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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(中)

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第226話 地獄の谷9

「そんな嘘を信じるほど、お人好しになれないわ」


 大判タオルで胸から下を隠しつつ、黒いオーラを纏ったハルノ。背後には噴火しそうな火山が幻像され、【ゴゴゴゴ】と効果音すら形となり見える。

 命の危険すら感じさせ、これではいつかの二の舞に。『ムッツリスケベ』に次ぐ、新たな称号を付与されてしまう。


「ねぇ。ハルノ。蓮夜の言っていることは、嘘じゃないよ」


 窮地に救いの手を差し伸べてくれたのは、本来なら追求する立場で不思議ないエマ。

 しかし言ったことは嘘でないと、それはどういう意味なのか。次の補足説明があるまで、到底理解は及ばなかった。


「ここの温泉は、混浴温泉デス。蓮夜とハルノ。お付き合いしていますヨネ? ならば特に、問題ないと思いマシタ」


 湯船に浸かったウィルは頭にタオルを乗せ、平泳ぎをしながら爆弾発言をして登場。

 ウィルとエマの認識では、混浴はカップルが入るもの。さらにハルノと交際していると、二重の勘違いが招いた現状。二人は根本的なところから、壮大な大間違いをしていたのだ。



 ***



「とてもスミマセン。日本の文化を間違ってマシタ」

「エマも。なんか変わっているとは、思っていたんだ」


 ウィルは少し困った顔をして頭を掻き、エマは淡々と気にしている様子あまりない。二人はオーストラリア人であるから、異国の文化に疎いこと仕方ない話だった。


「ウィル。さっきの入浴スタイルも、特にスタンダードじゃないからな」


 話しを途中に問題が発生したため、間違いを合わせて指摘。

 エマも大判タオルを持ってきて、やむなき事情とそのまま入浴中。二人からの説明あっては、ハルノも誤解であると理解できたはずだ。


「二人に悪意がなかったから、今回は特別に許してあげるわ」


 同じ文化を知る者同士なら無理でも、異文化の二人ではハルノも寛大であった。


「こことは別に、男女別の温泉もあるらしいぜ」

「ならそっちを、紹介して欲しかったわね」


 混浴温泉のみならず、ハルノと意見は一致。

 ウィルとエマは騒動も気にせず、離れた所にて入浴し談笑中。今回は結果として、二人に振り回された形だ。


「酷い勘違いだったな」


 振り返れば大きな騒動となったことも、終わってみれば全て過ぎた話。

 肩まで浸かれば全身を、芯まで温めていく温泉。熱すぎるというわけではなく、長風呂できそうな感じである。


「そうね。でも温泉自体は、決して悪くないわ」


 タオルを巻いたハルノは隣にて、脚を温泉に浸けて半身浴。

 触れる白緑色のお湯は滑らかで、触れると非常に気持ちよい。滅多にない機会となれば、リラックスしてご満悦な様子だ。


「でもこうやって、温泉に入られる日がくるとはな」

「嫌なことや、大変なことも多いけど。偶にでも良いことがあれば、気持ち的に救われるわね」


 露天風呂に浸かりながら、ハルノと振り返る旅の道中。

 終末世界なれば時々に、訪れる厳しい瞬間。苦労が報われぬことも、当然に多い話だった。


「それでもいろいろな人たちに出逢い、ときには協力してここまで来たんだ。縁や巡り合わせには、恵まれて感謝しかないぜ」


 日は陰り星々が見え始めた空の下にて、来た道を振り返ってしみじみ思う。

 人が単独で行えることなど、常に小さく限界がある。時々の場で出逢った人たちと、協力して乗り越えてきた道。一人ではできなかったことも、間違いなく多分にあっただろう。


「……蓮夜。よくそんな恥ずかしい台詞を、真剣な顔で言えるわね」

「何か変なことを言ったか? 特に間違ったことは、言ってないと思うけど」


 ハルノから見て引っ掛かりあった様子も、全て嘘なく語っては真の心内。


「特に変ではないわよ。……そうね。偶には恥ずかしい台詞も、悪くないかもしれないわね」


 ハルノも上空の星を見つめて、気持ちは同じと共感の意を示していた。


「きっとその正直さこそ、一つ蓮夜の魅力なのかも」

「んっ? 何か言ったか?」


 ハルノは隣でボソッと何か言った様子も、声が小さくよく聞き取れなかった。


「なんでもないわ!! あまりジロジロ見ていると、その目を潰すわよ」


 突如としてハルノは声を上げ、返ってきたのは背筋の凍る言葉。普通に聞き返しただけなのに、非をなくしてあまりに理不尽に思えた。


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