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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第185話 空の玄関口46

「ダンッ!!」


 後方からは時おり発砲音が響き、ブッチャーに当たっては行動を鈍らせる。

 ハルノとサチはアサルトライフルを構え、単発撃ちにて後方支援を見せる。前戦にて敵意を一手に引き受け、集中し命中精度を上げる算段だ。


「的が大きいから。当てるだけなら、簡単なんだけど」


 ハルノは肩に命中したこと確認し、それでもダメージの低さに嘆く。


「問題はタフネスさ。それでも時間を稼ぐために、できることは変わらないわ。何十発でも何百発でも、お見舞いしてあげましょう」


 打てる手は一つとサチは、敵を前に視線を逸さぬ。

 そもそも弾薬の数には限りあり、有限なれば何百発もは非現実。それでも抗う姿勢を曲げぬと、揺るがぬ覚悟を示す発言であった。


「必要なのは力。俺にはまだ、やれることがあるっ!!」


 黒夜刀を再び鞘へ納め上部にあるレバーを、横へスライドさせ安全装置を解除。

 黒き刀身を赤く燃え上がらせ、高熱という特異を宿す焔。通常時より攻撃力は、数段階ほど上昇。立ち塞がる全てに抗い、道を開く比類なき力だ。



 ***



「焔連撃」


 赤き刀身に揺るがぬ思いを乗せ、力の限り放つは焔の連撃。

 身の毛がよだつほどの攻撃を、掻い潜っては浅くとも確実に。死線に立ちつつも隙を突き、狙いを澄まして斬撃を重ねる。


「グヴ……」


 まるで動じずであったブッチャーも、腕を見つめついに足を止める。

 斬り続けた焔の連撃は、腕や横腹に命中。中でも特に左腕を斬った斬撃は、傷を深く肉がパックリと割れるもの。根気を強く確実に狙い続け、耐えて末に得た一つの成果だ。


「……やれるっ!! 焔なら鎧のような筋肉も、問題なく斬れるぜっ!!」


 通常時では得られなかった手応えに、結果から一つ確信ができ自信を持つ。

 焔の攻撃力あれば、少なくとも対等以上。展開を絡めやりようによっては、ブッチャーを足止め倒せても不思議ない。


「ハルノ!! サチ!! 援護を今以上に頼むぜっ!! 俺がこのブッチャーを、なんとかしてみせるっ!!」


 流れはこちらへ傾いたと判断し、二人の士気を上げるため鼓舞。

 劣勢の中でも活路を見出し、訪れた千載一遇の好機。意気揚々に仕掛けどころを、探り始めるときだった。


「……どうしたんだよ」


 愛刀である黒夜刀に異変を感じ、刀を見つめ足を止める。焔を使用し高熱を発すれば、赤く燃え上がるよう刀身。

 しかし放たれる熱が弱くなり、赤さも薄れ黒き刃へ戻っていく。


「……時間切れ」

「時間切れ!? ハルノっ!? どういうことっ!?」


 背後で状況を見ていたハルノは呟き、事態の把握をできぬとサチは問う。

 完全無欠に思える焔の性能にも、幾つかの弱点と呼べるところがある。その一つが焔を使用するにあたり、性能を維持するための時間だ。


「もう三十分。……経ったのかよ」


 鞘にはソーラーシートが埋め込まれ、納刀時に自然と蓄電されるシステム。

 しかしそれでも高熱を宿すに、莫大なエネルギーを消費する。満タン時でも維持には、三十分が限界といったところ。屍怪にブッチャーと連戦で長引き、タイムリミットが訪れてしまったようだ。


「もう日が落ちているし。日が上がったとしても、簡単に充電できるわけじゃない。これじゃあ焔は、暫く使用できねぇ」


 窓から外を見つめれば、すでに暗夜の世界。

 焔という力を失っては、格段に落ちてしまう攻撃力。通常時のまま戦うとなれば、対等に渡り合えるか不透明だ。


「蓮夜!! 避けてっ!!」


 ハルノの叫びが耳に届き、体を転がし回避行動。

 迫るブッチャーから振り下ろされた拳は、壁を破壊して埋もれる威力。敵はこちらの事情を考慮し、引いてくれるわけでもない。


「焔が使えなくても、ブッチャーにダメージを与える方法。足止めできる方法は……?」


 頭をフル回転させ、懸命に探す突破口。鉄を斬れる高熱を宿す焔ならば、ブッチャーの西洋兜を両断できたかもしれない。

 しかし時間制限となっては、考えても無駄なこと。屍怪の弱点たる頭部を狙えなければ、狙える場所は自ずと絞られる。


「倒せなくても、足止めするだけでいいんだ。なら、狙うは……」


 相対する敵の姿を頭から下に、視線を落とし見出すは一筋の光明。身長は高く西洋兜を被っては、そもそも狙い難い頭部。

 しかし肌の露出が多く、低い位置にある足。刃の届く間合いならば、狙うに難易度の高い話ではない。


「ハルノ!! サチ!! 俺は足止めするため、足の腱を斬るっ!!」


 敵は筋肉の鎧を纏いし、悪辣なるモンスター。正面からの勝負で斬りつけても、軽い傷を負わせる程度だろう。

 故に狙う場所は絞り限定して、最もダメージを与えられそうなところ。大きな足から少し上と、腱の部分を斬るに決めた。


「足の腱を斬るって!! どうやって背後へ回るつもりっ!?」


 ハルノが声を上げ飛ばす質問は、当然の疑問と言ってよいだろう。

 太ももや膝下と、正面から斬れる場所と別。足の腱を狙うためには、背を取る必要性があるからだ。


「提案があるっ!! 二人とも聞いてくれっ!!」


 前提の背後を取ることこそ、案で一番に難しき鬼門。

 普通の屍怪より動きが速く、圧倒的な力を持つブッチャー。リスクなしで事を運ぶなど、土台から無理な話だった。


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