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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(中)

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第221話 地獄の谷4

「蓮夜。それでも二人が私たちのために、看病してくれた事実は変わらないわよ」


 今回の恩人は一人だけではないと、ハルノは事実を例に指摘をする。

 発見救助してくれた者は異なっても、看病する行為もまた大きな助け。ウィルとエマに世話されたことは、何の疑いもなく恩人に違いない。


「そうだな。ウィル。エマ。二人とも、本当にありがとう」


 指摘から一つ大きな間違いに気づき、心からの感謝を示すため頭を下げる。


「えへへ。エマ。褒められちゃった」

「困ったときは、お互いサマ!! 日本のことわざに、そうありマシタ!!」


 体を左右へ揺らしながらエマは笑顔を見せ、ウィルは明るく気さくな対応を見せていた。


「蓮夜。体の調子はまだ、本調子じゃないわよね? 急いで出発するより、少し休んだほうが良いと思うわ」


 ハルノは体の状態を心配して、暫しの休憩を提案する。

 起床してから頭を含め体の隅々に痛みあり、廊下を歩くにも足取りがおぼつかなかった。今の状態で先へ進むことは、無謀と言って過言でないだろう。体調を万全に戻すこと優先とし、休むのは筋の通った提案だ。


「今の状態じゃあ、……さすがに厳しいか。それでも一日あれば、十分に回復すると思うぜ」


 東京へ向かうためには、決して止められぬ足。観光をしに来たわけでないから、あまり長くも休んでいられない。


「状態を見て考えましょう。無理をしたって、意味はないもの」


 急がず期日を決めず様子見と、ハルノは慎重な姿勢を見せていた。

 現在の民宿に危険はないと聞くも、外へ出ればまた屍怪のいる世界。体調を万全に回復させねば、戦うことさえままならない。


「蓮夜とハルノ。どこかへ行く気デスカ?」


 事情を知らぬウィルは会話を聞き、流れで興味を持ったのだろう。


「俺たちは東京へ向かって、旅を続けているんだ」


 これから向かう目的地を告げ、疑問に対して答える。

 東京にあるジェネシス社へ向かうこと。岩見沢を出発したときから、揺るがぬ決意を持って進んでいる。


「うーん。でも、出発は無理だと思うよ」


 左手の人差し指を頬へ付けて、首を斜めに傾けながらエマは言う。

 出発は無理というのは、一体どういう案件か。さらっと言われた発言であるも、意味が全く理解できない。


「ボクらも、親戚の住むニセコ。今も向かって、旅をしていマシタ。登別はその途中で、足止めになっていマス」


 ウィルたちの目指す目的地と、進めぬことは理解できた。

 それでも足止めとなるに、その根本的な原因。全容については触れられず、不透明さは増すばかり。


「それって、一体どういうことなんだよ?」


 最も聞きたいところは、足止めとなる原因。原因をわからずして、次の手もありはしない。


「一週間くらい前に、大きな地震があったよね。そのときに、土砂崩れが起きたの」


 エマが告げる事象は、新千歳空港にて体験。建物全体が左右に大きく揺れ、混乱に頭を伏せる人たち。

 当時は売店やお土産店にて、残った商品が多く散乱。他にも食器が割れ落ちて、転んで怪我をする人。空港自体は耐震性が高く無事も、人的被害など多少の損害はあった。


「登別の地獄谷。ここはとても窪んだ土地で、通られる二つの道。たくさんの土砂が流れて、完全に塞がれていマス」


 ウィルによればどこへも道はなく、進める場所は完全にないと言う。


「……マジかよ。でも状況を見てみないと、とても判断できない。今日は一日を休みとしても、明日は現場を見に行こうぜ」


 土砂崩れにより登別の地獄谷周辺から、出られぬと聞かされた衝撃的な話。

 土砂崩れがあったとして、本当に進めないのか。仮にダメだとしても、他に道はないのか。自分の足で歩いて回り、判断したいところ。希望を捨てるには何もかも、まだ全て早いと考えていた。



 ***



「蓮夜。一つ質問してもいいデスカ?」


 ウィルは旅館を案内してくれると言い、食事場を出て廊下を歩く中での問い。


「なんだよ? 改まって?」


 食事場では気兼ねなく会話をして、打ち解け関係を良くした仲。大抵のことは許容できるから、質問をするに遠慮は不用だ。


「もしかして蓮夜は、ジャパンのサムライっ!! その、生き残りデスヨネっ!?」


 ウィルはキラキラと目を輝かせ、迫力を持って顔を近づけてくる。

 なぜそう思ったか、サムライとの思い込み。今でこそ和風な甚平を着用し、刀を持って格好だけなら相応か。それでもサムライが存在したのは、明治や江戸と百年以上は前の話だ。


「ボクはジャパンの歴史!! 日本のアニメで見マシタっ!! 手裏剣。忍者。ちょんまげ。日本刀。刀を持つ蓮夜は、サムライですヨネっ!?」


 憧れの存在に出会えたのかと、ウィルは常に興奮気味。

 ウィルは母国で学習した日本史と、アニメ世界の創造をごちゃ混ぜ解釈した模様。海外から日本を見て、忍者とサムライ。二つの有名どころは、常に人気どころでもあった。


「俺は刀を持っているけど。特にサムライってわけじゃないぜ。サムライがいたのはせいぜい、明治時代までのはずだし。俺が刀を持っているのは、屍怪から身を守るため。戦える力として、自衛のためだ」


 夢を壊すようで申し訳ないところも、全て正直にありのままの真実。

 忍者にサムライもすでに絶滅し、現代では記録こそあれ存在しないだろう。子孫は残る可能性あっても、本物と呼べる者はいないはずだ。


「そうデスカ。とても残念デス」


 ウィルは期待外れと悲しそうに、しょんぼり肩を落としていた。

 時代の流れとともに、消えていった者。それが運命というならば、仕方のない話だった。


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