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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(中)

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第210話 港ある街9

「悪いな。一人で決めて。ハルノは三人と、ここで待っていてくれ。オルゴールを取りには、俺が一人で行ってくるよ」


 相談もせず勝手に、条件を受けた手前。単独で行くはやむなく、それでいて上等なところ。

 オルゴールある渚の家は、苫小牧の中でも内陸。海から遠く離れていれば、津波被害は受けていないと想定される。


「もし屍怪が襲ってきたら、上手く対応を頼む。渚と祖父母だけじゃあ、やっぱり心配だからな」


 倒すか逃げるか立て篭もるか、選択肢が少ない中でも行えること。

 屍怪という存在が近くにいる中で、子どもと老夫婦のみでは不安。ハンドガンとサバイバルナイフを持ち、経験豊富で戦力となるはハルノ。現場に残ってもらい、対応を任せられる者は他にいない。


「それは良いけど。蓮夜。もしオルゴールを手に入れたとして、どうやって市外まで避難するつもり?」


 ハルノが気にしていたのは、民家まで戻る移動方法。

 渚の祖父母は足腰が悪く、函館を目指すに置いてかれた身。津波に襲われた街は瓦礫と廃材あり、万全の状態であっても歩き難い状況。内陸へ向かえば被害は少ないと聞くも、屍怪との遭遇リスクは高まるだろう。


「その件については、当てがあるんだ。オルゴールを入手して、戻ってきたら説明するよ」


 走って逃げることできねば、地上を進むこと困難。

 どんなに警戒を強くしても、回避の難しい不意はある。最も理想とするところは、屍怪と遭遇しないことだ。



 ***



「よしっ!! それじゃあ、行ってくるぜっ!!」


 地図に行き先を示してもらい、銀行から外へ出て一人で出発。

 目的地は苫小牧市でも内陸側で、山も近い高台の地域。片道五キロほどと聞くも、半日あれば戻って来られるだろう。


「自転車があれば、もっと楽なんだけど。時期を見計らって、取りに戻らないとな」


 銀行から外へ出て道路の中央を歩き、大型商業施設とパチンコ店を左右に思う。

 自転車あれば五キロの距離も、歩くより倍以上の速度で。時間的にも短縮でき、体力的にも消耗は軽微。遠くへ行く足がなくなるのは、やはりと言うか不便でしかない。


「あそこにいるのは、……屍怪だよな」


 前方に交差点と薬局が見えた所で、徘徊するは揺らめく五つの影。

 肩を左右へ不規則に動かせ、行ったり来たりの往復。目的を掴めぬ意味不明な行動なれば、間違いなく屍怪と化した者だ。


「交通量が多い場所だったから。あの交差点。高確率で屍怪がいるんだよ」

「そうなのか。屍怪がいるなら、無駄な接触は避けたい。迂回したほうが良さそうだな」


 背後から説明をする少年の声に、納得しては進路変更を余儀なくされる。

 オルゴールを取りには、一人で向かいに行く予定。会話こそ成立していたものの、数秒ほど遅れて違和感を持った。


「渚!! なんでこんな所にいるんだよっ!?」


 声のあった後ろへと振り向けば、本来なら銀行で待つはずの存在。

 某メジャー球団の赤い帽子を被り、長袖で無地の黒色パーカー。膝上丈でベージュ色の短パンを着用し、表情を崩さぬダウナー系と称される少年。目の前には間違いなく、渚の存在があった。


「正確な家の場所。わからないでしょ? 地図なんかで見るより、一緒に行ったほうが早いよ」


 淡々とした口調で言う渚は、一切の動揺すら見られない。


「俺が一人で行くって話だったよな?」

「それは二人で話して、勝手に決めたこと。行かないなんて、一言も言ってない。それにいい機会だから、僅かな時間でも家へ帰りたいんだ」


 決めたことを告げて問うも、渚は淀みない流れで言っていた。

 たしかに単独で向かうことは、ハルノと話して決めたこと。それでも同じ場所にいたから、当然に内容は知っているはず。


「気持ちはわからなくないけど。……ってか、ちゃんと言ってきたのかよ? いきなり居なくなったら、みんな心配するはずだぜ」

「問題ないよ。目立つ所に、メモを残してきたから」


 言い分に理解を示した上で問題提起するも、渚は万全の対策を打って出たと言う。

 すでに銀行から離れて、一キロほどの場所か。送り届けに戻れば、また一からやり直し。それ以前に決意ある渚を、説得すること難しく思えた。


「仕方ないな。来るとなれば、道案内を頼むぜ。渚のほうが俺よりは、地形に詳しいはずだしな」

「任せて。最初からつもり」


 手立てなく許可を下すと、全てお込み済みと渚。

 同行をするとなれば、活かすことできる利点。地図を見て探すより、当事者いれば万事解決だ。


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