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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(中)

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第241話 地獄の谷24

「ヴヴゥゥ」


 屍怪は落下防止柵前に到着し、ここから本当の正念場で瀬戸際。

 引き返さず前へ進み続ければ、谷底まで一直線に真っ逆さま。目論見に沿う形になるかは、全て屍怪の動向に左右される。


「ここまで来たらもう、アクシデントいらない。ただ真っ直ぐに、余計なことは起きないでくれ」


 鉄柵の外と階段側から、祈り願い動向を注視。もはやフライパンを叩かずとも、前へ歩みを続ける屍怪たち。

 封鎖した鉄柵に肩が触れても、後退はないとひたすらに前進。ついには破壊した落下防止柵を越え、転落まで一メートルと言った場所まで到達した。


「ヴゥウウ」


 先頭の屍怪が偶然にも一つ石を蹴り、地獄谷へと転がっていく小石。坂道にある他の小石も巻き添えに、落ちていっては十メートル下の谷底まで。

 次は本体の出番であると、一歩を見守るときだった。


「ヴゥヴゥ」


 落下防止柵を越えた位置にて、首を傾げ立ち止まった屍怪。

 鼻は削げ落ちて上唇なく、額は広く禿げ上がった一体。衣服は破れて至る所で肌が露出し、今や服と呼べぬほど損壊の激しい。


 景色を楽しんでいるって、そんな時じゃないだろ。

 ここはあと一歩。今までと同じく、いつものように。ただ何も考えずに、地獄谷へ落下してくれ。


 最前線なれば注意を引けず、声も出さずに事態を見守る。先頭にて立ち止まった屍怪は首を伸ばし始め、まるで最高のロケーションを堪能している感じ。

 対面にある崖は二十メートル以上の高さで、自然の産物と圧巻な光景。湯気が湧き上がり、泡立ち流れる地獄谷。白く変色した岩山に、所々で露出する枯れた土。高台なれば開放感的な場所で、観光を楽しむに絶好のスポットだった。


「アガッアアッ!!」


 大声を上げて前へ出てくるは、後続にて列を成していた屍怪。力任せで押し退け始めては、他を気にせずと不遜な態度。立ち止まる先頭の背中を押せば、誰もが予測できる結果へ繋がった。

 枯れた土と砂利の上を転がって、大岩に当たり頭の砕けた屍怪。一体を皮切りに落下の連鎖は始まり、雪崩のように途切れることなかった。


「本当に……鬼が徘徊しているみたいだな」


 誰もいなくなった落下防止柵の前へ行き、騒然とする落下現場の様子を眺める。大岩へ衝突し頭の潰れた者や、坂を転がり首が折れている者。打ち所が悪かったのか、動かぬ者も五体六体とチラホラ。

 しかし大半は何事もなかったかのように、谷底にて徘徊を続ける屍たち。物悲しさある殺風景な谷を彷徨う姿は、まさに地獄の鬼と言って相違なかった。



 ***



「蓮夜!! 問題発生デス!!」


 遊歩道の山道側を回り現れたのは、高台へ避難したと言っていたウィル。


「後続の屍怪が分裂しマシタ!! 気づいた黒木が一人で、今は誘導をしていマス!!」


 慌てた様子でウィルが告げるのは、微塵も望まぬアクシデント。

 地獄谷の谷底にて徘徊するは、一見して百五十ほど。ハルノから聞いていた数は、三百と間違いなく足りていない。


「どういうことだよっ!? 説明してくれっ!! ウィル!!」


 遊歩道から山道へと駆け上がりながら、起きた出来事について詳細を問いただす。

 背の高い木々や青々とした草に囲まれ、登り坂や下り坂と勾配もある山道。地獄谷を奥まで探索するのに、車を使わず歩いて巡れる散策ルート。坂道ではロープの手すりが設置され、地面には木の板を埋め込み階段も整備されている。


「屍怪の半数が分かれて、奥の大沼湯へ流れていマス!! このままではいけないと、黒木は車で先導を始めマシタ!!」


 五十段はあろう階段を前にして、ウィルは一呼吸と足を止めて言った。

 地獄谷より奥へと進んだ所に、湖のよう泥をも湧き出る大沼湯。先日は動く車両を探して、エマと一緒に第二駐車場まで。観光名所として最奥に位置し、車をなくして出向くに少し遠い場だ。


「本当に、……そっちへ流れるのかよ」


 大沼湯へ向かうためには、地獄谷入口より奥の細い道路。左右へ曲がりくねった坂道を、三百メートルは進まねばならない。


 散策ルートを使っているから、今は屍怪と並走している感じか。

 地獄谷が目立つから、逸れないと思ったのに。結局は思惑を、外してくるのかよ。


 大沼湯へ続く道の封鎖は、簡易柵と耐久性に不安はあった。

 しかし動かせる車には、整備しても限りある。故に屍怪が大挙して破壊へ動けば、柵が壊れてしまうのも無理はない。


「ハルノっ!? どんな感じだっ!?」


 オレンジ色に近いポニーテールの髪と背中を発見し、状況を把握するために問いかける。

 散策ルートを途中にして、見晴らしの良い高台。一帯を広く緑の山々に囲まれ、大沼湯の全容も一望できる展望台だ。


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