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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(中)

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第204話 港ある街3

「行くしかないわっ!! 歩道を離れて、早く逃げましょうっ!!」


 ハルノは大きな声で決断を下し、中央分離帯を越え対面の歩道へ。揃って自転車を手引きしたまま左折し、車一台分と狭く一方通行になる通り。

 すでに気づかれているため、背後からは後を追ってくる屍怪。いつの間にか数も増えて、ノソノソと三十体以上か。振りきるためには視線の届かぬ、遥か遠くか建物内に逃げる他ない。


「またかよっ!! こっちにもいるぜっ!!」


 ビルに挟まれた通りを進む中で、前方にはまたも屍の怪物たち。肩をユラユラと揺らしては、その数は二十以上と大所帯。


「ダメよっ!! 屍怪が来ているから、引き返せないわっ!!」


 振り向き確認するハルノの先には、すでに屍の怪物たちが接近。

 逃げた先でまたも、二度目の挟み撃ち。今日は厄日で凶日か、最悪は再び繰り返されてしまった。


「ハルノ!! 間の細い道だっ!! 逃げられる場所は、もうそっちしかねぇ!!」


 前後を挟まれる展開ながらも、中央地点にて唯一ある希望。車が一台しか進めぬ一方通行の通りから、人のみが通れそうな脇道を発見して目指す。


「行き止まりよっ!!」


 前から左右に上下を見回して、ハルノは絶望的な発言をする。脇道を抜けて行き着いた先は、三方をビル壁に囲まれた行き止まり。乗用車三台ほど止まれそうな空間に、置かれているのは室外機と捨てられた灰皿。

 どこを見渡してもビルに扉はなく、あるのは無慈悲な壁に壁と壁。開けられそうな高さに窓もなければ、逃れられそうな場所は見当たらない。


「それでもどこか、逃げられそうな場所は……」


 一見して見つけられずとも、未だ諦めず探す希望。

 しかし札幌であったような、非常階段も存在なし。上れそうな場所すらなれば、真に身動きとれぬ行き止まりだった。


「こんな所で……終わるわけにはいかねぇ」


 袋の鼠と窮地に陥っては、自然と脳裏に死が過ぎる。

 振り返れば屍怪は列を成し、一体ずつ着実に接近。後ろにどれほど控えているか、全体が見えねば不透明。囲われた場所で戦闘となれば、逃げ道なく圧死も否定できない。


「足元にあるマンホール!! 蓋を開けて、地下に逃げなっ!!」


 どこからか聞こえてくる声は、音程が高く女性か子どものようだ。


「誰だっ!?」


 しかし存在が見えずして、上を向き問いかける正体。


「蓮夜!! 今はそれどころじゃないわっ!! 逃げるほうが先よっ!!」


 全く返って来ぬ返事よりも、まずは退路の確保とハルノ。

 行き止まりの中でも、端に位置する場所。足元にあるは【雨水】と書かれ、網目模様をするマンホールの蓋。


「リュックと自転車は無理だっ!! 今は捨ててでも、下に行くしかないっ!!」


 完全に嵌っておらず、僅かに浮いていた蓋。力尽くで持ち上げては梯子あり、空間は一人半ほどとあまり余裕ない造り。

 自転車は当然に下ろせないし、荷物で膨れたリュックも困難。何より優先すべきは命であるから、全てを置いても逃げる以外に選択肢はない。



 ***



「きっと荷物を置いても、気に止めないはずだっ!! あとでタイミングを見計らい、取りに戻って来るしかないっ!!」


 先の旅路に必要な物が多く、詰められたリュック。移動手段として欠くことできぬ、二台のロードバイク。

 屍怪が標的としているのは、この場にいる二人のはず。そのためリュックを端に置き、自転車で隠すよう配置。


「俺はあとでいいからっ!! ハルノが先に行けっ!!」


 マンホールの下は底すら見えぬ、光も届かぬ暗闇の世界。

 前方からは獲物を捕まえようと、手を伸ばし迫る屍怪。他に逃げ道や選択肢はなく、促しに応じて先行するハルノ。タイミングを見て梯子に、足をかけるときだった。


「追って来られないように。できる限り閉めねぇと」


 マンホールの蓋にある凹みへ手を回し、力尽くで引き寄せて八割ほど。

 外から入る光はか細く、三日月の形まで減少。それでも手を戻さねばならぬから、完全に閉めること叶わなかった。


「ヴガァァ」


 マンホール前まで到達したようで、頭上からは屍怪の叫びが響く。


「ガンッ!!」


 不意に足でも衝突したのか、閉じていくマンホールの蓋。

 意図した結果でなければ、偶然という名の副産物。マンホールの蓋が完全に閉まり、もはや追っ手の心配は不要だろう。


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