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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(下)

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第248話 打診

 日の暮れ始めた食堂にて、テーブルを囲む四人。夕食として選んだのは、車から持ってきた非常食。

 今や王道となった缶詰は、サバの水煮とサバの味噌煮。小型のガスバーナーコンロに火を点け、鍋でお湯を沸かせばインスタント麺にご飯。四人の腹を満たすために、十分な量を揃えることができた。


「さすがに夜になると、少し冷えるわね」


 秋も深まり暑い昼と違えば、ハルノは寒さに敏感だった。

 窓の隙間から入ってくる隙間風は、生温かった夏と比較し冷たい。きちんと厚着など対策をしなければ、体調を崩しても不思議ないだろう。


「明かりはランタンで、確保できているけど。暖炉があるわけでもないし。建物内で焚き火をするわけにもいかないしな」


 厚着やタオルで肌を覆うなど、打てる対策は限られていた。

 焚き火を行おうと思えば可能であるも、建物内なれば火事になる可能性。他にも一酸化炭素中毒の危険性と、短絡的に起こせる行動ではなかった。


「冬も近くなってくると、寒さに対する対策。本格的に向き合う必要性がありそうね」


 もはや少し先の話となれば、ハルノは目を背けれないと言う。

 北海道の冬は雪に覆われ、氷点下を下回る世界。寒さ対策を講じなければ、生きていくこと叶わないだろう。


「そうだな。でも俺たちは、一刻も早く東京へ向かわねぇと」


 その場に留まるつもりならば、現地にて先を見据えた行動。

 しかし今は東京へ向かい、長く続く旅の途中。フットワークを軽く進むため、最低限の装備にて行かねばならない。



 ***



「黒木さん。俺に車の運転を、教えてくれませんか?」

「どうした? いきなり?」


 女性たちが寝静まったところで、タイミングと判断し黒木さんに打診。

 暗くなった夜の食堂には、テーブル上に一つのランタン。向き合うように座って、起きているのは男二人。


「別にいきなりってわけではないです。今までも運転できなくて、不便を感じる場面はあったし。教習所もやってなければ、動かせる車も少ない。それでも運転の機会がゼロじゃあなければ、技術を身につけておきたかったんです」


 以前から考えていたことでも、実行するに現実的でなかったこと。

 終末世界となって動かせる車は少なく、指導者たる人と出会うことも早々ない。黒木さんを頼める人間と判断し、思い切ってのお願いであった。


「函館までの道のりだって、まだそこそこ長いですし。俺が運転できるようになれば、黒木さんと交代で休憩もできる。……と言うのは建前で、黒木さんには負担となるだけかもしれない。だけどそれでも、お願いできませんか?」


 教えを乞う時間まで揃っていれば、これ以上ない絶好の機会。

 首を横に振られれば、さすがに諦める他ない。それでも可能であるなら、打診だけはしておきたかった。


「フフフッ。建前であるのならば、本音を言っては無意味」


 本質的なところを突いて、黒木さんは微かに笑っていた。


「いいだろう。明日の朝から、時間の取れる限り。しかし教官ではないから、教え方は保障できない」

「本当ですかっ!! ありがとうございますっ!! 良かったぜっ!! 断られたらどうしようって、不安で内心ビクビクしていたんですっ!!」


 黒木さんが承諾してくれたことにより、得ることできた運転講習の機会。

 十八歳になった大半の人は、車の運転に憧れるところ。終末の日となり多くを諦めるも、一つ希望を取り戻した形だ。



 ***



「まずはギアをPパーキングからDドライブ。アクセルは踏まずに、ブレーキを踏んだ状態で」


 失敗の許されぬ講習であるから、指導する黒木さんも慎重であった。

 教習車と異なり助手席にブレーキなければ、運転席のブレーキ以外に止める方法はない。事故を起こせばいろいろ悲惨となるため、指導者に受講者も意識を高く真剣だった。


「……よし。動いたぜ」


 ゆっくりブレーキから足を離せば、徐々に加速していく車。

 サービスエリアの駐車場にて、白線に添いながら加速。アクセルを踏まずいれば、十キロ程度と実に低速だ。


「ハンドルを左に切ってUターン。何も慌てる必要はない。それでも初心者であるか、ブレーキの意識だけは高く」


 黒木さんの感情に起伏はなく、淡々と変わらぬ冷静な指示。

 アクセルは軽くMAX二十キロ程度で、駐車場を右往左往しての走行。明朝から行われた初回講習は、一時間ほどで無事に終了した。


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