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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(中)

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第199話 不用心

 坂道を前にして左手には、白いガードレール。車一台がなんとか通れる広さで、操作を誤れば転落は必死。

 転落防止用の策は、環境的に必須の対策。九十九折りと蛇の形をした坂道を、ハルノと自転車を引いて歩く。


「これは……凄いな」


 目前に現れた民家の対策は、目を疑う圧巻のレベルだった。

 民家を含めた庭など敷地全体を囲むように、展開されるは数多の刺がついた有刺鉄線。二メートル以上の高さあり、身長を優に超えるもの。手の入らぬ間隔で張られて、製作者の几帳面さが見てわかる。


「もしかしたら、生存者がいるのかしら?」


 際立つ対策を前にしてハルノは、家内に生者の可能性を示唆している。野生動物を危惧したと考えることできるも、それより納得いく答えはみなが持つ。終末世界になってどこより出現したのは、人間の形をしたまま歩く屍怪(シカイ)という存在。

 屍怪は血の通った生者を襲い、噛まれた者は低体温症を経て死亡推定。屍の怪物という同一の存在に転化しては、無限に続くかと思う負の連鎖。


「てか、入口はどこだよ? 見つけないと、絶対に入れないぜ」


 簡単に越えられる高さでなければ、強硬手段の突破は難しい。それは屍怪と化した者もちろん、生者である人間にも同様の効果。


「必ずどこかにあるわよ。食料や物資は尽きてしまうから、ずっと引き籠もっているわけにもいかないでしょ? 補給へ出るためには絶対、外へ出ないといけないもの」


 ハルノの言うことは、筋が通って最もな話。

 どこから湧いてくることなければ、必ず入手しなければならぬ食料。故にあるはずだろう入口を、二人で周囲を歩き探すことに決めた。

 

「間違いなく、これだよな」


 有刺鉄線に沿って砂利道を歩き、目前に出現したのは鉄のドア。

 他の場所に何もなければ、疑うことなき確実な入口。民家や敷地の出入りには、開く以外に方法はない。


「パッと見て敷地内には、誰もいなさそうだな」

「どうかしら? 外にいなくても、家の中にいて不思議ないわ」


 有刺鉄線の隙間から敷地全体を見ては、人影なくとも家内に滞在の可能性とハルノ。

 しかしドアノブ上部に独特な、鍵穴のついた鉄のドア。開いて進む他に道はなく、敷地内に入らねば何も確認できない。


「……開いたわよ」


 ハルノは徐にドアノブを捻り、開かれる鉄のドア。

 厳重な対策をしているに、未施錠とは不用心の極み。故に何か最悪の事態も、想像するところだった。



***



 息を殺して周囲を警戒しつつ、敷地内への侵入開始。

 有刺鉄線に囲まれた敷地は、民家を除いても相当なもの。広さとしてはちょっとした、公園くらいはありそうだ。


「……」


 庭の奥隅には物置小屋と思わしきものあり、中央から半分を占めるは土に固められた広場。

 手前の残り四割近くで行われているのは、緑と果実に溢れる家庭菜園。艶めいて見えるはトマトに、綺麗な形をしたナスにピーマン。他にも髭の生えたトウモロコシとあり、手を加えられていたことわかる。


「あのぉ。誰かいませんか?」


 恐る恐ると声を小さく、人がいるのかと探り。

 しかし反応する者を無くして、誰もいなければ虚しいもの。微かに吹く風の音のみ、耳に触れ過ぎ去っていく。


「とりあえず外には、誰もいないみたいだな。家の中も調べて見るか。安全そうならこの場で、自転車の修理もしたいし」


 外観からはいくつかの年号を、越えていそうな木造二階建ての古民家。入口へ回っては玄関も未施錠で、靴がなければ人の気配も感じられなかった。


「誰もいなさそうね」

「ああ。てか今は、誰も住んでいない感じだな」


 ハルノと民家の玄関にて、全体を見ての第一印象。

 争いの痕跡が微塵もなければ、僅かに埃の積もった廊下。人が最後に歩いたのは、時間にして暫く前だろう。


「家から受ける印象は、昔ながらの感じね。縁側の前には障子があって、部屋の基本は畳で和風」

「生活感が全く見えないし。だいぶ前に、どこかへ避難したのかもな」


 ハルノと家の中を探索して、互いの感想を言い合う。

 何も物が入っていない冷蔵庫に、整頓されたままある台所。茶の間には丸い形をしたちゃぶ台が置かれ、対面する位置には低い台座と上にテレビ。和室には年季の入っていそうな扇風機と、少し値の張りそうなマッサージチェア。二階へ行けば服の入ったタンスあり、他には本の並べられる本棚。


「……なんだよ。これ?」


 探索を終えて茶の間へ戻ってきては、ちゃぶ台の上にて見逃していた物。

 ポツンと置かれているのは、家主が所有者であろう水色の手帳。最初のページには【我が家を訪れた人へ】と、意味深なメッセージが残されていた。


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