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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

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第179話 空の玄関口40

「かなり危なかったけど。なんとか逃げ切れたな」


 連絡通路を国際線ターミナルへ向かい、避難者たちを前に最後尾で歩を進める。

 周囲には自衛隊と自警団の人々もおり、避難誘導と迎撃に携わった者たち。二十名ほどいる一団こそ、真に最後の避難者だ。


「まだ逃げ切れていないわよ。空港の敷地内から、脱出してこそでしょ」


 右隣を歩くハルノの指摘こそ、真の目的であり作戦の本質。

 今回の作戦による目的は、新千歳空港からの退避。国内線ターミナルから避難できようとも、今はまだ何もかも作戦の途中だ。


「でもここまで来れば、逃げ切れたも当然じゃないか? 国内線ターミナルのシャッターは閉めたし。国際線ターミナルでは、避難を始めているって話だからな」


 進行方向から後方へ振り向けば、固く閉ざされたシャッター。先ほどまで見ていた屍怪も、全て向こう側と存在なし。

 敷地内における屍怪の誘導も上手くいき、国内線ターミナルからの避難も完了。あと避難者たちと観光バスに乗り、新千歳空港から離れるのみだ。


「なんか、フラグになりそうな発言ね」

「大変な目に遭うのは、もう本当に勘弁だわ」


 左隣を歩く自衛隊員サチの発言に、冗談ではないとハルノは首を振っていた。


「それはそうと、現在の避難状況。避難に使用する観光バスは、全部で七台。駐車場から玄関前へ移動させ、三百人を乗せての避難。完了まではまだ、かなりの時間を要するって話よ」


 サチは避難を終えるまで、相当の時が必要と言う。

 国際線ターミナルへ出向いたサチは、新たに渡されたトランシーバーを持つ。避難状況について、随時の変化を把握するためだ。


「かなりの人数がいるもんな。時間がかかっても、仕方ないんじゃないか」


 全て上手くいっていると言わずとも、現状は及第点といえる展開。

 新千歳空港の周辺から屍怪を誘導させ、国際線ターミナルまで人々を避難。国内線ターミナルのシャッターを閉め、ひとまずの安全確保を完了。残すは観光バスに乗り敷地外への移動で、最終段階と少し余裕を持てる状況になった。


「わぁ!! 花火だっ!! 花火!!」


 連絡通路の窓際にて張り付き、空を見上げる幼き子どもたち。

 避難も進み連絡通路の中ほどまで来て、避難者たちにも生まれるゆとり。歩くスピードは自然と落ちて、花火を見る余裕さえ持てる状況になった。


「さっきまであんなに、慌てて避難していたのにね」


 避難する人々の対応変化に、ハルノは苦笑いをしていた。

 先ほどまでの避難者たちは、屍怪を前にしてパニック状態。後方が前方を押して、我先に逃げる状況だった。ゆとりが生まれれば立ち止まる者も増え、花火を楽しむとは現金なものだ。


「シャッターが閉まったのもあるけど。最後尾に自衛隊に自警団と、二つの組織がいるからな」


 力あり強く頼れる存在あれば、自然と安堵感に余裕が生まれるもの。

 もし異変が起こったとしても、即座に対応可能な存在。自衛隊に自警団という二つの組織は、信頼を寄せられるという証でもあった。


「まぁ、でも。終末の日を過ぎ花火なんて、見る機会は早々ないものね」


 ハルノもゆっくりと窓際へ近づいては、人々に習い外を見つめ始めた。

 新千歳空港の建物を越えて、上空に弾け散る花火。体の芯まで響くよう、大きな打ち上げ音。満開に広がっては夜空へ降り注ぎ、照らされるハルノの真剣な横顔。


「……そうだな。避難にはまだ、時間がかかるみたいだし。少しくらいなら、いいか」


 他にも窓際にて張り付く人いれば、避難にまだ慌てる必要性はない。

 現在の国際線ターミナルには、玄関前へ移動させた観光バス。まだ全ての七台が揃っていなければ、定員六十名に全員は逆立ちしても乗れない。最後方なれば順番を待つだけとなり、ならば花火を楽しむのも良い気がした。


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