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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第一章 終わりの始まり

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第22話 世界の武器展示会

 道路を横断し、展示会あるビル前。

 一階はコンビニ。入口の窓ガラスは割れ、床には線状に伸びる血痕。


「ここも……酷い有様だな」


 店内を覗けば、倒れた商品棚。散らばる、数々の商品。

 各所に争いの痕跡が残され、通常とは程遠い状況だった。


「会場は二階だよな。ここは無視して、二階へ行こう」


 不要なリスクは避け、階段を上り二階へ。


「看板が立っている場所。あそこが会場みたいだな」


 【世界の武器展示会】と書かれた、大きく目立つ看板。隣には、両開きの重厚な扉がある。


「結構な広さだね。欲しい武器だって違うだろうし。各々で回ったほうが良いかな」


 別行動をしようと、提案したのは夕山。

 天井高く広い会場には、何列も並ぶショーケース。他にも個別の展示場所が設営されては、様々な武器が特集されている。


「屍怪が隠れているかもしれないじゃん。好き勝手に動いたら、危ないんじゃね?」


 屍怪の存在を危惧して啓太は、別行動に疑問を投げかけた。


「うーん。そうかな。屍怪の姿も見えないし。危なそうには思えないけど」


 一見した限り会場に屍怪の姿はなく、首を傾げ夕山は釈然としない様子である。


「ああ! そうだ! 良い案を思いついたよ!」


 晴れやかな顔を見せ、軽やかに発言する夕山。


「なんだよ? 夕山?」


 疑問に思い、即座に問う。そこで夕山が起こした行動は、突拍子ないものだった。


「あのぉおおお!! 誰かいませんかぁあああ!?」


 会場全体に響く、夕山の大声。屍怪がいれば、呼び寄せる案件。多数が迫れば、一転して窮地に。

 まさに常軌を逸した行動。緊張感と警戒心は、格段に跳ね上がる。


「おい!! 夕山!!」


 理解不能となれば、当然に行動を咎める。


「あはは。ごめん。ごめん。屍怪がいるか試したんだ。でも、いないみたいだし。まぁ何かあったら、大声で知らせる。それでどうかな?」


 笑顔で応える夕山に、反省の色は薄かった。


「まあいいわ。過ぎたことをどうこう言っても、仕方がないし。早く使えそうな武器を探しましょう」


 毅然とした態度で応えるハルノは、武器を求め会場内へ先行。夕山に美月と二人も続き、探索のため歩いていった。


「はぁ。オレにゃあ……付いていけねぇわ」


 深いため息を吐き、啓太は嘆いていた。

 事前通告もなく、常軌を逸した行動。きっと啓太の反応が、ごくごく自然なものであろう。



 *** 



 ショーケースの中身は、どれもこれも無くなっていた。ガラスが破壊され、何者かが持ち去ったようだ。

 個別に設営された展示場所も、同様。刀剣や槍に、戦斧。全てで武器と呼べる物は一つも無く、無駄足な感は否めない状況だった。


「どうだ? ハルノ。使えそうな物はあるか?」

「悪くないわね」


 弓の展示場所にたどり着くと、ハルノは真剣な顔で見比べていた。

 近接武器は、見た限り全滅。しかし遠距離武器である弓は、例外。木製のシンプルな弓から、重厚感ある機械的な弓まで。様々な物が残されていた。


「弓は扱いが難しそうだからな」


 刀剣や槍に、戦斧。近接武器ならば、振り回すだけでも攻撃できる。しかし遠距離武器である弓は、そう簡単ではない。

 狙って、放つ。求められるは、確実に射抜く命中精度。それには正しい構えに、距離感。近接武器とは異なり、多くの要素が必要となるのだ。


「素人には難しいかもしれないわね。人気がないのは悲しいけど。外せば命取りになるもの」


 ハルノは子どもの頃から、アーチェリーを行っている。大会では表彰台に上る成績で、実力は折り紙つき。

