表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末の黙示録  作者: 無神 創太
第四章 新たな旅立ち(上)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/362

第176話 空の玄関口37

「……ハルノ」


 人々が避難を始めていると悟り、交差する人の中から気がかり。

 ともに札幌から岩見沢へ帰還し、新千歳空港まで同行をした人物。見知った顔の幼馴染を、雪崩れる人波の中から探す。


「どうしたのっ!? お爺さん!?」

「ちょっと。忘れ物をしたかもしれん」


 慌てた様子で老婆は振り返り、立ち止まって応える老人。リュックを置いてはチャックを開き、荷物から何かを探している様子。

 どうやらそれでも、目的物は発見できなかったようだ。


「命より大切なものはありませんよ!! さあ、行きましょう!!」

「ゔっ……」


 力強い老婆の主張に手を引かれ、老人は口惜しそうに歩き出す。

 誰しも屍怪が迫る背後へなど、戻りたくはないだろう。忘れ物に未練はあろうとも、諦め進む決断をしたようだ。


「歩くの疲れたっ!!」

「ワガママを言わないのっ!!」


 疲労から足を止めて動かぬ男児に、母親も強く言って余裕は見えない。

 しかし手を引いて行動を促すも、動こうとしない男児。叱りつけても逆効果か、抵抗して頑なな姿勢だった。


「もういいっ!! こうした方が早い!!」


 父親は荷の詰まったリュックを押しつけ、即座に屈んで男児を抱き上げる。家族三人が急ぎ向かっていく先は、隣の建物である国際線ターミナル。

 他にも避難者は多数おり、左右へ目を向けて確認。それでも避難者が一段落してか、次第に切れ始める人波。事は思うよう簡単に運ばず、どこにも探し人は発見できなかった。



 ***



「国際線ターミナルはこっちよっ!! 荷物は捨ててでも、逃げることを優先してっ!!」


 避難する人波が落ち着いたところで、前方から耳に聞き覚えある声。

 オレンジ色に近い明るい髪を、高い位置で結んだポニーテール。横顔にハーフの要素あり、綺麗な翠色の瞳が特徴的。オレンジのブラウスに、白いパンツを着用した人物。それは今まさに、探している当人だった。


「ハルノっ!!」

「蓮夜っ!? こっちまで来ていたのっ!?」


 国内線ターミナルまで急いで駆け寄り、目を見開きハルノは驚きの表情を見せる。

 一つの不安が払拭されて、心中を包むは安堵感。ハルノを含め自衛隊員に自警団員は、人々の避難誘導をしていた様子。証拠に迷彩服と腕章する者は残り、他は国際線ターミナルへ一目散に駆けていた。


「大丈夫かよっ!? 屍怪が入っているって話だったから、心配をしていたんだぜっ!!」


 パッと全体を見た感じでは、怪我などしていない様子。

 姿を確認し始めて、得られる安心感。一つ心の憂いは、晴れたというもの。


「無事ってことはないわ。二階のシャッターが突破されて、屍怪が侵入してきているから」


 現在の問題を指摘するハルノは、その難題から神妙な面持ちだ。

 シャッターを破壊した屍怪は、突破して閉鎖エリアへ侵入。現場での足止めが唯一の抗いと、根本的な解決手段がないからだ。


「なら、みんなもっ!! 早く避難しねぇと!!」


 避難者の姿が途切れたところで、全員に早急な避難を求める。

 国内線ターミナルから、国際線ターミナルに。移動を終えたとなれば、連絡通路のシャッター。下ろせば上村隊長の言う通りに、ある程度の時間を稼げるだろう。



 ***



「ダメよ。三階のラウンジにはまだ、避難できていない人がいるの」


 しかしハルノの発言によれば、遅れている者が存在との話。

 新千歳空港で過ごしていた人は、三百人程度だったと聞く。たしかに連絡通路で交差した人数では、言われた数値に全く届いていない。


「屍怪が階段を上がってきたぞっ!!」


 見張りをしていた自警団員は、階段下を見つめ急報を告げた。

 国内線ターミナルでも連絡通路に近い、エレベーターを隣にした階段。階段下にはシャッターが突破されること予期し、テーブルなどを用いてバリケードを急造。

 それでも物資に時間が足りねば、完全たる物ならず。屍怪は破壊をして隙間を通り、間近に迫ってきているようだ。


「構えろっ!!」

「一斉に撃つぞっ!!」


 自衛隊員二人が加勢に参上し、向けるはアサルトライフル。

 自警団員を中央にして、三人は横並びに展開。各々が所持するアサルトライフルを、屍怪へ向けての発砲を開始した。


「早くっ!! 早くみんな避難させろっ!!」


 けたたましい音が響く中でも、自衛隊員は早急な避難を促す。

 同時に三階のラウンジから、避難者の第二陣が避難開始。自衛隊と自警団が協力をし、人々の避難誘導に努めている。


「なんで自警団の人まで、銃を持っているんだよ?」


 アサルトライフルやサブマシンガンと、銃器は自衛隊の専用武器だった。

 両組織は反目する関係にあり、武器共有などはしていない。故に腑に落ちぬと疑問に思い、ハルノへ聞いた次第だ。


「詳しくはあとで説明するけど。いろいろあったの。私も銃を借りているし。今は二つの組織が協力をして、事にあたっているわ」


 説明するハルノの腕にもたしかに、アサルトライフルが装備されている。

 しかし協力していると言うだけあって、両組織は強く連携している様子。今までにない活発なコミュニケーションに、窮地の中でも互いを尊重し合う姿勢。現在における組織の形こそ、理想的とも思える雰囲気だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