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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第188話 空の玄関口49

「上村隊長!!」


 連絡通路を一直線に走り、国際線ターミナルへ到着。


「よく戻った。みんなはすでに一階へ行き、観光バスに乗り待機している」


 待機していたのは白髪の上村隊長と、迷彩服を纏う二人の自衛隊員。

 国内線ターミナルから国際線ターミナルに、流れ避難した者たちも最終段階。それでも三人は残る存在を知り、先に行かず待っていたのだ。


「なんとか順調に、避難は進んでいるみたいですね」


 新千歳空港に残る者を救出するため、行われた今回の大規模な作戦。

 すでに大半は新千歳空港を出発し、残すは観光バス二台分。避難についても最終局面と、全てにおいて大詰めの段階だ。


「そう言うことだ。しかし、蓮夜。気持ちはわかるとは言え、一人での独断先行はいけない」


 国内線ターミナルへ向かったことにつき、上村隊長から若干のお叱りを受ける。

 組織で動いる中での、独断先行という形。手を伸ばせば届く距離と、不安や焦りで流行る気持ち。全てにおいて自制が効かず、足を止めることできなかった。


「いろいろな事情を踏まえ、考え練られた計画。一人の勝手な振る舞いで、他者を危険へ晒すことになる」

「……そうですよね。すみません」


 上村隊長から指摘を受けることは、最も過ぎる内容であった。

 一人で勝手に動き、迷惑をかけた点。今になって理解しても、事後なれば時すでに遅し。浅はかで短絡的な行動と言われても、芯を食っては何も反論できない。


「しかしまぁ蓮夜の活躍は、サチからも聞いている」


 上村隊長はトランシーバーを使用し、常にこちらの動向を把握していた。

 国内線ターミナルでは避難誘導をし、侵入してきた屍怪を撃退。ブッチャーと戦い食い止めた点では、一定の評価をしてくれた。


「それでもやはり、短気は損気。頭に血が上っては、見える景色は狭まり思考も短絡化。広い視野を持ち頭の早い回転には、何より冷静さを維持することが寛容。心を熱くして、頭は冷ややかに。それが長い年月を生きた、老獪からのアドバイスだ」


 上村隊長から受ける指摘は全て、異論を唱える余地はなかった。

 今回の独断先行おける非は、間違いなく己一人にある。見直す点は真摯に向き合い、反省をしなければならない。



 ***



「なんだよ? あれ……?」


 新千歳空港の国際線ターミナルを、階段を下り玄関前と外へ出た所。

 ピンク色をした二台の観光バスと、遙か彼方の空で赤くぼんやり輝くもの。位置的には遠くも、花火を打ち上げた場所付近。


「照明弾が上がっているってことは、花火は終了したって合図よ」


 サチが教えてくれるのは、打ち上げ花火の終わり。

 避難は順調に進んで、観光バスも残るは二台。個数に制限がある中で、十分に役割を果たしてくれただろう。


「……なんだ?」


 前方の道路を国際線ターミナルへ向かい、物凄い速さで迫ってくる幻影あり。

 明かりに照らされ把握できるは、間違いなく自衛隊車両のジープ。ならば乗っているのは、囮作戦を実行した二人だ。


「何をやっているんだっ!? まだ避難していないのかっ!?」

「屍怪が戻ってくるのは、ハイスピード!! みんな急ぎで、エスケープ!!」


 玄関前にて停車し降りてきたは、フレッドとジョシュの自衛隊員二人。打ち上げ花火の終了を確認し、避難確認と危機の知らせに戻ったとの話。


「言っても俺たちで最後だから。もうすぐに避難は終わるぜ」


 避難者の大半は観光バスに乗り、すでに新千歳空港を脱出済み。現在ある二台が最終便で、真に最後の避難バスだ。


「悠長なことを言っている場合じゃないぞっ!! 花火が終わり音はなくなって、屍怪が空港へ戻ってきているんだっ!!」


 余裕あるかと思っていたところに、フレッドが知らせるは事態の暗転。

 打ち上げた花火に注意を引かれ、離脱していった数多の屍怪。全て終了と静寂に戻りつつあれば、元の鞘にと帰ってきているらしい。


「マジかよっ!! なら急がねぇとっ!! みんな乗って!! すぐに出発しようぜっ!!」


 すでに準備はほとんど整っているため、観光バスへ乗れば話は早い。


「ダメだっ!! 逃げ道としていた方向に、屍怪が流れているっ!!」


 しかし自衛隊員が赤外線スコープを使用し、避難経路を確認したところ。

 観光バスを走らせる避難経路に、戻ってきた屍怪が侵入。数も多くすでに広く展開し、走行の安全を確保できないとの話だ。


「あと少しだってのに。ここまで来て、逃げられないのかよ」


 すでに大半の人々が避難し、残すは現場にいる人たちのみ。

 花火による陽動作戦に、フレッドたちよる囮作戦。最終段階にて打つ手を失うとは、どこまで天に見放されているのか。運命というものがあるならば、呪いたくなる気持ちであった。


「窮地の中でも、チャンス!! できることは、ダイナマイト!!」


 変わらずのラップ口調で、発言をするのはジョシュ。

 しかしその様子には、間違いなく異変。額には尋常ならざる汗が浮かび、顔色も悪くとても無理をして見える。


「大丈夫かよ? ジョシュ? どこか、体調が悪そうだけど」


 明らかな不調が目に見えては、身を案じて行う確認。

 同時にジョシュの元へ向かい、背後を取るはフレッド。首元から迷彩服を押し下げると、隠された真実が公に晒された。


「……ジョシュ。……噛まれていたのかよ?」


 肩から背にかけてあるのは、未だ湿潤した生々しい傷。

 皮膚が裂かれては血も流れ、くっきりとした歯形跡。それは間違いなく、屍怪に噛まれている証拠だった。


「やっぱり、隠していたか」


 フレッドは心当りあったようで、発言に態度も重なり明白だ。


「バレてしまっては、バッドラック」


 ジョシュは噛まれた事実を周知されても、変わらずラップ口調を崩さなかった。


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