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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(中)

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第238話 地獄の谷21

「女将さん。体調は大丈夫なんですか?」

「ええ。まだそこまで、悪くはないの」


 昨日は悪寒に全身を震わせ、顔色も青ざめていた女将さん。

 屍怪に噛まれ半日以上が経過し、体調は現状維持と言ったところ。寒気などはある様子も、民宿にあった車椅子。赤い半纏を羽織って、膝上に茶色いブランケット。厚着をしての対処療法で、意識混濁など症状の悪化に陥っていない。


「あれ? 黒木さんは?」


 発起人たる者の姿なくして、待合室を見渡して探す人物。


「あの、えーっと。黒木さんは、どこかへ行ってしまって。待っているなら、それもよし。先に始めるなら、それも構わないと」


 理由は不明確なところあるも、ミサキは伝言を預かっていた。


「黒木は相変わらず、とても自由人デスネ」


 またも居場所が掴めぬ状況も、ウィルは恒例と納得をしていた。

 黒木さんは物事を逐一に、説明するタイプではない。バッテリー探しも当初は、一人で行っていたとのこと。協調性という面でやや欠ける部分あり、ワンマンなところがあるようだ。


「土砂を排除する作業は、今日って言っていたよな」

「そうね。ショベルカー自体は、もう動かせるって話よ」


 確認のため昨日の出来事を話すも、相違なくしてハルノは応える。

 テーブル上には無造作に、置かれたショベルカーの鍵。黒木さんがいないとしても、土砂排除は開始できる状況だ。


「早く始めてくれ。時間が惜しい」


 拓郎さんは前のめりに、積極的な姿勢を見せる。

 屍怪に噛まれ感染した女将さんには、あまり時間は残されていないだろう。最期だけでも貢献する姿を見せたいと、気持ちを察すること容易だった。


「黒木がいても、やることは変わりませんヨネ? ならボクは、始めてもいいと思いマス」

「エマも賛成。土砂を排除するなら、早く終わらせたいもん」


 ウィルは作業の開始を容認し、エマも肯定的な意見をする。


「みんなが賛成するなら。とりあえずは、土砂崩れの場所まで移動をするか」


 一人の決断なれば悩むところも、全員の総意であれば尊重。

 拓郎さんはショベルカーに乗り込み、後ろへ続くよう揃って移動開始。女将さんに関して放置はできず、ハルノが車椅子を押しての同行となった。



 ***



「黒木さんはいないか」


 民家と思わしき潰れた屋根の残骸に、横倒しになり土に埋もれた軽自動車。倒木なども巻き込み、道を塞ぐようある土砂崩れ現場。

 黒木さんの姿を探して見るも、どこにも発見はできなかった。


「始めるぞ」


 ショベルカーの運転席から拓郎さんは、もはや待つ気はないようだ。


「いつ来るかわからない中で、待っているわけにもいかないし。仕方ないな。始めるか」


 集まった人たちの方向を見ると、やる事なく立ち尽くす姿。ただ時間を浪費するわけにいかず、ショベルカーを主力として土砂の排除作業へと移る。

 アームが上へ向かっては、下りて土を掬うショベルカー。一杯になるほど多量を持ち上げて運び、人力ならどれほど時間を必要としたかわからない。


「さすがに器用だな。土砂を掬うだけじゃなく、アームで倒木も退かすなんて」


 自由自在な操作を見ては、まさに資格を有する者。

 アームの外側で倒木を押し退け、少しずつ開かれていく道。拓郎さんの技量も相まって、ショベルカーの活躍は想像以上だった。


「手伝うつもりでいたけど。見ているだけになりそうね」


 作業を見つめるハルノは、効率の良さに驚いている。土砂崩れの現場へ向かうに際し、砂運び一輪車やスコップを持参。

 しかし前線でショベルカーが活躍すれば、拓郎さんを除き全員が傍観者。人力とは異なる文明の力は、やはりとても偉大であった。


「……ん? ちょっと待ってくれっ!!」


 ショベルカーにより土砂が排除される中で、開かれていく道に違和感。

 土砂が下から突き上げるように、山なりに盛り上がった雰囲気。一瞬のことで気のせいかと思いつつ、作業を中断させて確認へ足を向ける。 


「……」


 違和感あった場所へ視線を向ければ、湿り気あって重そうな土。小石や草木も混ざっており、手作業での排除はとても大変そうだ。


「……」


 全て気のせいかと自身を疑うも、不安を払拭できず逸らせぬ視線。

 注意深く周囲に目を配る中で、再び山なりに盛り上がる土砂。違和感につき疑いの余地なく、やはり事は錯覚などでなかった。


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