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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第251話 音なき包囲

「……仕方ないわね。ミサキのことはちゃんと見ておくから、蓮夜も気をつけなさいよ」

「カンッ。カンッ。」


 ハルノがほとんど了承したところで、窓に何かの当る音がした。


「……ハルノ」

「……」


 外を見れば何者かの動く気配があり、指を二本立てたハンドシグナルに頷くハルノ。

 レースのカーテンあるため、顔などはもちろん見えない。それでも屍怪か生者の姿あり、警戒から身を隠すことにした。


「……屍怪かしら?」

「……どうだろうな。とりあえず、確かめねぇと」


 廊下まで避難したハルノは存在を問い、姿勢を低く見つからぬよう確認へ動く。

 黒木さんが戻ってきたなら、正面から合図をするはず。わざわざ庭側に回って、リビングの窓を叩く行為。それはとても不合理で、行動としては理解できない。


「もし屍怪だったら、黒木さんが戻ってきたら最悪だ」


 何も知らず鉢合わせになれば、騒動となりどうなるか。

 もし一体のみならず、複数体がいるとしたら。いくら黒木さんであっても、対応できる範囲を超えているかもしれない。


「……うっ」


 壁に沿うような形で窓際に着き、レースのカーテン隙間から見る外。

 歩いていたのは肌色を灰色に、体を薄く肋骨を浮き上がらせた屍怪。見える範囲では二体であるも、死角にまだ多くの数がいそうな雰囲気。


「どう? 外の様子は?」


 窓際から廊下と元の位置へ戻っては、ハルノも状況を気にしている。


「屍怪で間違いない。問題は、どのくらい数がいるかだ」


 ペンションの二階へ上がり、各部屋を行き来して見る外。

 表の駐車場に庭側や建物側面と、各所で徘徊するは屍怪となった者たち。見える範囲で二十体以上は確認でき、死角もあるから実態はもっと上か。音もなく忍び寄ってきたようで、ペンションはいつの間にか包囲されたようだ。


「外へは出られそうにないわね。これだけ徘徊しているとなれば、黒木さんはすぐ異変に気づくはずよ」


 ペンションを見て一目瞭然の状況なれば、車を降りないだろうとハルノの見解。

 屍怪に気づかれたとしても、乗車していれば容易に手出しされない。多くが集まってくる頃には、早々に発車させ逃げ去れるだろう。


「でも黒木さんは間違いなく、近くまで戻ってくるはずだ。きっと心配もするだろうし。なんとか無事を知らせる方法。……もしものために備えて、一応は二階へ移動するか」


 窓を開けて手を振れば、安否を伝えられる可能性。

 また黒木さんが戻ってきたことを、いち早く知ることもできるだろう。それに万が一にも屍怪の侵入を許したとき、二階であれば籠城できる可能性も残す。


「屍怪は散歩をするように、ゆっくり外を歩いているだけだ。俺たちに気づいている様子はないし、静かに待っていれば勝手にいなくなるだろ」


 経験を元に動きを推察して、妥当と思える提案をした。

 風邪を引き寝込むミサキを、容易に動かせるはずもない。できることは垂直避難と、ハルノにも異論はなかった。



 ***



「ミサキ。二階へ移動するから、少しだけ立てる?」


 ハルノは容態を確認しつつ、肩に手を回してサポートする。

 風邪を引いているミサキは熱に浮かされ、体をフラつかせ足取りがおぼつかない。余計な不安を抱かせる必要はないと、屍怪のことは伏せての移動だった。


「ゴホッ!! ゴホッ!!」


 手で口と鼻を覆いつつも、咳に苦しんでいるミサキ。反動に体が揺らいでしまうのも、仕方のない容態だろう。


「パリンッ!!」


 ミサキの足がガラステーブルに触れて、コップが転がり落ちて砕け散った。

 意図したことではないから、完全な不可抗力。風邪を引いているのだから、むしろ配慮が足りなかったのかもしれない。


「バンッ!! バンッ!!」


 カーテン越しと姿は見えずとも、室内に響き始める窓を叩く音。

 コップの割れた音に反応したのか。もしかしたら屍怪に、気づかれたのかもしれない。


「ハルノ!! ミサキを二階にっ!!」

「ええっ!! わかったわっ!!」


 まずは何より移動を優先と訴え、ハルノは肩を貸して二階へ向かう。

 リビングへ回って見れば、窓に張りつく屍怪たち。レースのカーテンを通しても、ハッキリわかる悪しき姿。室内へ向かうよう横に広がって、十体以上が並んで日差しを遮っている。


「……マジかよ。……こんなにすぐ、集まってくるのかよ」


 コップを落としてから僅か、二分ほどでの出来事。

 一体の反応が全ての屍怪に、連動して起きた行動か。揃って侵入を試みようとする事態に、なるとは露ほどにも思わなかった。


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