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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第187話 空の玄関口48

 やっぱり痛みとかは、ないんだろうな。あればもう少し、リアクションとかあってもいいはずだし。


 ブッチャーの姿を見つめ横を通り過ぎ、もう気にすることやめようと思ったタイミング。

 後ろを気にせずして、視線は二人の待つ前へ。意識的にもほとんど排除し、走ろうとするときだった。


「蓮夜!!」


 ただ事ではない形相でハルノは叫び、向けられた視線と危惧する背後。


「グヴ……」


 変わらず低い唸り声を発して、立ち上がっているブッチャー。

 放たれる威圧感は山の如く、押し潰されそうなもの。自然と気押されては圧倒され、圧力に尻餅をつきそうなレベル。


 たしかな手応えはあった。それでもまだ、立ち上がり動けるのかよっ!?


 ブッチャーは両腕を再び天高く、振り下ろして床を叩きつける。

 連絡通路床の鉄板は破壊され、中央が凹み両端が浮いてV字に。攻撃の威力は変わらず、とても高いまま。手応えあった感触も、特段の成果は見られない。


「これだけやっても、足止めすらできねぇのかよっ!!」


 全身全霊を持って行った策も、成果なくして全て空振りか。

 もはや打つ手は何もなく、代替案なければ八方塞がり。立ち塞がるブッチャーを前に、できること今や何もない。


「グヴ……」

「……!?」


 歩を進めるブッチャーの姿に、違和感あり視線は足へ。

 足を前に歩いてはいるものの、引きずって見える仕草。たしかにあった手応えは、やはり全て徒労と無駄にあらず。ブッチャーに拭いきれない、確実なダメージを与えていたのだ。



 ***



「蓮夜!! 攻撃が来るからっ!! 急いで下がってっ!!」


 慌てた様子で叫び言うサチの姿は、言葉は足らずも真に迫るものがあった。

 連絡通路にいるのはブッチャーと、ハルノにサチと自身を含め三人。アサルトライフルによる発砲攻撃では、威力は足りぬと実戦経験から。

 しかし攻撃するとの言い回しではなく、攻撃が来るという変わった言い方。そこに何か大きな意味がある気がして、視線を後ろに振り向き走る。


「攻撃が来るって。どういうことだよ」


 連絡通路を走り二人の元へ向かう中でも、頭の中で解決不可な問題に疑問。

 しかしサチが言った言葉の意味は、連絡通路を走り十秒ほどで明らかに。近くで雷でも落ちたかのよう轟音に、建物全体が揺れるような振動。背を押すよう後方から強風が吹き、衝撃に頭を抱え伏せるしかなかった。


「……一体。何が起きたんだよ」


 頭上からはパラパラと、小さな石の欠片が落ちてくる。髪に乗っては触れた手も、白く粉っぽくなってしまった。

 しかし厭わず体を捻り、振り向き見るのは後方。連絡通路の壁は破壊され、まるで恐竜が噛み砕いたかよう半壊。天井から崩れるコンクリート片に、床からは支えのワイヤーが飛び出て露出。照明の周りも損壊あり、ケーブルが切れ火花が散っている。


「どうだっ!? やったかっ!?」


 スピーカーとなったトランシーバーから、聞こえてくるはフレッドの声。


「いえ。……まだよ」


 サチが見つめるのは連絡通路でも、崩れた先となる位置。そこには未だ健在であると、塵芥が舞う中に大きなシルエット。


「待っていろ!! すぐに次弾を打ち込んでやるからっ!!」


 連絡通路を攻撃したのは、どうやら外のフレッドらしい。

 果たして方法は、どんなものか。崩れた連絡通路から外を見つめ、道路をゆくジープの上にいるのは。


「とっておきのプレゼントだっ!! とくと味わえっ!!」


 フレッドが肩に乗せているのは、先端が細長い筒状の物。

 それは見たまま、本物のロケットランチャー。最初に行われた攻撃の威力に、納得も得心もいった。


「ヤベぇ!!」


 ロケット弾が飛んで来ると知っては、即行で撤退と一目散に走る。

 攻撃に巻き込まれでもすれば、大怪我を負うは必死。下手を打てば死ぬ可能性もあり、どう転がっても無事には済まない。


「来るよっ!!」


 サチは気構えするように訴え、時を待たず発射音と着弾音。


「くっ……」


 衝撃に備えては体を低く、地に伏せて頭を覆う。


「……どうなった?」


 ロケット弾が着弾すると同時に、連絡通路では爆発音に瓦礫が崩れた。

 足元に転がるは、小さなコンクリート片。振り返って見る連絡通路に、十メートルはあろう大きな溝が出現。繋がりあった建物同士の関係は絶たれ、真っ二つと完全に乖離してしまった。


「……」


 連絡通路の崩れた際に立ち、見つめる崩壊地点の地上。真下では大小様々な瓦礫が山積みとなって、巨体なブッチャーも姿は発見できない。


「……どうなったのかしら?」


 隣まで戻り近づいてきたハルノも、周囲を見渡し状況把握に努めている。

 今までどんな攻撃を受けても、顔色一つ変えなかったブッチャー。とは言えロケットランチャーよる攻撃を、受けたならば何も残さず粉々か。もしくは瓦礫に潰され下敷きとなり、どちらせよ無事では済まないだろう。


「蓮夜!! ハルノ!! 早く行くよっ!!」


 これ以上かけられる時間はないと、背後で待つサチから促される。

 国際線ターミナルにて今もまだ、避難を続けているだろう人々。ブッチャーという脅威を排除できようとも、屍の怪物と化した者は他にもいるのだ。


「あれだけの攻撃ですもの。普通ではないブッチャーも、耐えられるはずないわ」


 間近でロケットランチャーの、威力を見ていたハルノ。

 どんなに頑強な筋肉の鎧を纏おうと、元は人間のプロレスラーであったブッチャー。技術力を駆使した強力な武器を前に、生身では対抗できるはずもない。


「……そうだな。耐えられるはずないよな」


 今はまだ現場の騒動も落ち着かず、花火に照らされ崩れる瓦礫の山。

 もしまだ動けるのならば、這い出してくる可能性。今にも手が伸びてくるのはでないかと、一抹の不安は拭いきれなかった。


「よしっ!! 俺たちも行こうぜっ!! もうみんなの避難も、終わりに差しかかっているはずだっ!! 取り残されないように、最後のバスに乗らねぇと!!」


 しかし姿のない存在に不安を抱いても、虚像を追っているようで無意味なもの。

 そして今はまだ、やらねばならぬこと。残された時間で観光バスに乗らねば、新千歳空港に取り残される。現在の機会を逃せば、避難のタイミングを失うだろう。助けに来てチャンスあるのに、脱出しないとは本末転倒だ。


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