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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第一章 終わりの始まり

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第23話 お人好し

「さぁて。これから先は。彩加ちゃんの高校へ向かうわけね」


 青く広がる空に向け、背伸びをするハルノ。新たな目的地へ向うに、準備は整ったという感じである。


「本当に良いのかよ? ここから先は、俺のわがままだ。一刻も早く岩見沢に帰るなら、このまま市外へ抜けたほうが早い」


 遠回りとなる選択。最短距離で帰るならば、渋滞する車の進行方向。市外へ抜けることが、ベストであった。


「水臭いこと言うなよ。昨日も言ったじゃん! オレたちも行くって!」


 肩に手を回し、発言する啓太。


「そうですよ! こういうとき、こそ! 協力して頑張りましょう!」


 美月に至っては彩加を知らず、会ったこともない関係。


 全く。お人好しばかりかよ。


 毒づく内心に反して、自然と頬が緩む。

 意志の固い、同行の主張。これ以上に言葉を返すことは、野暮というものであろう。


「わかった。行こう!」


 正直な話。一人で行くより、何倍も心強かった。


「話がまとまったところで、一ついいかな?」


 タイミングを見計らっていたようで、声を上げる夕山。


「これから先。屍怪との戦闘が避けられないとき。ちゃんと殺せるのかな? 蓮夜はともかく。昨日の反応を見ている限り、為すべき対処ができるのかなと思ってね」


 夕山は屍怪と化した者を、殺せるか。危惧していたようだ。

 向かう先は、未だ札幌市内。屍怪との遭遇率は高く、場合によっては戦闘も想定される。


「大丈夫。殺れるわ」


 二つ返事で答えたのは、揺るがぬ姿勢のハルノ。


「殺らなきゃ、殺られる。なら……殺るしかないじゃん」


 対する啓太は、やむを得ないという姿勢。言葉を自身に言い聞かせ、覚悟を固めようとしている様子。


「私は……」


 美月は口を開くも、言葉に詰まった。視線を左右に逸らしては、困惑した表情。屍怪を殺すという覚悟は、固まっていないようだ。


 屍怪となった人間を殺す。普通に考えれば、ありえない話だ。


 ここにいる全員。二週間前までは、普通の高校生。

 それを突如として、屍怪と対峙。命を守るために、殺さなければならない状況。


 っつーか。俺や夕山のように、殺すことを早々に容認。割り切っているほうが、レアなんじゃないのか? 


「いきなりは難しいかもしれないけど。なんとかなるさ!」


 非日常を当たり前のよう、受け入れていることに疑問。答えを待つ夕山と、美月の間に割って入った。


「甘いなぁ。蓮夜は。足を引っ張られても知らないよ?」


 ため息まじりに発言する夕山は、歯に衣着せぬ物言いだった。


「私もできる限り……頑張ってみます」


 震える声を、絞り出す美月。

 今は先の見えない混沌の中にある。そのため互いに協力し合うことは、不可欠。


 今はみんなの協力が必要なときだ。仮に美月が屍怪を殺せなかったとしても、見捨てるつもりは毛頭ない。

 それに俺は美月を守ると、約束をしたんだから。



 *** 



 不気味なくらいに、静まり返った札幌の街。今はいつ、何が起きても不思議はない。そのため細心の注意を払い、警戒心を持って歩いていく。


 まずはコンビニ前を、右折だよな。


 昨日は多くの屍怪に阻まれ、行く手を塞がれた道。進行方向にあるコンビニは、目印とする場所だった。


「……んだよ。これ。マジで酷えじゃん」


 右を向いて啓太は、震える声を発した。

 コンビニを目前として、一本手前の道。右方向では、大型トラックが横転。他の車をペシャンコに潰し、通りを塞いでいた。


「コンビニ前は昨日。屍怪に阻まれたから、一本前もありかと思ったけど。これじゃあ無理そうだな」


 先へ進むに、一つに拘る必要はない。危険を感じれば逃げ、新たな道を模索する。死にさえしなければ、終わりではないからだ。


「とりあえず。コンビニ前まで行ってみようぜ」


 当初の予定通りに、コンビニ前まで移動を決定。一本先にあるコンビニを目指し、静かな札幌の街を歩いていく。


「なあ。あれ。ヤバいんじゃね?」


 途中にあるホテルへ視線を飛ばし、啓太は静かに呟いた。

 札幌駅前と優れた立地。建つのは背の高い、高層ホテル。しかし今は停電の影響を受け、明かりない状況である。


「どうしたのよ?」

「ほら。喫茶店の所。明らかにヤバそうじゃん」


 質問するハルノに対し、指を差して応える啓太。


「たしかに。普通では……なさそうですね」


 視線を向け、納得する美月。喫茶店の窓ガラスには、血の手形が何ヵ所も残されている。

 それは間違いなく、異常事態の証。屍怪の存在を意識しては、肌を刺すような緊張感。気を抜けない状況に、等しく息を飲んだ。


「でも俺たちの目的地は、ホテルじゃないんだ。気にせず先へ進もうぜ」


 現在の目的地は、彩加が通う同心北高校。二週間を過ぎて見る札幌という街では、異常事態はホテルに限ったことではない。

 そのため全てを確認する労力もなければ、余裕もありはしないのだ。


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