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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第255話 峠越え

「黒木さん。あの人たちと、面識あったんですよね? どこで会ったんですか?」


 所は変わって函館を目指す車内にて、助手席から顔を向け興味本位に問うは経緯。

 柏木なる人物の反応を見れば、初対面でないことは明らか。終末の日より前か後ろか、面識あるのは間違いないだろう。


「会った場所は、同じく洞爺湖。柏木たちはゴムボートをホテルの近くに、停泊させて陸地の探索を行っている。蓮夜たちと別れてから、会いに向かった算段」


 黒木さんは一人になってから、当てもあり訪ねていたとの話。

 以前にも会っていれば人柄を知るところで、サービスエリアにて物資を発見して備え。ガソリンなど入手できない場合に、交換できる可能性を残したと言う。


「って言うか黒木さんたちは、洞爺湖に来ていたんですね。ミサキも道に詳しいから、少し変だなとは思っていたんですよ」


 サービスエリアの位置を指摘し、周辺の景色や環境まで。地図ではわからぬ部分あるから、経験から理解していたと納得がいく。


「あの、えーっと。わたしたちは函館から、ある人を探しに千歳まで来ていたんです」


 後部座席のミサキが語るは、今に至り知る衝撃の事実。

 函館を目指すは知るところも、基本的に知らぬ二人の過去。ラジオを聞き生存者いる場所に、向かっていると勝手に思い込んでいた。


「函館から千歳まで、人探しに? かなり遠いのに、よくやったわね」


 約二百八十キロと遠く離れていれば、ハルノは行動力に驚き関心をしていた。

 黒木さんとミサキの二人は、新千歳空港にもいたとの話。時期こそ僅かに違えば、出会い方も違っていただろう。


「で、その人とは出会えたんですか?」


 函館から千歳へ出向くほどとは、とても重要な人物なのだろう。二人が帰還中なのは知るところも、結末につき興味を持たぬはずはない。


「えーっと。それがその、会うことはできなくて。どこにいるのか、生きているのか。何もわからなかったんです」


 助手席であるから顔を横へ向けて問うも、答えてくれたのは後部座席のミサキ。

 屍怪いる終末世界となってから、電子機器もほとんど使えぬ日常。生死の有無すらわからなければ、生きていても所在地不明。離れてしまった者に会うことは、情報なくしてこの上なく困難な話なのだ。



 ***



「何はともあれ、目指すべきは函館だな」


 気持ちを持ち直し目指すは、北海道西の大都市。

 海の見える沿岸線を進み、これから向かうは静狩峠。道なりに山道を登りつめて、そこから下りをいく進路。それでも車を使用できるから、それほど時間を要しないだろう。


「あの、えーっと。すみません。わたしのために、時間を費やしてしまって」


 風邪を引いてしまったミサキは、少なからず自責の念を抱いていた。


「病気だったから、ミサキの責任じゃない。気にする必要はないぜ」


 四人という人数で進んでいるから、仲間を気遣うこと当然の話。何も気に病んだり、思い詰める事ではない。


「海が見えなくなって、山に近づいてきましたね」


 民家は消えて道路脇には草木が増え、次第に山沿いとなり開かれた山道。

 右手には山肌の露出した崖が出現し、角度は五十度以上あろう急斜面。顔を反対へ向ければ、左手には底の見えぬ深い谷。人が自然を切り開き、作られた道を進む。


「んっ!? 誰かいるぞっ!!」


 全体は青く中央に白で【P】と書かれた看板が出現し、ガードレールは左に膨れ道幅の広くなる休憩場前。


「おーいっ!! 止まってくれっ!!」


 道路の中央にて手を振っているのは、襟足を短く黒い短髪の男性。白色ベースで黒の水玉シャツに、青色が強めのジーンズを着用。身長も平均的か体格に際立つ点なく、中肉中背と特徴の少ない人物だ。


「まずは初めに、止まってくれてありがとう。見ての通り妻は妊婦で、体調が悪くなり進めずにいたんです」


 道を塞がれてはやむなく停車し、窓を開ければ男性は声を震わせ説明をする。トラック五台が止められそうな、空間が担保された休憩場。ガードレール傍に残されているは、赤い小型のバイクが一台のみ。

 近くには薄緑色のワンピースを着用し、髪を後ろで一つ結びにした女性。髪を高い位置で纏めたハルノと、比較しては低く肩より下へ伸びる長さ。吊り目で顔立ち綺麗であるも、目を引くのはやはりお腹。ふっくら膨れて言われる通り、やはり妊婦で間違いないようだ。


「移動手段をバイクで、よく峠越えをしようと思ったわね」


 ハルノは妊婦を連れての移動に、無謀さを指摘していた。

 車を使用してならまだ良いも、大型でもなく小型バイク。お腹の膨れた妊婦を後ろに、負担が大きいのは明白である。


「夫を責めないでください。移動手段はバイクしかなくて。夫は止めていたのに、決断を促したのはわたしなんです」


 妊婦であり妻である女性は、淑やかに庇う姿勢を見せていた。

 終末の日から人里を離れて、二人で過ごしていたという夫婦。出産については母子ともに命の危険性あり、医療体制ある場所を探していたとのことだ。


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