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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第257話 夢想の話

「にしても、大きいカニだな。こんなのに襲われたら、ひとたまりもねぇよ」


 道路沿いにあるオブジェ前へ出向いては、捕獲に際して戦うことを想像してみる。

 甲羅は大きく手足は短く、シルエットから毛ガニであろう。体が三メートルあればハサミも巨大で、人間一人をそのまま挟めそうなもの。もし思い切り閉じられたとすれば、大怪我で済まないかもしれない。


「もし食べるとしたら、何人分になるのかしら?」


 戻ってきたハルノは現実的に、何人前かと身入りを想像していた。

 もし捕獲を成功させたならば、与え千金の成果となろう。胴体はもちろん足も太く、食べごたえは疑う余地ない。通常と比較し重さも規格外だろうから、より多くの腹を満たせるはすだ。


「二十人分くらいか? 茹でたり鍋で食べたり。これだけ大きいと、調理のしがいもありそうだな」

「もっとたくさん食べられそうな気もするけど。……そうね。書いての通り、かにめしって選択肢もあるわよ」


 自然と食べ方につき話が流れては、ハルノはレストランへ目配りして言う。

 レストラン入口の上部に、【かにめし】と書かれる看板。長万部は海にほど近いことから、カニが名産とされる場所でもあった。


「って言っても、食べられるわけでもないしな」

「そうね。やめましょう。これ以上は想像しても、虚しいだけだわ」


 しかしいくら名産と言えども、手にできねばとハルノは話を切り上げる。

 全てが順調に回っていた以前までならいざ知らず、今や屍怪が徘徊し電子機器も制限ある終末世界。仮に動く船があったとしても、漁獲に行ける漁師も不在。昔のように流通していなければ、カニを食すこと全て夢想の話である。



 ***



「このまま無理にでも進めば、今日中に函館へ着けるって話だけど。さすがにやり過ぎだよな」


 車とバイクの使用を開始して、移動速度は飛躍的に上昇した。今のペースを維持できれば、夜にでも到着は可能との話。


「そうね。函館は大きな街な上に、状況もよくわからないわ。黒木さんたちがいたのも、だいぶ前の話だし。今は屍怪がいても、全く不思議はないわよ」


 夜の到着は避けたいという点で、ハルノとの意見は一致していた。

 平和な世界ならいざ知らず、屍怪の徘徊する終末世界。大きな街であればあるほど、数を増やすは周知の事実。太陽の沈んだ街に明かりなければ、状況把握は困難で危険との判断である。


「だから今日は、ここで休憩ってことだな」


 レストランの左右に建物は十ほどあるも、近くて三十メートルは離れていよう。合間では緑の草々が風にユラユラと揺れ、前方には長く終わりの見えぬ国道。後方一キロほど遠くに見えるは、青く広がる海という立地。

 偶然に訪れたことも、ある種の巡り合わせ。話し合いの末に可能ならば、レストランにて休もうということに決まった。


「人のいる気配は微塵もないし。屍怪が集まりそうな所には思えないけど。一応はみんな、警戒をして行こうぜ」


 どんな場所や建物であっても、優先されるは安全確認。今の終末世界において、軽々に心を休める場はない。


「どれも美味そうだな」


 先遣隊と先頭で入店しては、自動ドアを越えた先に三段棚。展示されるは食品サンプルで、下段からカレーライスに天丼。中段にはトンカツ定食に海老フライ定食あり、上段には名物『かにめし』が飾られている。


「外観は少し心配だったけど。中は意外に、綺麗か」


 白い外壁には黒炭が目立ち、木の浮き沈み痛みもあったレストラン。正直なところ営業していたのか、完全な廃墟なのではないか。疑わしいところあったものの、店内は意外に整えられている。

 入店してすぐ右隣にはレジがあり、右奥へ流れれば陳列棚の並ぶお土産コーナー。左はレストランと十人掛けの長テーブルが四台に、左奥には襖あって小上がり畳みの和室部屋となる。


「誰もいそうにないけど。無音すぎるから、不気味で居心地が悪いわね」


 静かな店内は時が止まっているようで、ハルノは良い印象を持たなかった。

 風がなければ空気が滞留し、どことなく重苦しい雰囲気。物の擦れる音もなければ虫の音もなく、外の方が様々な音あり居心地は良いかもしれない。


「言っても畳の上なら寛げるし、体を休めるなら建物内のほうが良いだろ」


 しかし外との環境を比較しては、やはり室内のほうが休むに最適だろう。

 雨風を凌げるのはもちろん、壁があれば一種の盾となる。野宿中に屍怪の襲撃を考えれば、とても気の休まる状況とはならない。


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