 そんなハルノからすれば、弓の選択は当然。勝手を知らぬ身で、口出しできることはないだろう。


「弓のことはわからねぇし。俺は他を見回ってくるよ」


 邪魔をするも忍びないので、早々に離脱を宣言。再び武器を探しに、会場を歩くことにする。


「マジで厳しい状況だったな」


 約三十分間の探索を終え、展示会場の出入口前。予想通りに。いや、予想以上に。武器と呼べる物は、無くなっていた。

 そんな中での成果は、サバイバルナイフが二本。割れたショーケースのガラス片を被り、ポツンと残されていた物である。


「ハルノはやっぱり弓か。結構しっかりとした物を選んだな」

「屍怪を相手にするんだもの。それなりに威力があって、精度が高いのを選んだわ」


 熟慮の末にハルノが選んだのは、機械的な弓のコンパウンドボウ。鹿や猪を仕留められるほど威力は高く、飛距離は二百メートルほどだと言う。


「言っても最大飛距離よ。有効射程は少し落ちるわ」


 補足を加えるハルノは矢筒を背負い、胸当てまで装備している。


「そうなのか。まあ何はともあれ、ハルノの準備は整ったな」


 そして次に戻ってきたのは、U字形の金属棒を持つ美月だった。


「私が見つけられたのは、この刺股(さすまた)だけでした」


 美月が持ち帰った刺股は、伸縮自在の可動式。主に警察官や警備員が使う、犯人を捕まえるための道具である。


「本当に物が無かったからな。仕方がないよ」


 刺股の先端は丸く、殺傷能力は皆無に等しい。屍怪を相手するには、心許ない道具であろう。


「マジかよっ! みんなちゃんと見つけてんじゃん!」


 三番目に戻ってきた啓太は、何も持たず手ぶらだった。どうにも武器を見つけられず、諦め戻ってきたらしい。


「……時間。もう少し……良いよな?」


 自身のみ手ぶらとなっては、啓太の動揺は明らかだった。


「夕山も戻ってないし。少しくらいなら、良いんじゃないか」


 夕山が戻ってないことから、時間的余裕はあると判断。


「オレだけ見つけられずとか。カッコつかないじゃん」


 焦り動き出した啓太は、再び会場へ戻っていった。

 時は流れ、約十分後。先に戻ってきたのは、金属バットを持つ啓太だった。


「金属バットなんて、どこで見つけたんだよ? 会場にスポーツ用品とか。置いて無かったはずだろ?」


 世界の武器展示会と、名打つ展示会。そこには日本の刀を含め、西洋の剣や槍。戦斧に弓といった諸外国の武器も、展示されていた形跡がある。

 しかし、スポーツ用品は別。武器に当たらない物が展示されるに、場違いなのは当然の話である。


「会場の武器は……ほとんど全滅だったじゃん。だから一か八かの賭けで、隣の部屋を見に行ったんだよ。そしたらこの金属バットが! 部屋の隅に置かれているじゃん!」


 意気揚々と入手経緯を、語り始める啓太。


「思ったね! 神はオレを! 見捨ててないじゃん!」


 興奮冷めやまぬ啓太は、弾む声で喜びを露にしていた。


「っつーか、これ。日頃の行いの良さ。その賜物じゃね?」


 有頂天となっては、話を波及させ始める啓太。


「いやぁ。遅くなってごめんね」


 その背後から声を発したのは、最後となる夕山だった。


「夕山。それって?」


 手に握られているのは、刀身がくの字に湾曲した刀。


「ククリ刀だよ」


 夕山が持ち帰った成果は、刀に分類されるククリ刀だった。


「よく見つけられたな!? 武器はほとんど無かったろっ!?」


 会場を探索して共通の見解は、武器はほとんど残されていない。特に近接武器は、壊滅的状況だった。


「ショーケースの下に、隠れるよう落ちていたんだ」


 最後に一番の成果を見せる夕山。隣の啓太は口をポカンと開け、茫然自失に立ち尽くしていた。

 金属バット対ククリ刀。成果としては間違いなく、夕山のほうが勝る。有頂天だった啓太は比較により、道化となって奈落の底へ。垂直に落とされる感覚だったことだろう。


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