


 左手を鞘に添えて右手で刀の柄を握り、瞳を鋭く全神経を集中させ標的を絞る。目前に迫ったところで勝負をかける時と、一気に踏み込み閃光の如く刃を振るう。

 すでに幾度となく対峙してきた屍怪の恐ろしさは、今までの経験から肌身に染みて理解をしている。それでもハルノはコンパウンドボウにて矢を放ち、黒木さんは表情一つ変えず黙々と木刀にて迎撃へ動く。静狩峠にて同行者となった夫の三橋勇気さんも、バットを振るって応戦し状況の打開は見えてきていた。


「ギャアアア――――ッ!!」


 突如として一帯へ響き渡る高く鋭い奇声は、凄絶な狂気と恐怖を発露するようであった。


「……なっ。なんだよ。あの叫びは……?」


 激しい戦いが繰り広げられる中で、全員が圧倒され自然と注目が集まる。声を発した主は長い黒髪で顔が隠れ、白服とホラー映画に登場しそうな女性の屍怪。誰もが気づく事態の変化は、ほどなくして起こった。

 どこからか聞こえてくるは、足元を揺らす地響きのような音。Y字路左右の奥に姿を見せたのは、屍怪と化した多くの者たち。今までの経験にない共鳴するよう動きで、こちらへ向かい走り集まってきた。


「まるでデパートのタイムセールへ向かう奥様方のようだ」

「お気楽なこと言っている場合じゃないよっ!! あの数はとても、ボクたちでは相手できないっ!!」


 全く危機感を覚えさせない奈緒さんの例えに、ツッコミを入れつつ夫の勇気さんは逃げ腰になる。屍怪は目を血走らせ背を押したり足を踏んだり、Y字路の左右から迫る数は合計五十体を超えるか。

 現在の戦えるメンバーは四人で、すでに十体近くは倒しているだろう。互いを補い協力し合って、一人一殺よりも健闘をしている。それでも圧倒的な数で迫られては、抗えない高波に飲まれるようなものだ。


「おいっ!! オマエもっ!! 早くこっちへ来いっ!!」


 近くのビルから突如として現れたのは、緑のターバンで鼻から下を隠した者。上下グレーのスーツを着用して、声の高さから間違いなく女性だろう。


「なっ!? どういうことだよっ!?」


 気づけば他にも緑のターバンで顔を隠す者がいて、仲間たちが次々にビル内へ誘導をされている。


「蓮夜!!」


 叫ぶハルノの手を引いているのは、こちらは白いターバンで顔を隠す者。ビル内へ誘導をする緑ターバン組と異なり、白ターバン組はY字路を手前へ引き返している。


「奴らもいたのかっ!! しかし泣き女に鳴かれては、すまない。今は避難をすることが優先だっ!!」


 緑のターバン女性に手を引かれて、他の仲間たちに続きビル内へ。


「ハルノ!! ミサキ!!」


 名前を叫び呼ぶも向かう先は異なり、二人とは遠く離れ離れになってしまった。


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