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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)
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第181話 空の玄関口42

「ドガンッ!!」


 しかし二人の嘆きに構うことなく、シャッターは破れて大口が開く。

 破壊され縦横に広がった大穴は、人が三人ほど通れそうなもの。もちろんすぐに塞げるわけもなく、屍怪が来れば侵攻を止められそうにない。


「くっ……」


 来るだろう存在に身構えるも、不気味なほど静かな展開。

 シャッター破壊された先に、屍怪の姿はあらず。そのため銃を向けている人たちも、顔を見合わせて困惑している様子だ。


「……確認」


 根負けしてか先に動いたのは、生存者たる人間の自衛隊員。指を上下にサインを送り合い、二人が揃い大穴を覗く仕草。

 それでも屍怪を発見できぬのか、足を前へシャッターに接近。先行する一人が銃口を下ろし、顔を覗かせる刹那であった。


「おっ、おっわわわぁ!!」


 死角となる横側から長い腕が伸びて、大きな手に頭を掴まれる自衛隊員。悲鳴を上げると同時に持ち上げられ、シャッターを介し反対側へ消えてしまった。

 そこから先の展開はまさに、急転直下の大滑り。出現した屍怪は足並みを揃え、シャッターを越え侵攻が始まった。


「構えろっ!! 撃てっ!! 撃てっ!!」


 連絡通路へ侵入した屍怪を前に、銃を構える者は発砲を始めた。

 銃を持つのは両組織の十名と、他の者は警棒など鈍器で応戦。屍怪の歩速は遅くとも、底知れぬ数が相手。多数の侵入を許してはすでに、場は混戦の模様を極めている。


「サチっ!! 避難の状況はっ!?」

「待って!! すぐに確認するからっ!!」


 予断を許さぬ状況と一気になれば、サチはトランシーバーにて通信確認。

 相手は国際線ターミナルにて、避難誘導をする上村隊長。観光バスにて避難を進める途中も、まだ暫くの時間を要するとの話だ。


「ここがまさに、最終防衛ラインってことだな」


 連絡通路まで侵入されたとなれば、もう侵攻を塞ぐ手段はない。


「抜けられればきっと、想像できないくらいの被害が出るわ」


 隣に立つハルノも状況を、十分に理解している。

 現在地の連絡通路中央付近こそ、生者と死者の過ごす境目。抜けられれば最悪の事態と、展開は最終局面の形相を呈した。



 ***



「俺たちがここで、時間を稼ぐしかない」


 最前線の戦闘を見つつ後方位置にて、黒夜刀を抜き臨戦態勢と備える。

 両組織の面々は武器を用いて戦い奮闘するも、隊列は崩壊しつつあり合間を抜けてくる屍怪。国内線ターミナルに寄り現在地こそ、連絡通路にて真に最終の防衛ラインだ。


「俺が前へ出て注意を引くから、二人は後方から援護を頼むっ!!」


 銃器を持つ二人は近接より、遠方迎撃に向く装備。

 対する黒夜刀が主武器なれば、遠方よりも近接向き。前へ出て屍怪の迎撃に動く判断は、武器状況を考慮しても自然な流れだ。


「可能な限りでフォローをするわっ!! だけど、蓮夜。無理はしないでよっ!!」


 沈黙する掃除ロボットの上に、アサルトライフルを固定するハルノ。

 高さ的にも丁度良く、平衡性を保てる作り。発砲による反動を軽減させ、弾道を安定させる算段だろう。


「ああっ!! よしっ!! 行くぜっ!!」


 射撃の名人に援護を任せ、屍怪の迫る前方へ繰り出す。

 避難者たちの避難が終わるまで、時間を稼ぎ耐える戦い。屍怪が何体で来ようとも、今は刀を振る他ない。


「うぉおおおおっ!!」


 前方から迫る屍怪に対して、黒夜刀を振い放つ斬撃。

 上段から振り下ろす一斬にて、屍怪の頭部を斬りつけ。間を置かず二体目にも、横から払って首を狙う。


「ダダダッ!! ダダダッ!!」


 前方ではアサルトライフルの銃声が響き、自衛隊に自警団と激しい抵抗が続く。

 しかしどんなに抵抗をしようとも、屍怪に押し込まれる展開。初期の半円形に囲む形は、ほとんど保てずに崩壊。今は二・三人程度に分かれ、壁際にて発砲迎撃。一人ひとりが死力を尽くすも、厳しい現状に限界は近かった。


「蓮夜!! よそ見をしている余裕は、全くないわよっ!!」


 ハルノの狙い済ました的確な発砲により、脳天を撃ち抜かれ倒れる屍怪。

 最初の五分をピークに、侵入を開始した屍怪。何度となく倒し続けても、場に死体が積み上がるだけ。そのため連絡通路には、常に二十体か三十体はいるだろう。


「数が多くて、終わりが見えないわっ!!」


 あまりの多さにさすがのサチも、余裕を失い弱音を吐く。

 終末の日から今まで何度となく、修羅場を経験してきたはず。それでも直面する今回の事態は、前例なくトップクラスの最悪だろう。


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