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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第180話 空の玄関口41

「ヒューン。ドドンッ!!」

「ドンッ!!」


 屍怪の注意を少しでも長く引くため、間隔を空け打ち上げる予定の花火。


 今たしかに、音が二つ聞こえたよな?


 二つの音が重なり聞こえたはずも、打ち上がっている花火は一発。

 腰の位置より低い身長の女児に、小学生ほどに見える男児。他にも保護者の大人と足を止め、花火を楽しむ者が多数。


「なあ。ハルノ。今たしか、花火の音が二つしたよな?」

「どうかしら? 花火を見ていたから、気づかなかったわ」


 違和感を覚え問うてみるも、ハルノも人々と同じ様子。

 花火を見ることに集中しては、他の情報をシャットアウト。それでも耳に疑いなければ、二つの音に自信があった。


「花火の数は限られているから、連発は許可されていないはずなんだけど」

「蓮夜の聞き間違いじゃない? ほら。空を見ても、上がっているのは一発よ」


 納得できぬと不満を口に出すも、空を見上げるハルノの指摘。

 夜空に打ち上がっているのは、滝の水が落ちるようしだれ花火。目を見張る圧感の代物であり、周囲に他はなく一発のみだ。


「……おかしいな。たしかに聞こえたはずなんだけど」 


 腑に落ちぬところあるも、花火はたしかに一発。

 窓際から外を見て、夜空の景色こそ真実。打ち上がっているのしだれ花火のみならば、音は単なる聞き間違いなのかもしれない。


「ドンッ!!」


 再び聞こえるは間違いなく、花火とは全く異なる別音。

 方向は遠方の外にあらず、もっと傍で近い距離。連絡通路の床を国内線ターミナルへなぞり、鉄のシャッターが強固に閉まる場所。


「武器を持って集まってくれ!!」

「緊急事態発生!! 緊急事態発生!!」


 慌ただしく呼びかける自警団員に、トランシーバーで通信する自衛隊員。最後尾にいた二十名は連絡通路を戻り、閉めたシャッター前へ集合していく。

 花火の打ち上げ音と重なり、聞こえていたのは衝突音。閉鎖したシャッターは衝撃に、内側へ大きく変形していた。


「みんな急いでっ!! 国際線ターミナルまで避難してっ!!」


 サチは声を上げ有事を訴えると、花火の観覧会は強制終了。

 再び身に危険を感じる事態なれば、親は子の手を引き大人もそそくさと。連絡通路を国際線ターミナルに、一斉に走り出していった。


「蓮夜とハルノも!! 早くみんなと避難してっ!!」


 民間人に当たれば例外はないと、サチは避難者と同様に退避を求める。


「避難には時間が必要って言っていましたよねっ!? 俺たちはまだまだやれますしっ!! できる限りの協力をしますよっ!!」


 自衛隊はともかく自警団は、民間人で結成された組織。

 そもそも屍怪いる終末世界において、公人や民間人など些細なこと。戦闘に参加できる者が動かねば、命や大切なものを守れぬ世界だ。


「ハルノっ!! ハルノもまだ、やれるだろっ!?」


 一人で先走った発言をしたため、隣へ顔を向け意見を求める。

 しかしいつになく、辛辣な顔をするハルノ。先のシャッターをまじまじ見つめ、どこか動揺しても見える。


「……同じだわ。前にシャッターへ……体当たりされたときと」


 口元をワナワナと震わせ、ハルノは目を逸らさず呟く。 

 玄関前にて生存者たちを追い、襲ってきたブッチャーなる屍怪。閉鎖したシャッターに体当たりをしては、大きく内側へ凹ませる事態に。耐えこそしたものの事態は深刻で、結果として突破の起因になった。



 ***



「なら今回もシャッターの外には、その……ブッチャーがいるってことかよ」


 体当たりをして襲ってくる感染者など、終末の日から出会ったことない。

 いわゆる普通の屍怪ならば、バリケードを前に立ち往生するだろう。ブッチャーと呼ばれる屍怪は、異質にして異端の例外たる存在だ。


「ドスンッ!! ドスンッ!!」


 連続して行われる体当たりに、シャッターは内側へと変形していく。

 鉄製といくら耐久力に優れても、ブッチャーの体当たりは上をいく様子。何度となく繰り返される行為に、今や時間の問題としか思えない。


「全員!! 突破に備えろっ!!」


 一人の自衛隊員が声を上げて、銃器を持つ者は銃口を向ける。

 シャッターを前に半円形で取り囲み、漏らさず迎撃するフォーメーション。静まり返った中で唯一に響くは、繰り返される体当たりの音。誰しも突破が時間の問題と悟れば、息を呑み緊張感が支配していた。


「今日という日を終わらせて、早くビールでも飲みたいぜ」

「そのときは、もちろん。腹がタプタプになるまで、付き合わさせてもらいますよ」


 アサルトライフルを構える二人は、今より未来の希望を語っていた。

 国内線ターミナルでの窮地を逃れて、退避まであと少しというところ。いつまでも終わらぬ災難に、絶望しないこと人の救いだ。



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