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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(中)

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第230話 地獄の谷13

「ええっいっ!!」


 エマは気合いの入った掛け声を大きく、足腰を回転させ高い位置へと蹴りを繰り出す。


「ヴガァァ!!」


 向けられたのは両手を前に迫る、穢れた屍怪の頭部。


 ポワポワしている様子に見えても、終末世界を生きて……只者じゃあなかったな。


 車を探して道を歩く中で、屍の怪物と接敵。汚れた白シャツに黒パンツを着用するは、肌の色を黒紫に変色させた屍怪が二体。

 すでに一体を黒夜刀にて倒し、エマの方へ視線を向けて観察。高く上げられた足は頭部へ向かい鋭く、捻り回転が加えられて威力は相当だろう。


「アガッ!!」


 魂の抜けた弱々しい断末魔を最期に、首から上を引き抜かれる屍怪。司令塔を失った体は地に突っ伏し、コロコロと転がる頭部は路肩にて停止。


「ヴガァァ!! ヴガァァ!!」


 体を失っても口を繰り返し開閉させ、屍怪は呻き声を発し続ける。

 上下ともに歯は抜け落ちて、健在と呼べるは半分ほど。しかし頭だけでも動き続けるとは、なんという生命力であろうか。


「今となっては動けないから、危険性は差ほど高くないだろうけど。エマ。何か格闘技でもやっていたのかよ?」


 冷静かつ大胆な攻撃に質問を投げつつ、屍怪の頭部へ刀を突き刺して決着。

 遭遇した二体の屍怪を、揃って撃退し排除。見惚れるほどの完成度に華麗さあり、経験値の高さは見て推し量れるものだ。


「空手をやって、エマは黒帯なんだ」


 躊躇いなくエマが答えて、度胸と腕前にも納得。

 空手の黒帯ともなれば、実力に疑いはない。フワフワポワポワと天然に見え、可愛らしさも共存するエマ。人は見かけによらぬとは、今回もまた適した言葉だ。



 ***



「にしてもやっぱり、動く車は……簡単には見つからないな」


 地獄谷を奥の方へと進み、【大沼湯】と標識ある駐車場。

 高台から一帯を見ては湖のような広さで、泥をも湧き出る黒き湯の大沼湯。看板には【周囲1Km深さ22m。表面50℃最深部130℃。中洲に入ると埋まります】と記載。今もボコボコと泡立ち、湯煙が空へ向かい伸びている。


「電磁パルスの影響。手当たり次第に試してもダメか。でも何か、見落としている気がするんだよな」


 横三列に白線が引かれて、各列に十台ほど駐車可能。合計して三十台ほどは、車の止められる駐車場。

 空きが多くも三割ほど埋まり、残るは軽自動車や乗用車。長い時間を放置されているためか、車体には枯葉が乗って茶色く土汚れ。ガラスの汚れを手で拭いて見れば、車内に人なく埃が積もっている。


「結局はどれも動かないから、見落としもないよね」


 窓を破壊し車内に鍵があっても、エンジン起動せずエマは言う。

 もはや飽きたか諦めたか、柵に身を乗り出して大沼湯を見学中。電磁パルスにより車が動かぬこと、想定済みと承知のところ。それでも常に何か引っ掛かりあり、打開策は頭の中にこそある気がした。


「空から車が降って来ないかなぁ。もしくはポコっと、地下から湧き出てくるとか」


 上空を見上げ大沼湯を見るエマは、とても夢想的な発言をしていた。

 魔法でもあれば無理と言わずも、あまりにも非現実な話。無から有を生み出すこと、それは不可能と言って過言でない。


「空に、地下か。……地下。そうだっ!! 思い出したぜっ!!」


 特定のキーワードを引き金に、掘り起こされた記憶の一端。


「地下駐車場ならEMPの影響を、受けていない車があるかもしれないっ!!」


 札幌にあるホテルの地下駐車場にて、車のエンジンは起動したとの話。操縦こそ満足に利かなかったと聞くも、現状においては最も期待できそうな所。


「地下駐車場があるとしたら、宿泊施設でもホテルだよね。エマは行ったことないから、わからないけど」


 期待値ある場所こそ提示できるものの、現場を知らずしてエマも不明な点は多いと言う。

 登別と地獄谷周辺ならば、十以上のホテルはあろう。地下駐車場も間違いなくあり、望みは地下にしかなくも思える。


「太陽が真上に近ければ、もう十二時くらいか。ハルノたちの状況も知りたいし。とりあえずは、一度。民宿まで戻ろうぜ」


 希望を持てる話があっても、時間的に合流が懸命。

 それにハルノたちが車を発見していれば、地下駐車場へも行かずに済む。不透明な部分に身を委ねるより、まずは確認を行うほうが優先だ。


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